亀山早苗の恋愛コラム

あおりカップルも!? 負のエネルギーで結びつく男女関係の怖さ

煽り運転で話題のカップルだが、このふたりを見ると、しみじみと「悪意」や「心の闇」が合致して結びついてしまった男女の怖さを感じる。このように法律違反や犯罪へと走らなくても、心のマイナス面で歯車が噛み合った関係には、あまりいいことは起こらない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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男女が「悪意」「心の闇」で結ばれてしまうと……

負のエネルギー

煽り運転で話題のカップルだが、このふたりを見ると、しみじみと「悪意」や「心の闇」が合致して結びついてしまった男女の怖さを感じる。このように法律違反や犯罪へと走らなくても、心のマイナス面で歯車が噛み合った関係には、あまりいいことは起こらない。

 

 

恋人と別れた直後に知り合って

職場で上司と不倫し、それが妻にバレて3年前に仕事も恋人も失ったリョウコさん(40歳)。上司は離婚して結婚すると約束していたのに、露見した瞬間、リョウコさんとはいっさい接触しようとしなかった。

「7年もつきあっていたんですよ。私は信頼して彼のために尽くしてきた。それなのにまるでゴミみたいにポイ捨て。圧力をかけられて退職せざるをえなくなった。すべて失ってぼろぼろになっているとき、アキオに出会ったんです」

5歳年下のアキオさんはまじめな会社員だったが、話を聞いてもらううち、彼にも大きな心の傷があることがわかった。

「私が上司にふられたことを愚痴っていたら、彼は話をじっくり聞いてくれて。だけどその後、『実はオレの母親って愛人だったんだよね。だから不倫する男は信じられないし、そういう男と関係をもつ女性もイヤだ』と。それでも母親に対しては深い愛情をもっている。つまり、彼は非常にアンビバレントな気持ちを常に抱えている人だったんです。私は私で過干渉の母親に育てられたから、親にはいっさい期待をしていない。方向性は違うんだけど、ふたりともどこかで人に対して素直になれない、心の底から信頼できない。そんな原体験があったんですよね」

人には期待しない、信頼しない、だけど愛されたい。そんな気持ちが強いふたりが、お互いの飢餓感を埋め合うように結びついたのだとリョウコさんは分析する。

 

 

互いを罵り合って愛し合う地獄

こういう関係、最初は非常に高揚感がある。やっとわかりあえる人に巡り会えたと思うのだ。リョウコさんも当初はそうだった。

「いい恋愛をしてこなかった私がやっと会えた人。そう思っていました。私はすぐに彼の部屋に転がり込んで一緒に生活するようになった。仕事も見つけた。これでやり直せると思ったら、3カ月くらいで彼との関係がぎくしゃくしていったんです」

リョウコさんはすでに前向きな気持ちになっていた。今度は彼との関係をいいものにしていきたいと思っていたのだ。だが彼は月日がたつほど、自分が抱える闇をリョウコさんに投げつけるようになっていく。

「具体的には私のことをまったく信用していない。残業で帰宅が遅れると、むっつり黙ってひと言もしゃべらない。翌朝になってから、『本当は浮気していたんだろう』と言い出す。朝から口げんかして慌てて会社に出かけていくと、昼休みに『オレを安心させてくれ』と懇願するような電話がかかってくる。一瞬たりとも気が休まる暇がないんです」

それでも彼の心をとかせるのは自分だけだと彼女は思っていた。彼の好きな料理を作り、休みの日には彼の幼いころの話をじっくりと聞いた。

「だけど話しているうちに本人が激してくるんですよね。母親の恨み、それ以上の思慕があいまって目の前の私が母親に見えてくるのかもしれない。抱きついたり突き放したり揺さぶったりしたあげく、泣き出すんです。そんなことなら母親に会いに行けばいいのですが、一緒に住み始めて半年ほどたって、やっと彼は実は母親がもういないと打ち明けました。それまでは遠方の実家で母親がひとり暮らししていると言っていたのに、ウソだったんです。彼自身が、母親の死を受け止め切れていないのかもしれないけど」

仕事はきちんとしている彼だが、精神的にはいつも不安定だった。週末に楽しいことをしようと彼女が提案しても、彼がそれに乗ることはなかった。

「それどころか私が聞いてくれるとわかったせいか、彼の愚痴や恨みはどんどんひどくなっていきました。吐き出せばすっきりするというレベルではない。私自身が通っていたカウンセラーにその話をしたら、『彼から離れなさい』と言われました。私自身も、このままでは危ないなと思うようになっていた」

それでも彼の心が穏やかな日もある。もう少し自分ががんばれば、彼の気持ちが穏やかに前向きになるかもしれない。そんなふうに思えたこともあった。

数カ月後、彼は突如、「オレなんか存在している意味がない。一緒に死んでほしい」と言い出した。彼女は逃げなければと思いながらも逃げなかった。

「私自身も疲れていて、いっそ一緒に死んでもいいかなと」

ある日、寝ていると息苦しさに目が覚めた。彼が首を絞めていたのだ。このまま死んでもいいとは思えなかった。力をこめて抵抗した。彼はすぐに手を離したという。

「もともと暴力はふるいませんでしたし、私を殺すつもりはなかったんだと思う。ただ、その時点でわかりました。私がそばにいる限り、彼自身が苦しむんだと。彼も私も、歯車が噛み合わない人と一緒にいたほうがいい」

彼女は荷物をまとめて家を出た。彼も追ってはこなかった。わかっていたのだろう、この組み合わせは悲劇だということが。

「わかりあうって簡単に人は言うけど、本当にわかりあってしまったら先が見えなくなることもある。一心同体みたいなものって最初は極上の喜びがあるけど、実際には精神的にほどほどの距離があるほうがうまくいくのかもしれません」
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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