【はじめに】今、望まない妊娠で悩んでいる方へ
望まない妊娠をしてしまったかもしれない……。まずは「大人」に話し、病院を受診してください
実際にある、望まない妊娠で病院受診を先送りにしてしまうケース
望まない妊娠をしてしまった場合、妊娠に気付いていながら受診を先送りしてしまうケースは少なからずあります。「妊娠しているかもしれないけれど、まさかね……」と考えたまま過ごし、不正出血や腹痛など他の症状で受診して、そこで妊娠が判明するケースも珍しくありません。また、本人が全く妊娠を予期しておらず、受診した時にはすでに週数が進んでいたため、産むための心構えや様々な体制が整っていないのに、中絶するという選択ができなかったケースもあります。非常に珍しいケースですが、本人が妊娠に気付いていないまま陣痛が始まってしまい、急な腹痛という訴えで救急搬送されてきたと思ったら、そのままお産になったケースも実際にありました。
妊娠中に病院を受診しないことのリスク
妊娠すると、通常は最初の受診で子宮内に受精卵が問題なく着床していることや、妊娠を継続する上で母体に異常や医療的なケアが必要な問題がないかなどを検査し、その後は定期的な妊婦健診を受けます。これらの検査を全く受けない場合、妊娠中に起こりうる合併症やトラブルに気付けなかったり、胎児の異常を早期発見するチャンスを逃してしまったりすることになります。母体側には、妊娠初期の場合は、異所性妊娠に気付けず、突然の大量出血など命に関わる危険もあります。妊娠中も、感染症や血圧異常、血糖値の異常に気付けないなどのリスクが伴います。胎児側のリスクとしては、母体からの感染症や、胎児発育不全、産後にすぐ処置が必要な先天的な異常などに気付けないことが挙げられます。
自力で単独出産することのリスク
たまに産まれたままの新生児が置き去りにされる事件などの報道がありますが、このような報道からも分かる通り、女性が単独で出産することは生物学的には可能ではあります。しかしそのリスクは非常に高いものです。無事に妊娠を継続でき、出産を迎えられたとしても、分娩途中で胎児が引っかかってしまうケースもあり、この場合は胎児の心停止にもつながります。正常に分娩できたとしても、産まれたばかりの新生児を守るために冷やさないようにするなどの適切な処置を行えなかったり、母体内に胎盤が残ってしまったり、分娩直後の多量出血で母体の命が危険に晒されたりと、様々なリスクが伴います。
専門家が傍についての自宅出産などもありますので、病院でなければ産めないわけではありません。しかし出産時にどのようなトラブルが起こるかは、健康な妊婦であっても予測できないものです。医療機関でも複数の医師がサポートしたことで、母体と子どもを命の危険から守ることができたお産の例は少なくありません。単独での妊娠・出産のリスクは正しく理解しておきましょう。
産後に適切な処置を受けなかった場合のリスク
先述の通り、産後に適切な医療的処置を受けなかった場合、母体には多量出血や感染、産褥熱等のリスクがあります。子供は低体温や感染、呼吸停止などのリスクがあります。妊娠は本来とても喜ばしいものですが、思いがけない望まない妊娠は、戸惑いや強い不安を伴います。「どうしたらよいのか分からない」「これからのことが決められない」と一人で抱え込まず、冒頭の繰り返しになりますが、まずは大人に相談し、病院に行くことです。そこで今後どうすればいいのかを、専門家と一緒に考えましょう。落ち着いたら、何のためにこのタイミングで妊娠したのかを考えることも重要です。