女性の健康

ピルで避妊失敗も…妊娠例もあるピル服薬の落とし穴

【産婦人科医が解説】ピルは非常に効果の高い避妊法ですが、ピルを正しく飲んでいても妊娠するケースはあります。また性感染症の予防効果は全くありません。ピルを「コンドームが不要になる薬」と考えるのはやめましょう。正しい飲み方の注意点と、ピル服薬の落とし穴について解説します。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

「ピルを飲んでいたのに妊娠」例も……100%保証ではないピルの効果

ピルで避妊失敗

ピルを正しく飲んでいても妊娠するケースがあります。ピルの避妊率も100%ではないのです(画像はイメージ)

当院では、ピルの飲み忘れが原因で妊娠してしまった例はありませんが、飲み忘れなく飲んでいたにもかかわらず妊娠した患者さんの事例があります。ピルは他の避妊方法に比べれば非常に効果の高い避妊法ですが、コンドームと併用していない場合、ごく稀に望まない妊娠をしてしまうケースがあります。

また、ピルを飲んでいるから妊娠の心配はないとコンドームを使用せずに性交渉をしたことが原因で、クラミジアや淋菌などの性感染症になってしまうケースは多々あります(ただ、性感染症になった方全員がコンドームを使っていなかったわけではありません。コンドームをしていても性感染症は避けられないことがあります)。
 

「ピルを飲んでいるから安心」はどこまでいえるか

以下ではピルに関する効果の真偽について、Q&A形式で解説します。

Q. ピルを飲んでいれば絶対に妊娠しないといえる

A. 残念ながらいえません。100組のカップルがその方法で避妊を続けた場合の1年間の妊娠例数を「パール指数」というもので表しますが、ピルのパール指数は「正しく服用した場合」でも0.3くらいです。ピルのみで避妊をしているカップルが1000組いた場合、1年に3組が飲み忘れや飲み遅れがなくても妊娠する可能性があるということです。冒頭でもご紹介した通り、当院でも同様のケースで妊娠された例があります。

Q. ピルの飲み間違えや飲み忘れによる妊娠はある?

A. もちろん十分にあり得ます。ピルを正しく服用しなかった場合のパール指数は9くらいです。100組に9組が避妊に失敗して妊娠してしまう計算です。

Q. 個人輸入のピルなどは安全で、避妊効果は問題ない?

A. 個人輸入のピルの場合、その薬剤の成分が「偽物」であれば、当然避妊効果を得ることはできません。個人輸入のすべてが危険なわけではありませんが、有効期限や薬剤の成分を自分で確かめることができない点ではリスクがあるといえます。

Q. 生理日移動のための一時的なピル服薬では、避妊効果はない?

A. 飲み方によります。月経初日または2日目から服用を開始していれば、服用中のみ避妊効果は得られます。月経を遅らせる目的で、月経予定日1週間前などから服用した場合は避妊効果はありません。

Q. ピルを飲んでいれば性感染症予防はできる?

A. ピルで性感染症を予防することはできません。予防効果は「ゼロ」です。
 

ピル服薬中の注意点……コンドームの併用と正しい飲み方の確認を

大前提として、ピルは「コンドームを使わなくてよくする薬」ではないということです。ピルによって「ほぼ確実な避妊」はできますが、100%の避妊効果はありません。性感染症予防の点からも、「より安全なセックス」をするためには、ピルによる避妊+コンドームで感染症予防はセットです。

また、正しく飲まなければ効果は下がります。ピルの正しい服薬のためには、以下のことをしっかりと守りましょう。
  • 服用時刻を守ること
  • 服用の順番を守ること
  • 飲み忘れたら効果が下がることを認識しておくこと
  • 飲み合わせがよくない薬を飲む時には双方への作用を確認すること
  • 下痢をしている時や、ピルの効果を下げる薬やハーブを摂取している時はピルの作用が下がっている前提で服用すること
  • 血栓症予防のために、水分補給やこまめに動くことを心がけること
  • 血栓症の兆候が現れたら直ちに受診すること
これらがピル服用中の注意点です。
 

ピルは多くのメリットがある生活改善薬……正しい理解と服薬で活用を

ピルは正しく活用すれば非常に便利で、多くのメリットをもたらしてくれる「生活改善薬」です。また、ピルで効果の高い避妊をして、コンドームで性感染症予防をすることで、自分を大切にしながらパートナーシップを楽しむことができます。ぜひ、ピルを何のために服用するのか、どのような効果と注意点があるのかを改めて押さえ、上手に役立てていってください。

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