避妊を教えられない学校教育……低年齢での妊娠・出産の問題
本人だけの問題ではなくなる低年齢での妊娠。性行為には妊娠の可能性が必ずあることと正しい避妊の知識は、若年層にも必要ではないでしょうか
高齢出産が注目を浴びる一方で、10代、それも小学生や中学生といった低年齢の子どもが妊娠するケースも少なからずあります。そしてそのような場合、妊娠した本人を責めたり、その行動を非難したりすることには、まったく意味がありません。SNSなどによる手軽な出会いの場の拡大や、安易な意識での性交渉などについて問題視されることは多いですが、メディアリテラシーやネットの適切な活用方法、正しい避妊方法などについて、子どもにしっかりと教育できなかった周りの大人たちの責任を重大に受け止めるべきでしょう。学校教育の中で「避妊」について教えてはいけないという学習指導要領そのものも時代に合っていないと感じます。
生物学的な出産適齢期は25~29歳
生物学的な出産適齢期は25~29歳です。この年齢層は最も周産期死亡率が低く、そのほかのトラブルも少ないため、この年齢が妊娠適齢期であるといえます。とはいえ現在の社会的背景をあわせて考えるならば、25~35歳くらいを適齢期と考えた方がベターかもしれません。いずれにしても月経が始まっているからといって、低年齢で若いほど健康でリスクが低いわけではなく、10代での妊娠・出産は出産適齢期ということはできません。
小中学生の妊娠・出産件数と出産リスク
出産に関する統計はほとんどが15歳からですが、15歳未満の妊娠も年間約400件ほどあります。しかしそのうちの9割近くが中絶しているため、実際に出産に至る事例はかなり少ないと考えられます。出産に臨む場合も、小中学生の出産自体は不可能ではありませんが、骨盤の成熟も十分ではなく、非常にリスクが高いと考えられます。骨盤を始めとする身体構造上の未成熟さに加え、精神面、社会的立場、経済的自立の困難など、様々なリスクがあることも忘れてはいけません。年齢によっては法律上結婚もできないため、自分で育てる場合でも本人の親の戸籍に入れるなど、本人が法律上の「親」になれないケースもあります。戸籍・養育費・扶養・本人の学業・経済的自立など、すべてが問題になります。また、里子に出す場合は里親を探さなければいけません。
小中学生の妊娠時の病院のサポート
低年齢の妊娠・出産は本人だけの問題ではありませんので、家族(親)を交えての診療を行います。医学的サポートは基本的に他の年齢の場合と変わりませんが、カウンセラーによる精神面のサポートや、ソーシャルワーカーによる社会的サポートとの連携、場合によっては出産後里子に出すなどの手続きが必要なこともあり、多職種が関わってサポートをしていくことになります。若年層も、パートナーとの関係の築き方と正しい避妊方法の知識を
若年での妊娠は心身ともに負担が大きく、本人だけの問題ではなくなります。自分で責任が取れない年齢で性行為を行うということがどういうことなのか、性行為の先には「妊娠」の可能性が必ずあるのだということを認識して、パートナーとの関係を築いてほしいと思います。また、性行為を行うのであれば、確実な避妊が必要であり、10代で選択できる「確実な避妊方法」は低用量ピルの服用であることも知っておいてください。■参考
- 若年妊娠・高齢妊娠のリスク(厚生労働省)(PDF)
- 統計からみた10代の出産の現状(PDF)