最初はみんな、まともな男性だったのに……
「ダメ男」とつきあい、ダメ男を呼び込んでしまうことを笑い話のように語る女性はいる。ただ、レイナさん(34歳)の場合は、「ちゃんとした男を好きになっているのに、私とつきあっているうちにダメ男になっていく」と嘆く。いったいなぜなのだろうか。
尽くすのが大好き
「好きになった人にはとことん尽くしちゃうんですよね。それがいけないと友人には言われるんだけど、だって好きなんだもの、何でもしたくなっちゃうでしょ」
レイナさんは、愛らしい瞳をキラキラさせながらそう言う。この目で見つめられたら男はめろめろになってしまうのだろうと想像ができるようなかわいらしさだ。最初は男性から近づいてくる。友人関係になり、やがて相手が告白してきて……というパターンがほとんど。
「好き好きって言われて、私のほうもだんだん好きになっていく。そうすると力関係が変わって、私が尽くすようになる。私はそれで幸せなんです。でも結局は浮気されたりうっとうしいと言われたり」
たとえばレイナさんが彼の部屋に泊まるとする。夕食を作り、洗濯をし、彼がお風呂に入れば出てくるときにはタオルを持って待っている。体を拭き、下着をはかせ、パジャマを着せる。翌朝は、もちろんネクタイを結び、靴下まで履かせるのだという。
「かまいたくて世話を焼きたくてたまらないんです。ときには彼の財布を覗いて、お金が入ってなければ入れておきます」
彼女は、とある国家資格を生かして仕事をしている。とはいえ決して高給をとっているわけではない。自分の懐が寂しくなっても彼に喜んでもらいたいと思ってしまうのだ。
「何の下心もありません。自分から結婚を迫ったこともない。ただ、好きだからそうやって何もかもめんどう見たくなっちゃうんですよね」
彼がどこかに携帯を忘れてきたと言ったときは、仕事の合間に彼が行った場所、駅、警察などに電話をかけまくって見つけた。自分が彼の役に立っている実感がうれしいのだ。
甘やかすとつけあがっていく
「そんな関係で20代を送ってきたんですが、最初の男は私から逃げていき、次の男は私に甘えて仕事を辞めてしまいました。しばらくめんどうを見ていたけど暴力までふるわれたので、私が逃げました。さらに次の男は、最後には私に『オレのセフレを見つけて』と言い出す始末。見つけてあげましたけどね(笑)。最後にはバカバカしくなって別れました」いずれも、出会ったときは有名企業に勤めていたマジメなサラリーマンだった。セフレを要求してきた男は、別れ際に「おまえがオレをダメにしたんだ」と言い放った。
甘やかすとつけあがっていくのが男の本性なのかと彼女は悩んだという。
「友人の中には、『恋人同士なんて、お互いに甘やかす関係になれないとつまらない。あなたは甘やかされるとつけあがる弱い男ばかりとつきあってしまっただけ』と言ってくれる人もいます。だけど多くは『いいことと悪いことを区別しなかったレイナが悪い』って。ただ相手も大人ですからね、甘やかしたってダメにならない人もいるはずで……」
とはいえ、レイナさんは30代になってから恋愛には臆病になってしまった。若いころだったから相手がダメ男に変化しても対処できたが、今だったらダメ男になっても別れる気力がないかもしれないから。
「相手がどんなにダメになっても受け止められるだけの器量が私にあればいいんですが、限界はあるんですよ、私にも」
苦笑しながらレイナさんはそう言った。今後、恋愛するとしたら、甘やかしてもダメにならない人がいいのだろうか。
「完全に自立して自己完結している男性には、やっぱり惚れることができないんですよね。だからきっとまた世話を焼いて甘やかしてしまうと思うんですが、それで崩れない男性がいいですね」
甘やかされる側にも強さが求められるということか。男女の関係は不思議なものである。