夫婦関係に悩んでいたナナエさんが、つい義兄を!?
ストレスがたまると、人は常軌を逸してしまうことがある。後悔しても始まらない、だが後悔はおさまらない。そんなことが人間にはある。
夫との関係がうまくいかなくて
結婚して11年、9歳のひとり息子が小学校に入ってから、夫婦仲がうまくいかなくなったと感じているナナエさん(40歳)。
「息子が保育園に行っているときは、お互いに協力しあっている実感があったんです。でも小学校に入ってからは、ふたりともほっと一息ついたせいか夫婦の会話も減ったような気がします。それが不安で、私は週末の夜、夫と一緒に過ごそうとワインなどを買って待っているのに、彼は接待でゴルフに行ったり男友だちと会うと出かけたり……。浮気しているのではないかと思うこともあります」
夫が急に冷たくなったわけではない。外泊するわけでもない。ただ、ふたりの歯車がどこか噛み合わない。そんな不安が彼女を苦しめている。
「愛されたくて不安でたまらない。息子が赤ちゃんだったときは抱きしめているだけで安心できた。でも最近、息子をいつでも抱きしめているわけにもいかない」
彼女はもともと母親との関係に悩んでいた。2歳年上の姉ばかりかわいがられて、彼女は愛されていないという気持ちが強かったのだ。
「姉一家は母と同居しています。私は子どものころから母と姉に疎まれていた。だから夫にプロポーズされたとき、本当にうれしかった。私のことを愛してくれる人がいるって知ってありがたいと思った」
だから結婚してからも、いつでも夫に愛されたいと思っていた。それなのにここ数年、夫からの愛情を実感できない。それが彼女に焦燥感をもたらした。
義兄にすべてを打ち明けた
そんなとき、亡父の七回忌で義兄に会った。ナナエさんはふだん、実家とは没交渉なのだが、父の七回忌ともなればそうはいかない。「義兄はとてもやさしい人なんです。顔色がよくないと私を心配してくれて。『勤務先で部署が変わって、オフィスも変わったんだ。ナナエちゃんの会社の近くじゃない?』と名刺をくれました。歩いて3分くらいの距離だったから、早速、数日後にはランチをしました」
1週間後、相談があると夜、義兄と会った。義兄だから罪悪感もない。とにかく誰かに救ってほしかったのだとナナエさんは言う。
「夫との関係を相談しているうちに、母と姉との関係についても話してしまいました。実は義兄も、母と姉の密着ぶりにはちょっと辟易としていたところがあるようでしたね。姉は夫である義兄を大事にしていないんじゃないか、そんな気がした」
酔いつぶれたふりをして、義兄をホテルに誘い込んだ。どうしてそんなことをしたのか、今となっては自分の心の動きがわからない。
「だけどあのとき、私はどうしても義兄がほしかった。姉から何かを奪いたかったのかもしれません」
ふたりだけの永遠の秘密。これきりの関係。そんな数時間に彼女は溺れた。もちろん、本当に義兄とは一度きりだ。
「1年ほど前のそのできごとが、なぜか最近になって妙に鮮烈に蘇ってくるんですよね。夫との関係はいまだに不安定で、私が話しかければ返事はするけど、愛されている感じがしない。義兄はときどきメッセージをくれます。だけど義兄に対しても、もう素直に接することができない」
日常は忙しく流れていくが、ふと立ち止まると「自分は何をしているのだろう」「何が自分にとって幸せなのだろう」と、足元がぐらつくような不安に襲われるとナナエさんは顔を曇らせた。
姉と母との関係、夫との関係。さまざまな要素がからまって、彼女を義兄誘惑に走らせたのだろうか。ただ、それでも彼女の望む愛は得られなかった。
「本当は夫に全身でぶつかっていけばいいのかもしれない。私を受け止めて、私を愛して。本当は、それを言いたいだけなんですよね」
彼女の中で、すでに答えは出ているのかもしれない。