「不倫の寿命」ってあるの!?
不倫関係は、一般的にどのくらい続くものなのだろうか。もちろん、統計などないのでわからないのだが、既婚者同士であれ、片方が既婚であれ、気が合えば「まずは1年」というところだろう。知人は「2年で別れる」と言っていた。まだ愛情も未練も残っているところでキレイに別れる。それが不倫の恋の落としどころである、と。不倫に寿命はあるのだろうか。
愛は4年で終わる!?
「愛は4年で終わる」という説をかつて発表したのは、アメリカの人類学者へレン・E・フィッシャーだ。人間も生物学的に見れば、愛が4年で終わるのが最も自然であるというもの。確かに動物の雌雄の関係は一時的で、多くは子が授かれば別れてしまう。ただ、ヒトの場合、結婚という制度があり、家庭には責任をともなうものだから、愛がなくても生活は続く。
不倫の場合、結婚を目的としないという前提にすれば、純粋に「恋愛」だけを追求することになる。その条件で愛は何年続くのだろう。
「私は3年でした」
そう言うのはエリコさん(46歳)だ。彼女は42歳のときから3年間、ばったり再会した元カレとつきあっていた。彼女は結婚して13年で11歳と8歳の子がおり、3歳年上の彼にも15歳になる子がいた。
「20代のときにつきあっていた人と40代で再会してまたつきあうことに、最初はふたりで感激したり興奮したり……。今度は関係を壊したくない、ずっとつきあっていきたいと気持ちも一致していたんです」
不倫とはいえ肉体だけが目当てではなかった。「恋でしたから」と彼女は断言する。ふたりで人混みにも出かけたし、コンサートに行ったりもした。人生をやり直しているような気にさえなったという。
「もちろん家庭最優先という条件つきだったけど、彼との関係に限っていえば20代のころより充実した、お互いを思いやれるいい関係だったと思います」
だが、それは3年で終わった。
「もういいか」と思ってしまった
別れを口にしたのはエリコさんからだ。「まる3年たって4年目に入ったころかなあ。今年も彼と花見に行こうと思ったとき、『この3年、ずっと彼と花見をしているんだな』とふと感じたんですよね。そして、さらにふと、『もういいか』と思ってしまった。季節の行事も3年やれば飽きるというか(笑)」
彼との関係も先が見えたような気がしたという。
「結婚するとかしないとかは関係なく、彼と私の組み合わせでできることはすべてし尽くしたのではないか、と。同じ人と同じ関係を続けていても、先が開ける気がしなかった」
彼女は静かに別れを告げた。彼も反対しなかった。もしかしたら、彼も同じように感じていたのかもしれない。
「恋愛って、ふたりきりの関係だから次第に煮詰まっていくんですよね。家庭には子どももいるし、子どもがいなくても親戚や友人の前に夫婦一緒に出ていけるから、世界も広がる。だけど不倫関係はふたりだけで完結しなければいけない。それは行き詰まりますよ」
突き放すようなエリコさんの口調が、どこかおかしかった。彼女自身も笑いながら、「恋愛の真実ってそんなものかも」と淡々と続けた。
確かに、どんなに愛する人であっても、無人島でふたりきりになったらだんだん不機嫌になっていきそうだ。ヒトは社会的生物だから。不倫の恋の場合、心情的には無人島でふたりきりになるのと近いのではないか。
「不倫だけど10年、20年と続いている人もいるでしょう。それはある種の惰性が好きな人たちなんじゃないかと私は密かに推察しているんです」
恋する感情が生き生きとライブで続くのは、せいぜい3年ということなのだろうか。