お金の悩みを解決!マネープランクリニック/早期リタイア・セミリタイアしたい人のお金の悩み相談

退職金や確定拠出年金等で5000万円あります。55歳で早期退職を希望(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、55歳で早期退職を希望する50歳の会社員男性。教育費もあと4年で終わり、退職金や確定拠出年金、公的年金も水準以上だが、本当にフルリタイアは可能かどうか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 81歳で老後資金は底を突く

希望どおりフルリタイアをした場合、その後のキャッシュフローがどうなっていくか。そこを見ながら、可能かどうかを考えてみます。
 
まずは、早期退職をする55歳時の貯蓄について。いただいた家計データでは年間およそ300万円の貯蓄が可能となりますので、5年間で1500万円が上積みされて1700万円。この間の、家計支出には含まない大きな支出としては、クルマの買い替え費用として200万円と、住宅のリフォーム費用300万円も計上しておきます。また、教育費は最後の5年目は発生しないので、それを考慮すれば、1270万円。加えて、試算を簡易にするために、住宅ローンもここで完済してしまうと、最終的には手元に残る貯蓄は330万円となります。
 
これに、五里霧中さんが退職後、老齢年金以外に手にする収入を加算していきます。退職金は分割にして15%増で受け取るとのことですので、受け取り総額は2415万円。他に、確定拠出年金が1500万円、養老保険700万円ですから、計4615万円。先の貯蓄と合わせて約4950万円が、一部前倒しで加算しているものもありますが、この金額がいわゆる老後資金ということになります。
 
次に、55歳から公的年金が支給となる65歳までの生活費を考えます。現在との支出から差し引く費目としては、まず教育費がなくなり、家族の小遣いも息子さんの分全額と本人は減額ということで、10万円から6万円に。住宅ローンも先の試算で完済としています。また、55歳でお子さん2人とも独立したとして、その分の食費や水道光熱費も3万円減額します。
 
一方、毎月の支出に新たに加算するものとしては、これまでボーナス(もしくは貯蓄)から捻出していたレジャー費等。また、住宅ローンは完済しても固定資産税は続きます。クルマの維持費(税金、保険、車検等)も加えて、月平均4万円。

さらに生活費とは別に、健康保険料、介護保険料、所得税、住民税、そして国民年金保険料は60歳までの5年分が発生します。これらを月割りにすると3万~4万円(退職金の10年確定年金額から試算)。結果、この間の生活費は35万円前後。10年間で4200万円。ただし、奥様が60歳まで働くとのことですから、パート収入5年分を差し引くと、3660万円が老後資金から捻出されます。結果、65歳の時点での老後資金は約1300万円となります。
 
65歳以降、受け取る老齢年金は、社会保険料や税金が天引きされて、夫婦合計で22万円前後といったところでしょうか。クルマに乗らなくなるなど、今より生活費が下がったとして、年金だけでは月7万円不足するとします。65歳から90歳までの25年間で2100万円ですから、この時点ですでに足りません。このペースなら、途中、生活費以外にまとまった支出がないとしても、計算上、ご夫婦が81歳のときに老後資金は底をつきます。
 

アドバイス2 今から徐々に生活費を下げる意識を

この試算から見えてくる、リスクを抑えたフルリタイアの条件は「生活費を抑える」ということに尽きます。具体的な目安としては、55~64歳までを月28万円、65歳以降は25万円以内にそれぞれ収める。つまりは、それが実践できれば、55歳からのフルリタイアも可能、ということになります。
 
月28万円なら、55歳からの10年間、生活費として貯蓄から捻出する額は2820万円となり、65歳の時点で2130万円が老後資金として残ります。65歳以降は、生活費を25万円に抑えると、公的年金の不足額は3万円程度。25年間で900万円ですから、90歳の時点で1200万円はまだ手元に残ります。長生きリスクや医療費、介護費等を考慮しても、予備費としては一般的に安心していい額と考えます。
 
では、生活費のダウンサイジングは容易でしょうか。例えば55歳からの生活費は、想定される(節約を意識しない)金額よりも10万円は下げる必要があります。しかも、それを毎月、継続しなくてはいけません。世帯によっては容易にクリアできるかもしれませんが、一般には高いハードルのはず。しかも、社会保険料を含んでの金額ですから、実際にはそれ以上の生活費の節約が必要になります。
 
そのためには、早期退職前から節約に取り組むことをススメます。徐々に生活費を下げることで、無理なく55歳から目安の金額に抑えることを目指します。下げ幅は大きいですが、家計を見る限りコストダウンする余地は十分に残っているので、決して無理ではないと思います。
もうひとつ、今から生活費を下げれば、必然的に貯蓄ペースが上がります。月2万円下げることができれば、5年間で120万円。それは結果的に老後資金を増やすことになり、リタイアに向けての対策としてはより効果的です。
 

アドバイス3 状況によってはセミリタイアに切り替える

とはいえ、計画どおりはいかないこともあります。その場合、フルリタイアではなく一時期的に働くことで対応する。アルバイトで構いません。数年間、月5万円の収入を得られれば、その分、マネープランに余裕が生まれます。あくまで目標は55歳からのフルリタイアとして、その後は柔軟に考えてはどうでしょう。
 
最後に健康保険について。社会人となったお子さんの扶養に入るという案ですが、退職金を10年確定給付金とするため、10年間は240万円ほど雑所得があります。そのため、扶養の条件(年間130万円以下)から外れてしまいます。退職金を一時金とすれば、少なくとも翌年からは扶養の対象になれるでしょうが、15%の増額相当=315万円、受取額が減ります。扶養に入る場合とどちらが効果的か、比較検討してみてください。
 

相談者「五里霧中」さんより寄せられた感想

アドバイスの内容、拝読いたしました。大変貴重なご助言、誠に恐れ入ります。今後の生活を送る上での参考とさせていただきます。今後も何らかのご相談をさせていただくかもしれませんが、その節にはよろしくお願いいたします。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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