食費節約のカギは、賞味期限のカラクリを知ることにあった!
食費ダウンの秘訣は、食材をムダにしないことに尽きます。そのためには、賞味期限について正しく知っておくことが大事。「例えば、卵は冬場57日間、生食で食べられるのです」と、食品ロス専門家でジャーナリストの井出留美さん。知っているようで実は知らない“賞味期限のカラクリ”とは? (第1回インタビュー『年間6万円ムダに?「食品ロス」をなくせば食費が月5000円お得に!』より続きます)――著書のなかで一番驚いたのが、「卵は、生食で約2カ月食べられる」こと。思わず目からウロコが落ちました。特に卵は、賞味期限切れ=廃棄と考えるケースがほとんどだと思います。
井出さん:卵の賞味期限については、ご存じない方がほとんどのようで、みなさん一様に驚かれますね。日本では、卵の賞味期限は、「夏場に生で食べる」ことが前提になっており、パック後14日間と設定されています。
ですが、実は気温10度くらいの冬場なら、57日間は生で食べられるのですよ。フランスでは少し寝かせた卵のほうがおいしいとされているそうで、食感や白身の泡立ちも、一定時間を置いた卵の方がはるかに上だそうです。
卵は値段が安いですし、サルモネラ菌を心配して、賞味期限が過ぎると迷わず捨ててしまいがちですが、こうした事情を知っていれば、慌てて捨てることもなくなります。市販の卵のパックにも「賞味期限を過ぎたら、早めに加熱調理して食べましょう」と書いてあります。
日持ちをアップさせるには、冷蔵庫のドアの内側にある卵ケースに保存せず、パックのまま冷蔵室の奥に入れましょう。さらに鮮度を保つには丸い方を上にして尖った方を下にするといいですよ。卵の値段はだいたい1個20円ほど。たかが20円ですが、年月を重ねれば見過ごせない金額になります。
卵はパックのまま冷蔵庫の奥の方で保存するのがベスト
お水も同じです。地震から3年以上経っている熊本で、全国から備蓄品として集まってきたミネラルウォーター130トンのほとんどが賞味期限切れと報道されました。
熊本市は、廃棄せず使い切るために花壇の水やりに使ったり、足を洗うのに使ったりしていると伝えられていましたが、賞味期限が切れたからといって、翌日から飲めなくなるわけではありません。
――そうなのですか?
井出さん: ペットボトルの水は、時間が経つと少しずつ蒸発して容量が減るので、その期限です(注:5年の賞味期限がある水もあります)。食品メーカーが守らなくてはいけない法律の1つである「計量法」にもとづいた期限であり、水の品質とは関係ありません。
ですから、「水の賞味期限切れ=飲めない」のではなく、量が規定量を下回る期限ということ。それを知っておけば、捨てる以外の選択肢も生まれますよね。
――知らずに捨てられていくものが大量にあるということですね。賞味期限のカラクリを知っていれば、ムダがだいぶ減らせそうです。
井出さん:実は、ほとんどの賞味期限は、安全係数を掛けてだいたい2割以上短く設定されているのですよ。賞味期限は、あくまでも「おいしく食べられる期間」であって、それを過ぎると食べられなくなってしまうわけではありません。
おまけに、スーパーや小売店の多くは、賞味期限よりもさらに前の段階で商品を撤去します。これは、賞味期間全体の3分の2のところに「販売期限」を設定し、そこに達した商品は棚から撤去するという「3分の1ルール」があるためです。
そう考えると、賞味期限はあくまでも目安と考えておくほうがいいですよね。賞味期限の数字を見て思考停止してしまうのではなく、食べ方を変えるなど工夫をする。
例えば、かたくなったフランスパンなら、すりおろしてパン粉にしてもいいし、スープに使ったり、カフェオレに浸して食べたり。むしろ気にしなくてはいけないのは、「消費期限」です。お弁当や総菜など、日持ちのしない食材に表示されている“食べても安全な期限”になります。こちらはきちんと守ってくださいね。
次回は、食品ロスを減らし、食費節約につながる買い物ワザと冷蔵庫管理のコツをお伝えします!
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教えてくれたのは……
井出 留美(いで・るみ)さん
食品ロス問題ジャーナリスト・栄養学博士
井出 留美さん
取材・文/西尾英子