皮膚・爪・髪の病気

紫外線を浴びると老ける?肌老化の予防法・治療法

【皮膚科医が解説】シミ、しわ、たるみなどの肌老化。肌老化の原因は、加齢によるものと日光によるものに分けられ、後者は日傘や日焼け止めなどの基本的な紫外線対策で遅らせることができます。赤くなってしまった皮膚の炎症は、冷却や保湿、抗酸化作用のある成分などで早く抑えることも大切。できてしまったシミ、しわを取る治療法も含め、詳しく解説します。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

紫外線が原因で起こる肌老化とは……しみだけでなく、たるみ・しわの原因にも

肌老化とは

年齢だけでなく、日光の紫外線も原因になる肌老化。肌老化のスピードを抑える方法は?


肌老化の原因は、「年齢によるもの」と「日光によるもの」の2つに大きく分けられます。年齢に伴う老化は防ぎようがありませんが、日光による肌老化はケアで遅らせることができます。
 
光による肌老化(photoaging・フォトエイジング)では、しみやくすみが出て皮膚の色ムラができたり、しわができたり、皮膚のキメが粗くなったりするなどの症状が出ます。また、日光によって皮膚表面の毛細血管も影響を受けて血管が開くので、顔や胸といった光が当たりやすいところで、赤みやチリチリとした細い血管が浮き出るようになることもあります。医学的には「毛細血管拡張」というものです。
 
紫外線の影響で皮膚にメラニンが沈着することでしみやくすみが出現し、皮膚表面の細胞にダメージが加わることで皮膚のキメが粗くなります。また、皮膚のより深い部分の真皮にも影響を及ぼし、コラーゲンやエラスチンといった皮膚の支えになるタンパク質を変性させ、シワの原因になります。
 

紫外線の肌への悪影響……肌老化だけではなく皮膚がんの原因にも

紫外線は見た目的な悩みになりやすい肌老化を招くだけでなく、皮膚がんの原因にもなります。皮膚がんには大きく分けて基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫(メラノーマ)の3種類がありますが、いずれのがんも紫外線を浴びることがリスクとなります。
 

紫外線で肌を老けさせない方法……日傘や日焼け止めなどの紫外線対策は効果的

紫外線による肌老化を予防する方法は、紫外線に当たらないことが一番です。一般的な方法ですが、日差しが強いときには日傘や帽子を使う、長袖の服を着る、日陰を歩くなどを心がけることには効果があります。とりわけ夏の時期の午前11時~午後3時は紫外線が強い時間帯なので、特に注意が必要です。
 
日焼け止めを使用する場合、SPF30以上のものを選ぶようにしましょう。SPFは紫外線の中でもUVBをどれだけブロックできるかの指標です。また、SPFが強いものを選ぶことも大事ですが、それよりもまめに塗り直すことが肝心です。医学的には2時間おきに日焼け止めを塗り直すことが推奨されていますが、実際には難しいと感じるでしょう。外出前には必ず、また汗をかいたりして日焼け止めがとれてしまったと感じたときには塗り直すようにしましょう。鼻やほほ、耳といった突出した部分は日光を浴びやすいので特にしっかり塗りましょう。
 
普段使いであればサラッとした日焼け止めのほうが使いやすいと思いますが、スポーツなど汗で日焼け止めが流れ落ちることが予想される場合には、ウォータープルーフの日焼け止めを使用するのがおすすめです。
 

紫外線を浴びた後、自分でできる肌老化を防ぐ方法

紫外線を浴びて皮膚が赤くなってしまった場合、冷やす、ステロイドの薬を塗る、まめに保湿する、などして、なるべく早く皮膚の炎症を抑えることが大事です。
 
ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなど、抗酸化作用のある成分を中心に、日焼けによるダメージに対して効果があるとされています。抗酸化作用のある複数の日焼けのダメージを抑える成分がまとまった「飲む日焼け止め」といったものもクリニックで何種類か販売されていますので、それらを定期的に飲むのもいいでしょう。
 

紫外線による肌老化に、皮膚科で受けられる治療法・効果

紫外線によるしみやくすみなどの肌老化に対して、皮膚科では塗り薬、飲み薬、レーザーやピーリングなどの施術を行うことができます。ただし肌老化は病気ではなく、治療はほとんどが保険適応にはならないので、自費の治療となります。
 
塗り薬としては「トレチノイン」というビタミンAに類似した成分が光老化のダメージを抑えるとされています。トレチノインは海外ではにきびに保険適応のある薬ですが、日本では保険適応はなく、一般的にはシミ治療によくクリニックで処方されています。トレチノインはシミだけでなく小じわやにきび、日光のダメージや毛穴の開きにも効くとされている、多彩な機能をもった塗り薬です。塗り始めにカサカサや赤みといった刺激感があることがありますが、通常は次第に慣れます。トレチノインは私自身もシミや小じわ、にきびの予防に毎日塗っています。トレチノインの値段はクリニックにより様々ですが、小さな容器に入って2000~1万円程度です。3ヶ月は最低でも塗らないと効果は実感しにくいです。特に期限なく長く塗ることができます。
 
飲み薬としては前述した飲む日焼け止めがあります。現在は数種類ありますが、実際に内服後に紫外線のダメージをブロックして塗る日焼け止めの作用を上げる「ヘリオケア」というシダ植物の成分と、『UV lock』や『クリスタルトマト』などの名前で知られる抗酸化作用のある日焼け後のダメージを抑えるタイプがあります。強い日差しの場所に行く場合にはヘリオケア、普段から日光のダメージを抑えたい場合には抗酸化作用のあるほかのタイプ、と使いわけるといいでしょう。30日分で6000円前後で販売されていることが多いです。
 
紫外線によるシミやくすみにはレーザーやピーリング、シワにはダーマペンやフラクショナルレーザー、ボトックス、赤みや毛細血管拡張にはブイビーム(パルスダイレーザー)など、症状によって皮膚科で施術を受けることができます。いずれも基本的には保険適応外の治療です。値段は1回数千~数万円とクリニックにより異なります。複数回治療を重ねればシミ、シワ、赤みともに治療効果は期待できます。
 

紫外線による肌老化に悩む読者の方へ

紫外線の影響は年を経るごとに積み重なっていきますので、日々のケアが大事です。季節を問わず、毎日欠かさず日焼け止めを使い、しっかりとした日焼け対策を行いましょう。上記の通り、肌老化に対する治療はありますが、まずは予防することが最も大切です。
 
それでも進んでしまった肌老化に対しては、現在はレーザーの進歩などによりシミ、シワといった症状も改善させることができるようになりました。お困りの場合には皮膚科を受診して治療を検討してみましょう。
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