「忙しいけど充実してる」は本音?それとも嫉妬の裏返し?
家庭をもって働き続けるのは大変なこと。それでも彼女たちが働くのは、もちろん経済的なこともあるが、「自分が自分らしく生きるため」でもある。だが、ふと戸惑うこともあると彼女たちは言う。
ケーキを焼く隣の主婦にモヤる私
「私は結婚しても、ずっと働くのが当然だと思っていたし、迷いなく仕事に戻ったんですが、今になってふっと専業主婦の道もあったのかなと感じることがあります」
マキさん(40歳)はそう言って小首を傾げた。8歳と5歳の子を夫とともに育てながら、専門職の道を歩み続けている。
「家事も子育ても手抜きです。冷凍食品はばんばん使うし、めんどうなときはピザをとったりもしちゃう。夫が週末、作り置きおかずを作っていますが、子どもと私でその日のうちに食べちゃったりして(笑)。もうね、家事なんて適当でもいいと思っているんです」
周りは専業主婦と働く主婦が半々という状態。マンション住まいだが、両隣は専業主婦家庭だ。
「特に右隣の奥さんが、手作り大好きな人なんです。ときどきケーキやらクッキーやらくれるんですよ。『これはどこそこの有機栽培の小麦粉を使っているから安心して食べて』とか、『卵はどこそこのを取り寄せているの』とか。ありがたくいただいているし、本当においしいんですが、なんていうのかな、やっぱり嫉妬なんでしょうね。こういう生活は私の人生の選択肢にはなかったなあ、という感じ」
生き方は人それぞれ。わかってはいても、そうやってゆったり生きている女性が身近にいると、せわしなく動き回っている自分は何なのかと思ってしまうこともあるだろう。
敵同士ではないのに
共働きの家庭は、片働きの家庭より、経済的に余裕があることが多いかもしれない。「うちはふたりとも収入が多いとはいえないから、ふたりでひとり分より少し多いかなという程度。だけど周りからはそう見ませんよね。何かあると『お宅はお金があるからいいわよね』と言われる。そうやって言ってくるのは、だいたい専業主婦なんです。逆に私なんかは、時間があっていいなあと思うことも多々あるんですが」
ヤスヨさん(45歳)はそう言う。だが、時間があっていいなあ、という言葉はやはり嫌みに聞こえると思うから言わない。
「仕事はキツいけど楽しいです。達成感を覚えるときは幸せだなと思いますよ。だけど常に子どもに目が届かないのではないかという恐怖感もある。そう思われているのではないかと勝手に怖くなることもあります。隣の子が今年、私立中学に入ったのでお祝いを言いつつ、優秀でいいわねと言ったら、『私が専業主婦だから、きめ細かく育てることができたのかもしれないわね』と言われました。彼女は嫌みで言ったわけじゃないと思うけど、なんだかね……。私も仕事をしていなければ、もっときめ細かく子育てができたかもしれないと心の中で思ってしまって」
そんなふうに考えても意味がない。わかっているけどモヤってしまう。まだまだ働く女性にとって世間は温かくはない。だが専業主婦もまた、悩んだり迷ったりしているところがあるはず。どんな女性も生きづらさを感じながらがんばっているのが現状なのではないだろうか。