漆黒の闇の中に見えるか見えないかの各部品は、『時』を刻み、『時』を示しています。遠巻きに見ているとソレは何もわからず、近づいてよく見ないと時間がわからないコトも。まるで『時間』そのものの『存在』を表しているかのようであり、恐怖や好奇心を抱いたとき、一瞬身動きできなくなる、あの真空状態を思わせる時計でもあるのです。
デザインは、世界的デザイナー:倉俣史郎
デザインは、生前お世話になったデザイナーの倉俣史郎さん。他界され30年近く経ちますが、今もなお世界に誇る天才デザイナーの一人です。東京・六本木のAXISビル地階にオープンしたインテリアショップ「SPIRAL」の為に1981年にデザインされたものです。
倉俣さんの著書『未現像の風景』の中に、このようなくだりがあります。
「急に死にそうになる。苦しくてただただ暗くなってゆく。ものすごく恐ろしい。闇にどんどんひきこまれてゆく。円塔のような漆黒の闇の中を、ものすごいスピード(スピード感覚はないが)で、じぶんは動くのではなく停止しながら、トンネルが移動してゆくという感じでどこかを、回っている。(中略)はっと気がつくと、音が全然ない無響の世界で、また違う恐怖感におそわれて、目がさめました。」
時間を知る為だけでなく、部屋に美しい存在として
生前、倉俣さんはよく夢を見るとおっしゃっていた。この時計も夢のなかから発想されたのだったのでしょうか。モノの在り方、美しさの在り方を常に視点におかれた倉俣さんならではのデザイン。
お部屋に合わせ、外観、文字盤、針などのバリエーションは、8種類。白い壁にシンプルな掛け時計もいいが、我が家では壁に掛けず、古道具屋で見つけた英国製のアンティークキャビネットの上で、ただ時間を知る為ではなく、部屋に美しい存在として佇んでいるのです。
DATA
SPIRAL|ウォールクロック2082_7
サイズ:幅 17cm 奥行 5cm
バリエーション:8種類