『ききがたり ときをためる暮らし』は、ご夫婦のていねいな暮らしぶりを写真と文章で楽しむことができる素敵な一冊です。
本当の豊かさというのは、自分の手足を動かす暮らしにある
アラフォー世代にとっては、近くもないけれど、そう遠い未来でもない定年後の暮らし方。では、定年後の”豊かな暮らし”に必要なことはどんなことなのでしょうか。そのヒントを与えてくれるのが、津端修一・英子さんご夫妻のライフスタイルです。年を重ねると、体を動かすことを億劫だと感じたり、つい人任せにしてしまいがちですが、そのことでかえって自分の心身が衰えてしまうことがあります。
「本当の豊かさというのは、自分の手足を動かす暮らしにあると思いますよ」と本書に書かれているように、お二人は「生活」を受け身ではなく、能動的に楽しまれています。
その最たるものが年間80種類ほどの野菜を作っているというキッチンガーデンです。本書には建築家の修一さんが描いたキッチンガーデンの区数図や、収穫した野菜・果物を活かした英子さんによるレシピが載っているので、映画『人生フルーツ』を見て、「お二人の暮らしをもっとよく知りたい!」と思った方にもオススメ。
そして、本書に綴られたエピソードから「いつまでも夫婦円満でいるヒント」も学ぶことができるはずです。
世の中の流れとは違ってもいい。独自のライフスタイルを築く
さらに、本書を読んで感じたのは、ご夫婦の暮らしに対する「こだわり」です。このこだわりが、津端さんご夫妻の独特のスタイルを作り出したのかもしれません。夫の修一さんは自ら設計した家の修繕や雑木林の伐採も人に頼まず、一方、妻の英子さんは醤油一本、石鹸ひとつ買うにも納得できるメーカーのものを決めて購入しています。「うちは世の中の流れとは、ぜんぜん離れてやってきましたね」と、本書で英子さんは語っています。
介護の専門家として仕事をしていますが、自分自身は老後どのように暮らしたいのかというイメージを抱くことができずにいたのです。本や映画で津端さんご夫婦の暮らしぶりを垣間見て、そのヒントが得られたように思います。