しかし、「節約したい!」と考えること自体は悪くないのですが、考え過ぎると逆効果になる可能性が高いです。
追い込み過ぎると、節約できなくなる!?
意志力や自制心の研究の第一人者であるロイ・バウマイスターの研究(1)では、「自制心が欲しい!」と思うほど、自制できなくなることが指摘されています。自分を追い込み過ぎることで精神面が悪化し、ストレスの影響でコントロールを失うのが原因のようです。以前に書いた「自分に厳しい人ほど貯金できない!」という記事では、768名の調査結果(2)をもとに、「自分に厳しい人は先延ばし癖が付きやすい」という話をしました。
自分に厳しい人にありがちな思考回路としては、「今月も貯金目標が達成できなかった。自分はなんてダメな人間なんだ……」と、自己嫌悪に陥ってしまうパターンが考えられます。
自己嫌悪にはストレスがかかります。自己嫌悪に陥ると過去の失敗を引きずってしまい、「また貯金目標を達成できないんじゃないか?」といった恐怖心へとつながります。結果として、「貯金目標を達成できないという恐怖感」を理由に、目標を追いかける足を止め、先延ばししてしまうのです。
バウマイスターの研究はこれと似ています。どちらも、自分への厳しさが原因となり、ストレスを生み、悪い結果(自制心の低下や先延ばし)につながるのでしょう。
貯金は「短距離走」ではなく「マラソン」
たまに勘違いする人がいるのですが、貯金は短距離走ではありません。短期間がっつり我慢することでお金を貯めることもできますが、それでは長続きしないうえ、習慣化もできません。お金と人生は切り離せません。一生かけて付き合っていくものですから、貯金も短距離走ではなく、“マラソン”に近いのだと考えましょう。
「貯金が大切」「節約が大切」というのは正論だと思います。しかし、「正論をストイックに貫けば幸せになれるか?」というと、そうはならないのが難しいところ。結局、長続きするペースで節約し、長続きするペースで貯金をすること一番なんです。
自分を追い詰め過ぎず、長続きを優先!
生活を切り詰め過ぎるせいで、欝気味になってしまう人がたまにいます。身近なところでは、筆者の妻がそうでした。新入社員だった頃の彼女は、生活費を削るために週末に大量のカレーを作り置きし、1週間の食事をカレーだけで過ごしていました。ストイック過ぎます。このストイックさのおかげで、彼女はある程度まで貯金できました。しかし、ストイックさが仇となり、半年もすると彼女は欝気味になってしまいました。
貯金も節約も、もとを辿れば「幸せになるため」にするものです。だからこそ、貯金や節約で不幸になったら元も子もありません。自分を追い詰め過ぎす、「長続きさせる」ことに重点を置きましょう。それだけでも、あなたの手元にはたくさんのお金が残るはずです。
【参考文献】
- 論文:Liad Uziel and Roy F. Baumeister, 2017, "The Self-Control Irony: Desire for Self-Control Limits Exertion of Self-Control in Demanding Settings", Personality and Social Psycology Bulletin, 43(5), pp. 693-705
- 記事:Fuschia M. Sirois, 2014, "Procrastination and Stress: Exploring the Role of Self-compassion", Self and Identity, 13(2), pp. 128-145