高齢出産のリスク・デメリットを挙げる前に、まず踏まえておきたいこと
高齢出産のデメリット・リスク 流産率や染色体異常のリスクは高くなる……?
医学的に一般的には「生物学的適齢期」というものがあり、妊娠のタイムリミットがあることは事実ですので、それを考慮したライフプランを立てることは大切であるといえます。しかし若ければよいというものでもありませんし、キャリアを優先して妊娠を先延ばしにしすぎて後悔するのも避けたいものでしょう。妊娠を希望する本人が、どう考えて「その年齢」での妊娠・出産に臨むのかが重要です。
そのことを前提として踏まえた上で、高齢出産のリスクやデメリットについて客観的なデータで正しく理解しておきましょう。
高齢出産のリスク……母体のリスク・子どものリスク
高齢出産のリスクとしては、一般的に以下のようなことが挙げられます。- 流産率が高くなる
- 染色体異常のリスクが高くなる
- 母体合併症が既に存在するリスクが高くなる(内科的な疾患や筋腫等の合併症を元々持った状態で妊娠する可能性が高くなる)
- 母体合併症が新たに発症するリスクが高くなる
- 分娩時や産後の体力の低下が起きやすい
高齢出産のリスクは二人目以降の経産婦より初産の方が高い
また、意外と知られていないかもしれませんが、高齢出産のリスクは初産と経産婦とで同じではありません。高齢で初産の方がハイリスクになります。高齢出産の流産の確率……40歳は40%、45歳は50%
流産の確率は、母体のライフスタイルや行動によるものではなく、いわゆる「卵子の老化」や、卵子の染色体異常、卵子自体の生命力の低下により上がります。そのため、さまざまなデータで年齢との相関関係があることが明らかになっています。25歳、30歳の流産率は10%ですが、35歳になると25%。40歳は40%、45歳は実に半数の50%まで上がります。高齢出産で子どもに障害が出る確率
トータルの障害の割合は不明ですが、一例としてダウン症についての数字を見てみると、20歳で1/1667、25歳で1/1250、30歳で1/952の確率といわれています。高齢出産になる35歳になると1/385、40歳になると1/106、45歳では1/30と、年齢に比例してリスクは上がります。双子・三つ子などの多胎妊娠と高齢出産のリスク
高齢出産で多胎妊娠される方も少なくはありません。この場合は多胎妊娠そのものによるリスクと年齢によるリスクが掛け合わされるため、単胎での高齢妊娠・出産よりもリスクは高くなります。高齢出産が子どもに与えるその他のリスク・影響
低出生体重や染色体異常などのリスクは年齢と比例する部分が大きいですが、それ以外は高齢だからといって影響はありません。むしろ経済的に余裕があったり、精神的に成熟した親になれる可能性が高い点は、高齢出産のメリットともいえます。「高齢出産後の子育ては大変そう」という不安に対して思うこと
高齢出産だと産後の子育てが大変なのではないか、子育ての苦労で出産を後悔してしまうことはないかと不安に思われる方もいるようですが、産後の大変さはトータルで見ると年齢とはあまり関わりがないのではないかと感じます。産後は体力的には誰しも大変な時期ですが、若くても体力がない人はいます。個人の体力にはかなりの差がありますので、高齢出産だから子育てが大変と一概に括られるようなものではありません。また、子育ての大変さには、体力的な問題以外にも、仕事との両立や経済力などさまざまな要素が絡みますが、年齢が高いことで仕事の立場的には人に任せやすくなっており休みが取りやすかったり、既に仕事において熟練しているためキャリアブランクの支障が少なく済む点、若年層に比べて経済的に安定していることが多いことなどは、メリットになるでしょう。
患者さんからさまざまな悩みを伺う診療の場では、高齢出産したことを後悔する悩みは聞いたことがありませんが、高齢になってから妊娠を目指し、なかなかうまくいかずに後悔する声は多く聞きます。高齢出産に差しかかる年齢の方は、産後の子育ての不安から妊娠・出産の判断を先送りにしてしまうのではなく、自分自身がどうしたいのかを早めに考え決断することが大切なのではないでしょうか。
これから高齢妊娠・高齢出産を考えている方へ
高齢出産についてはさまざまな意見があるかもしれません。特に妊娠を目指しているタイミングや出産を控えている状況で、周りから「高齢出産は子供がかわいそう」「高齢出産は産後の子育てが大変」といったネガティブな声を聞くと、不安になってしまうことと思います。
しかしこれらはあくまでも「外野の声」に過ぎません。繰り返しになりますが、個々人の妊娠・出産についての「最適なタイミング」は本人が決めることです。自分の「最適なタイミング」を見逃さないような教育はできれば20歳くらいまでには受けておくことが理想ですが、何歳であれ、自分がベストと思う判断で、納得して妊娠・出産に臨むのがよいと考えます。
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