貯蓄

老後資金を賢く運用する3つのステップ

「もうすぐ退職を控えています。これまでの貯金や退職金、そして年金の運用方針をどうしようか悩んでいるのですが、賢く運用するコツはありますか。中原さんなりのコツを教えてください。」今回は、この質問に回答していきます。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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ふだん、YouTubeで生放送をしていると、500名以上の個人投資家の方が聞きにきてくれます。中でも多いリスナー層が、退職を控えた年代の50代前後の男性です。中でも多く頂くのが、下記の質問です。
 
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もうすぐ退職を控えています。これまでの貯金や退職金、そして年金の運用方針をどうしようか悩んでいるのですが、賢く運用するコツはありますか。中原さんなりのコツを教えてください。
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そこで今回は、この質問に回答していきます。
 

老後資金を賢く運用する3つのステップ

「努力すれば給料が増える」サラリーマンの頃とは違い、老後は「手元にある資産でやりくりする」ことを考える必要が出てきます。また、人によって老後のプランは千差万別なので、人それぞれ賢い運用方法は違います。
 
そこで今回は、「資産の◯%を運用に回そう!」といった定型文的な話ではなく、老後資金を賢く運用する「流れ」を解説します。具体的な流れは以下の3ステップです。
 
ステップ1:現状把握(老後資金はいくらある?)
ステップ2:リスク許容度の把握(定年後も労働する?/いくらまで損して平気?)
ステップ3:資産配分の決定(リスク資産・無リスク資産にいくら割り振る?)
 
この3ステップをおさえることで、老後資金の運用は概ねミスなく運用できると思います。これから、それぞれのステップについて詳しく説明します。
 

ステップ1:現状把握

賢く資産を運用するには、手始めに「現状を把握する」のが王道です。
 
具体的には、「自分の手元には、どれくらいの資産があるのか?」を確認するとよいでしょう。主な確認事項は、下記の2点です。
 
●その1:金融資産の把握
 
まず、「自分の手元にいくらの金融資産があるのか?」を確認します。具体的には、下記の点を確認しましょう。
 
◯預金残高(円預金および外貨預金の総額)
◯証券残高(株式などの総額)
◯積み立て残高(積立投資や積立保険などの総額)
◯不動産価値(持ち家がある場合は持ち家の価値)
◯退職金の計算(勤め先の退職金制度を確認する)
◯老後資金の計算(国民年金、厚生年金、確定拠出年金などの総額)
◯借金の残高(ローン残高やカード未払い金などの総額)
 
大体の方は、上記の7点を確認することで、おおむね金融資産を把握できるでしょう。それぞれの残高を全て書き出してみて、「自分には、いくらの金融資産があるのか?」を算出してみましょう。
 
●その2:人的資本の把握
 
次に、「自分自身の労働者としての価値」を確認します。
 
人的資本は人によって様々です。働き続ける場合と、働き続けない場合とで、今後取れるリスクの許容量が変わってきます。
 
そこで、今の健康状態や給料をもとに「定年後も働き続けた場合、死ぬまでにいくらくらいのお金を稼げそうか?」といったことも確認しましょう。できれば、「5年働く場合」「10年働く場合」など、複数のプランをもとに、自分の人的資本を計算するとよいでしょう。
 

ステップ2:リスク許容度の把握

現状把握が終わったら、次は「リスク許容度」の把握をします。リスク許容度とは、平たく言うと「資産運用で損をしても大丈夫な限度額」のことです。手持ちの金融資産や人的資本、年齢や家族構成、そして「運用者本人の性格」によって、リスク許容度はまちまちです。
 
たとえば、単身暮らしの場合と複数人暮らしの場合では、単身暮らしの方が老後に必要なお金が少ないぶん、リスクを取りやすいかもしれません。
 
他にも、「ちょっとした損失も受け入れられない」タイプの性格の方は、多くの資産を持っていたとしても、リスクを取って資産を運用するのはオススメできません。
 
リスク許容度は、資産運用全体を決める重要な判断基準です。テキトーに決めてしまうと後悔することになるので、慎重に考えましょう。
 

ステップ3:資産配分の決定 

リスク許容度が決まったら、いよいよ資産運用に移ります。資産運用でイチバン大切なのは、「いくらをリスク資産を回し、いくらを無リスク資産に回すか?」という、資産配分を決めることです。
 
Financial Analysts Journalに掲載された論文(1)によれば、(年金運用において)「資産配分で運用パフォーマンスの8割~9割が決まる!」のだとか。
 
裏を返すと、「資産配分を間違えると、ほぼ確実に失敗する」ということです。だから、資産配分の決定に全力を注ぎましょう。
 
資産配分を決める基本としては、「リスク許容度の範囲内でリスクを取ること」です。そして、資産配分を決めた後には、インデックス投資で運用するのが手堅くてオススメです。
 
インデックス投資は、さまざまな経済理論(2)(3)(4)に基づいて作られた手法で、放ったらかしでプロ顔負けの運用ができます。資産配分を決めたら、次にインデックス投資の勉強することをオススメします。
 

さいごに

老後に入ってから、親族に迷惑をかけたくはないものです。何歳になっても、お金に関する悩みは尽きませんね。本記事がきっかけとなり、あなたが上手に老後資金を運用できれば嬉しく思います。
 
 
●参考文献
  1. 論文:Gary P. Brinson, L. Randolph Hood, and Gilbert L. Beebower, 1986, "Determinants of Portfolio Performance", Financial Analysts Journal, 42(4), pp. 39-44
  2. 論文:Harry Markowitz, 1952, “Portfolio Selection”, 7(1), pp. 77-91
  3. 論文:James Tobin, 1958, “Liquidity Preference as Behavior Towards Risk”, The Review of Economoic Studies, 25(2), pp. 65-86
  4. 論文:William F. Sharpe, 1964, “Capital Asset Prices: A Theory of Market Equilibrium under Conditions of Risk”, The Journal of Finance, 19(3), pp. 425-442
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