家庭の「食品ロス」は1世帯あたり年間6万円以上!?
食品ロス専門家でジャーナリストの井出留美さんによると、家庭の「食品ロス」によるムダは、年間6万円以上になるのだそう。逆にいえば、おうちの「食品ロス」に目を向けることで、食費が月5000円節約できる可能性が! 具体的なノウハウなどをレクチャーしてもらいました。年間6万円以上がムダに……おうちの「食品ロス」はどのくらいある?
――今、「食品ロス」問題への関心が高まっています。今年5月には「食品ロス削減推進法」も成立し、「フードバンク」という言葉も広く知られるようになってきました。この「食品ロス」問題は、私たちの家計にも影響があるのですか?
井出さん:「食品ロス」と聞くと、スーパーの廃棄問題などに目がいきがちで、自分たちとは関係ないと思いがちですが、そんなことはありません。実は、私たちの家計にも直結する問題なのです。
なぜかというと、実はコンビニやスーパーで売れ残った商品は、事業者の負担に加え、自治体のお金を使って廃棄処分されています。つまり、私たちが納めた税金が使われているのです。家庭ごみ、事業ごみを合わせた年間のごみの処理費は、およそ2億円。そのうちの4~5割が食品のごみになるため、8000万から1億円の税金が使われている計算です。
例えば、スーパーで牛乳を買う時に、手前の商品を避けて奥から取るという人は多いですよね。全国の講演で、約1700人にアンケートを取ったところ、実に89%が「奥から取る」と答えました。そんな行動の積み重ねが廃棄処分の食品を増やし、結局、自分たちがその一部を負担することになるわけです。
こうした食品ロスは、日本で年間643万トン(2016年度)。これは、東京都民が1年間で食べる食品の量と同じで、世界の食料援助量の2倍近くにも及びます。この643万トンのうち、半分強の352万トンがスーパーや店などの企業、残りの291万トンは家庭のごみです。
つまり、「食品ロス」は、私たちの家の冷蔵庫で起きている問題なのです。家庭の食品ロスとしてムダになっている金額は、1世帯の平均が年間6万円以上といわれています。
――年間6万円、月に5000円も家庭内で食品をムダにしているということですか?
井出さん:その通りです。しかもこの6万円という数字は、政令指定都市で一番家庭ごみが少ない京都市のデータです。つまり、ほかの地域は推して知るべしですよね。「食材のムダが多いかも」と自覚しているおうちなら、それ以上の金額をムダにしているはずです。
日本は、国も人々も、食品ロスへの意識がまだまだ低いと感じますね。例えば、スウェーデンでは、バナナの皮やコーヒーのカスなど、バイオマスを燃料化して公共機関を動かしているし、ヨーロッパも“捨てずに食べきる”文化が根付いています。
自分の家では、どれくらい食品ロスが発生しているのか。それに目を向けることで、どれくらい節約できるかもわかります。それを知る良い方法が、捨てた食品を書き留めることです。
実際、神戸市では食品ロス実態調査の一環として、捨てた食べ物を記入する「食品ロスダイアリー」を行っていたのですが、1週目より2週目、さらに3週目の方が、廃棄食品が減っていることがわかりました。
――おうちの「食品ロス」を見える化する。意識も変わりそうですね。
井出さん:行動を変えるには、まず意識を変えることが大事ですよね。買い物の仕方や賞味期限の読み方、食品の保存法など、ちょっとした工夫でおうちの食品ロスは減りますし、家計にとっても助けになります。
第2回『卵は2ヶ月もつ!?「賞味期限」のカラクリを知って、食費のムダをなくす!』に続きます。
教えてくれたのは……
井出 留美(いで・るみ)さん
食品ロス問題ジャーナリスト・栄養学博士
井出留美さん
取材・文/西尾英子