両天秤の生活に疲れてきて……自分の幸せがわからない
好きな人と結婚したい、それがかなわないから自分なりのセーフティーネットを作っておかなければ。そんな思いにかられた女性が今の生活に「疲れた」理由とは。
不倫から始まった
27歳のときから13年間、既婚者とつきあっているユカリさん(40歳)。3歳年上の彼は、いまだに週に2回、彼女のひとり暮らしの部屋にやってくる。近くで食事をしてから彼女の部屋に泊まっていくこともあれば、一緒に料理を作って食べることも。
「知り合ったとき、彼は結婚したばかりで奥さんは妊娠中。彼によれば『1度の過ちで子どもができてしまった』と言っていました。無責任なことはしたくない、子どもが高校を卒業したら結婚しようって。私はその言葉を信じてがんばってきたんです」
13年の間には、いろいろなことがあった。彼女の父親が急死したときは、彼は友人として実家にも一緒に行ってくれ、母に挨拶もしている。だが、つきあって10年たったとき、彼女は彼に子どもがもうひとりいたと知る。
「これはショックでした。私とつきあいながらもうひとり子どもを作っていたわけですから。別れようと思いました。だけど彼は、子どもがひとりだと将来かわいそうだからと、どうしてももうひとりと妻にせがまれた。たった1回でできたんだって。そんなの信じていませんけど、そこで彼を振り切ることができなかったのは私の弱さですね」
結局、彼には現在、12歳と9歳の子がいて、下の子が高校を卒業するまでにはあと9年の歳月が必要だ。
「私は彼のせいで子どもをもつことをあきらめる人生になった。今思えばシングルマザーでもいいから産めばよかったと思いますが、彼は子どもに関しては妙に厳格で、私との間に子どもをもつのは無理だと最初から言っていました」
独身の彼の出現
ただ、彼にもうひとり子どもがいると知った3年前から、彼女は少しずつ変わってきた。「彼と結婚したい気持ちに変わりはないんですが、裏切られた気持ちが強くて、前のように彼一筋ではなくなっていきました」
たまたま知り合った同い年でバツイチの男性と「過ち」で一夜を過ごしたのだが、それ以降、その彼ともつきあいが続いている。
「彼はバツイチで、もう結婚はしたくないと言っている。ときどき一緒に映画に行ったり食事に行ったりする関係ですが、彼は彼で私を大事にしてくれるんです。『結婚という形にとらわれたくはないけど、ユカリは大事なパートナーだよ』と友だちに紹介したり、私の仕事のステップアップのためにとセミナーに招待したり。実際、仕事に非常に役立って上司から褒められました」
彼が求めているのは「パートナーシップ」だが、彼女は心の中で「婚姻届を出す結婚」にとらわれている自分に気づいたという。
「不倫彼と結婚という形をとりたいけど、それができないから同い年彼と関係を続けていたんですが、今は私の気持ちも五分五分なんです。不倫彼は私の部屋にくる関係、同い年彼は私が彼の家に行く関係。なんだか妙にバランスがとれてしまった」
この先、どうなるのか、どうしたいのか、彼女自身にもわからなくなっている。いっそ、両方とも縁を切ってしまおうかと考えることもあるそうだ。
「ふたりとも好きなんだけど、結局、どちらからも熱烈に愛されているわけではないような気もして……。自分の気持ちが膠着状態なのか、事態が膠着しているのかも判断できない。こういう渾沌とした気持ちにならないために、人は適当な年齢で結婚していったほうが幸せなんじゃないかなあと妙に客観的になったりもして。友だちからは『不倫疲れじゃないの?』とからかわれています。そうかもしれませんね」
ユカリさんは苦笑いしながらそう言った。13年という時間は重い。だが彼女の人生はこれから先、まだまだ続くのだ。いつどこで決断するのか。その日はそれほど遠くないのかもしれない。