この記事では、「お金持ちほど幸福になれる」ことを示す論文(1)と、「幸福な人ほどお金持ちになれる」ことを示す論文(2)をそれぞれ紹介しました。
これらを組み合わせると、「お金持ちは幸せになる」「幸せな人はさらにお金持ちになる」「お金持ちになると更に幸せに……」という、正のスパイラルを生み出すことができます。
このスパイラルに入ることでお金持ちになれる可能性はグンと上がると考えられます。よって、お金持ちを目指す人は、なるべく早くこのスパイラルに入るのが効果的です。
負のスパイラルから抜け出すのは難しい
一方、このスパイラルが逆方向に回り始めると深刻なことになります。つまり、「貧乏は不幸になる」「不幸は人はさらに貧乏になる」「貧乏になると更に不幸に……」という、負のスパイラルに落ちてしまう可能性もあります。負のスパイラルに陥ってしまうと、なかなか抜け出せません。だから、僕らはなるべく「不幸と貧乏の鎖」にハマらないように気をつける必要があります。
不幸と貧乏の鎖を断つには?
とはいえ、すでにこの負のスパイラルに落ちてしまっている人もいるかもしれません。そんな方は、できるだけ早くスパイラルから抜け出し、正のスパイラルに入れるように努力すべきでしょう。不幸と貧乏の鎖を断ち、幸福とお金持ちの正のスパイラルに入るには、以下の2つのステップが効果的です。
ステップ1:お金をかけずにストレスを解消する(負の感情をゼロに戻す)
ステップ2:お金をかけずに幸福感を醸成する(ゼロの感情を正の感情へ持っていく)
これから、それぞれのステップについて詳しく解説します。
ステップ1:お金をかけずにストレスを解消する
まずは、負の感情をゼロにリセットするため、不幸のもととなるストレスを解消していきます。ストレスを解消するために、意図的に対処することを「コーピング」と言います。ここでは、「不幸感(ストレス)」を解消する具体的なコーピング・テクニックを紹介します。
コーピング・テクニックは2種類あります。
1種類目は「問題焦点型コーピング」です。問題焦点型コーピングでは、ストレスの元凶を取り除くことを考えていきます。たとえば、ストレスの原因が上司である場合は、「転職を考える」「退職を検討する」といった方法が挙げられます。
問題焦点型のコーピングでは、「ストレスの源」を特定することと、「ストレスの源を取り除く(あるいはストレスの源から遠ざかる)方法」を見つけることが重要です。問題焦点型のコーピングでは、「家族や友人など、信頼できる人に相談する」といった方法が効果的です。
2種類目は「情動焦点型コーピング」です。情動焦点型コーピングは、ストレスを感じて辛いと感じる気持ちを軽減することを考えていきます。情動焦点型コーピングは、ストレスの元凶を取り除くことができない場合に使います。たとえば、ストレスの原因が上司で、「転職」や「退職」といった方法を選択するのが困難なときに、「散歩する」「本を読む」といった方法でストレスを軽減する方法が挙げられます。
とはいえ、アメリカ心理学会のプレスリリース(3)によると、「ギャンブル」「買い物」「ゲーム」「タバコ」「お酒」「テレビや映画」「やけ食い」「ネットサーフィン」といったストレス解消法はどれも効果が薄いのだとか。
ストレス解消法には間違ったものも多数あります。正しい方法を身につけないと、いつまで経ってもストレスを解消できません。だから、情動焦点型のコーピングでは、ストレスを解消する正しい方法を身につけることが重要です。
正しい情動焦点型コーピングの方法としては、「散歩」や「読書」、「瞑想」や「家族や友人との会話」などが挙げられます。どれも手軽にできるうえ、お金もほとんどかかりません。ストレスを感じたときには、いずれかの方法でストレスを解消できるように、準備しておくとよいでしょう。
ステップ2:お金をかけずに幸福感を醸成する
ストレスを解消し、負の感情をゼロに戻したところで、次は「幸福感」を感じられるように、感情をポジティブなレベルにまで引き上げていきます。お金をかけずに幸福感を高める方法としては、筆者個人は「瞑想(マインドフルネス)」が最強だと考えています。瞑想はタダで実践できるうえ、幅広い研究で有効性が確認されています。
たとえば、広島大学の研究(4)では、「マインドフルネスの高い人は収入の多少に関係なく常に幸福感が高い」という結果が得られました。
マインドフルネスは、「目を半分閉じ(半目)、自分の呼吸にゆっくりと注意を向ける」といった、坐禅(ざぜん)のようなトレーニングによって高めることが可能性です。騙されたと思って実践してみてください。
まとめ
不幸と貧乏のスパイラルから抜け出すことは困難です。しかし、不可能ではありません。この記事を読んでくれた方が、不幸や貧乏の苦しみから抜け出す手助けとなれば嬉しく思います。●参考文献
- 論文:Daniel Kahneman and Angus Deaton, 2010, “High income improves evaluation of life but not emotional well-being”, Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(38), pp. 16489-16493
- 論文:Cahit Guven, 2012, “Reversing the question: Does happiness affect consumption and savings behavior?”, Journal of Economic Psychology, 33(4), pp. 701-717
- プレスリリース:American Psychological Association, “Stress in America Press Room”
- 論文:Yoshinori Sugiura and Tomoko Sugiura, 2018, "Mindfulness as a Moderator in the Relation Between Income and Psychological Well-Being", Frontiers in Psychology, 9(1477)