繰上返済をしたいが教育資金、老後資金も心配です

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、住宅ローンの繰上返済と貯蓄、どちらを優先すべきかで悩む、39歳の会社員女性。必要な手持ち資金や、今後かかる教育資金、老後資金も心配とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

 
教育費も老後も両方心配です

教育費も老後も両方心配です



 
■相談者
ぴかぴかママさん(仮名)
女性/会社員/39歳
関東/持ち家・一戸建て
 
■家族構成
夫(会社員/50歳)、子ども3人(9歳~5歳)
 
■相談内容
夫が現在50歳で退職金制度のない会社なので、手元の現金は200万円程度しかないままで、それ以上貯まった場合は、とりあえず住宅ローンの繰上げ返済にあてています。ボーナスは毎回変動するのですが、6割ほど住宅ローン用に貯蓄して、残りは家電や家族での外出費にあてています。
ご相談は、繰上げ返済か貯蓄か、どちら優先で考えるのか? 何かあったときのためには、いくら手元に残すべきか?冠婚葬祭、自宅修繕費や家電・車の買い替えなどがあった場合、繰上げ返済資金からの支出になるので、それでよいのか? 今後、子どもの教育費にどれくらいかかるのか(一番上の子は勉強ができるので私立中学進学か悩み中)? そして老後には、どれだけの貯蓄が必要か?先々が心配です。
 
■家計収支データ
「ぴかぴかママ」さんの家計収支データ

「ぴかぴかママ」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い途
固定資産税7万円、クルマの維持費18万円、レジャー・旅行費5万円、家電など大きな買い物5万円、貯蓄25万円
 
(2)住宅ローンについて
・ローン開始年 2009年
・購入物件 中古・築10年
・借入額 2300万円
・現在の残り返済期間(繰上返済後)254カ月
・金利 変動・1.475%
 
(3)加入保険の内訳
【夫】
・終身保険(65歳払い済み、死亡保障200万円)=毎月の保険料5022円
・医療保険(終身保障終身払い、入院1万円、手術給付金、先進医療特約)=毎月の保険料4784円
・収入保障保険(保険期間65歳、月12万円、災害死亡1000万)=毎月の保険料 4665円
・がん保険(終身保障終身払い、診断給付金20万、がん入院5000円、がん手術10万円)=毎月の保険料 1914円
・三大疾病保険(がん診断100万円、三大疾病入院1万円、通院・手術給付金)=毎月の保険料4400円※60歳で解約予定
・低解約型終身保険(59歳払込終了、死亡330万円、上の子ども18歳時の払戻金230万円)=毎月の保険料1万734円※学資保険代わり
・低解約型定期保険(61歳払込終了、死亡320万円、2番目の子ども18歳時の払戻金230万円)
=毎月の保険料1万478円※学資保険代わり

【妻】
・終身保険(終身払い、死亡保障200万円)=毎月の保険料2112円
・収入保障保険(保険期間57歳、毎月5万円)=毎月保険料943円
・医療保険(終身保障終身払い、入院5000円、女性特定疾病1万円、手術給付金、先進医療特約)=毎月の保険料3928円
・米ドル建て介護保険(終身保障、49歳払込終了、死亡または要介護2以上で4万米ドル、下の子ども18歳時の払戻金20300ドル)=毎月の保険料141ドル
 
(4)ご夫婦の勤務について
夫は定年60歳、退職金制度はなし。妻は契約更新式なので、最大で長く働いて60歳までとのこと。
 
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 繰上返済はせず、手持ち資金を増やすことを最優先に
アドバイス2 すでに手持資金は老後資金に直結している
アドバイス3 元気に長く働くことが最良の老後対策
 

アドバイス1 繰上返済はせず、手持ち資金を増やすことを最優先に

ご質問の「繰上返済か貯蓄を優先すべきか」についてですが、今後はぜひとも貯蓄を優先してください。理由は、今後かかると想定される教育資金や備えるべき老後資金と深く関連していますので、合わせてアドバイスしたいと思います。
 
まず、今後のキャッシュフローですが、児童手当は途中でなくなるため、まずは今後受け取る児童手当の総額を出しておきます。こちらを計算してみるとだいたい350万円ほどになります。

次に、現在の貯蓄ペースから、児童手当分を差し引くと年間で191万円。ご主人が定年となる60歳までの10年間で計1910万円。ただし、ご主人の低解約型終身保険が59歳で払い込み終了ですから、その後、この分を貯蓄に回すとすれば、1920万円。さらにその保険を59歳のときに解約するとのことで、その解約返戻金が230万円。これに先の児童手当分350万円を加算すると2500万円。そこに現在の貯蓄分を加算すれば、定年時の手元にある資金は2860万円ほどということになります。
 
次に教育費ですが、上のお子さんが中学から私立の可能性があるとのことですから、大学まで私立(文系)としますと、かかる教育費は1100万円ほど。現在教育費として月6万5000円を計上していますが、仮に下の2人のお子さんの高校までの教育費(ここまで公立)をこの金額でカバーできるとすれば、先の1100万円を先の2860万円から捻出することになりますので、残りは1760万円。

ただし、生活費等もお子さんの成長につれて今後10年間でアップするでしょうし、クルマの買い替えもあるはず。それを考慮すれば、実際に残るのは1400万円程度と考えていいでしょう。
 
加えて、この金額には下のお子さん2人の大学費用は含んでいません。2人とも私立文系ならかかる費用は1人400万円、理系なら500万円がひとつの目安となります。2人のお子さんにそれぞれ保険の解約金で教育費が用意されていますが、それが計450万円ほどですので、ともに進学なら貯蓄からは350万~550万円を捻出します。それを前倒しで差し引くと、ご主人定年時の手持ち資金は1000万円前後まで下がることになるわけです。
 

アドバイス2 すでに手持ちの資金は老後資金に直結している

「手元にどの程度残すべきか」という質問もされていますが、これも重要な点。まだ小さいお子さん3人を抱えているとなれば、生活費の半年分は最低確保しておきたい。金額として約200万円。

では、残りの800万円は繰上返済に回してもいいかと言えば、それはかなりのリスクとなります。ご主人の年齢では、手持ちの資金は老後資金と直結します。退職金制度がないわけですから、この時期、手持ち資金が「0」ならば、老後資金も「0」になる可能性があるということ。

住宅ローンの繰上返済をすれば、確かに将来の生活費負担は減ります。しかし、60歳以降もある程度の収入を維持しなければ、赤字家計も想定されます。教育費がピークを迎える時期に、貯蓄を切り崩す生活になるわけです。さらに定年後、収入を得られない可能性もゼロではありません。したがって、今は現金を増やすことを最優先として、いろいろな事態に備えることが不可欠なのです。
 

アドバイス3 元気に長く働くことが最良の老後対策

そして老後資金ですが、必要額は当然、世帯によって異なります。考え方としては、老後の毎月の生活費に対して公的年金の不足額を老後資金でまかなうということ。仮に毎月3万円不足なら、公的年金の受給開始となる65歳から25年間で900万円。30年なら1080万円。さらに、介護費用、医療費用、住宅の修繕・リフォーム費、さらに長生きリスクによる追加の生活費などに備える予備費も必要。安心できる金額として1000万円程度は考えておきたい。つまり、もし実際に月3万円の不足なら、老後資金は2000万円必要ということになります。先の1000万円では心許ないということになるわけです。
 
現状ですべきことは、貯蓄ペースは高いですから、少なくともこれを落とさず、維持していく。繰上返済はせずに現金を増やしてください。そして、ご主人は60歳以降も元気に働けるよう健康管理を怠らないこと。できれば、奥様が定年となるくらいまで(ご主人およそ70歳)は継続して働きたい。それがもっとも効果的な老後対策と言えます。

ちなみに、ご主人の年金額は確定額(定年まで勤務した場合の受給額)が、「ねんきん定期便」で確認できますので、一度チェックしておくと老後生活や必要な資金がある程度イメージできるでしょう。
 

相談者「ぴかぴかママ」さんより寄せられた感想

アドバイス、ありがとうございました。夫の定年後も続く住宅ローンの繰り上げ返済ばかりを最優先で考えていましたが、教育費や老後資金のために手持ち資金を増やすことも必要だと気づきました。この度は、ありがとうございました。
 

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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