「追い」を受け止めるべきか、抗うべきか
40代後半にもなると、「老い」を実感する女性も多くなる。どう抗うか、どう受け入れるか。人によってスタンスはさまざまだ。
久々に仲良しと集まったら
「つい先日、学生時代の仲良しと久しぶりに会ったんです。みんな環境が変わったから、3人で会ったのは10年ぶりくらいでした」
そう言うのはサツキさん(46歳)。共働きでふたりの子を育てている彼女自身も忙しく、下の子が中学に入った今年春、ようやく一息つき、他のふたりに呼びかけた。地方在住のキョウコさんも夏休みなら実家のある東京に戻ってくるという。
「そしてようやく会えたんですが、びっくりしたのは、バリバリ働いて今も独身のミキ。同い年とは思えないほど、プロポーションもキープ、肌の張りもすごくて」
学生時代によく3人で行ったカフェに落ち着くと、そんなミキさんに興味津々だったのがキョウコさん。どうやったらそんなにきれいでいられるのかと尋ね始めた。
「それがなんだか尋問みたいで……。でもミキは丁寧に答えていましたよ。週に3回は個人トレーナーをつけて運動していること、顔はヒアルロン酸やらボトックスやらを入れてシワを作らないことなど。そうしたらキョウコが、『独身って暇もお金もあっていいわね』と。あら、なんだか不穏な雰囲気になりそうと私が焦りました」
人が3人よると嫉妬や諍いが始まるものなのだろうか。せっかく久しぶりに会えたのに、雰囲気を壊したくないと思ったサツキさんは、キョウコさんの日常へと話題を変えた。
「そうしたら、『私は毎日、姑とバトルよ、バトル』って息巻いて。『自分のことなんかかまっていられない。義父母と同居して子ども3人育てて。家族に尽くしているのが日常。うっとうしいこともあるけど、まあ、私は孤独死はしないと思う』と。独身のミキへのあてこすりみたいで、さすがにミキもムッとしてましたね」
ミキさんは、一瞬、ムッとしたものの「アンチエイジングしているだけよ」とさらりと言った。
人工的なものはいけないのか
キョウコさんは執拗だった。「アンチエイジングって、結局、人工的でナチュラルじゃないわよね。私は田舎で暮らしているから、やっぱり生活はナチュラルがいちばんだと思う、とキョウコが言ったんです。そうしたらミキが、『だったらそうやってプラスチックのストローを使うことも、あなたがつけている口紅も着ている服も、すべてナチュラルじゃないわよね』って。私、そこで噴き出しちゃったんですよ」
ふたりの会話は不毛なのだ。それがわかっているからサツキさんは笑ってしまった。
「大家族に囲まれてはいるけど苦労の多いキョウコ、自分のやりたいことはしているけど家族のいないミキ。結局、どちらも一長一短なんですよね。100パーセントの幸せも100パーセントの不幸もない。そう思いました。老いるのも平等ですしね」
自分の選んだ環境の中で、幸せを見いだすしかないのにね、とサツキさんは微笑んだ。
「アンチエイジングだって、やりたい人はやればいい。それを妬む必要もないと思うんですよね。私はジムに行く時間もお金もないけど、仕事帰りにスーパーによって大荷物を持って早足で歩いて帰るのが運動になっている。シワやシミはほぼあきらめていますが、化粧でなんとかごまかせばいいか、と」
人を羨んだり非難したりするより、自分がどうしたいか、どうできるのかが重要ではないのかとサツキさんは言う。
「ひとつよくわかったのは、アンチエイジングの裏にはたくさんの女性たちの嫉妬や羨望が隠れているということ。ミキとキョウコが図らずもそれを目の前で見せてくれた。そのことがいちばん興味深かったですね(笑)」