空き家譲渡の特別控除のおさらい
まずは相続した空き家を売却した場合の3000万円特別控除のおさらいです。相続を機に空き家になった自宅を相続した人が、この空き家を3年以内に売却した場合には譲渡所得から3000万円を特別控除できる、という特例です。税金が約610万円も少なくなるため影響はとても大きい。ただこの特例には一定の要件があり、残念ながらこの要件に該当せずに適用を受けられなかった人も少なくないのが現状でした。
特例のこれまでの要件とは?
相続した空き家を売却した場合の3000万円特別控除には、これまで主に次のような要件がありました。- 相続を機に空き家になった(相続開始の直前まで被相続人の自宅で、かつ一人暮らしだった)こと。
- 被相続人が老人ホームに入所していないこと。
- 相続開始時点で旧耐震基準の家屋(1981年5月31日以前に建築)だったこと。
- 区分所有建物(分譲マンションなど)でないこと。
- 建物を取り壊して売却するか、耐震改修をしてから売却すること。
- 相続開始から3年以内かつ2019年12月31日までに売ること。
- 売却額が1億円を超えないこと。
税制改正で老人ホームに入所でも特例の対象になる?
2019年度税制改正により、相続した空き家を売却した場合の3000万円特別控除の特例を受けるための要件の一部が見直され、「期間の延長」と「老人ホーム入所でも対象になる」ことになりました。特にこの「老人ホーム入所」は比較的多く、これが理由で特例を受けられなかったり、もしくは売却を断念していた人も多くいました。改正点(期間延長)
従来2019年12月31日までとされていた期限は2023年12月31日まで、に改正され4年間延長されました。よって「相続開始から3年以内かつ2023年12月31日までに売ること」ということになりました。※2023年度税制改正により、2027年12月31日まで延長されました。
改正点(老人ホームに入所)
被相続人が相続開始直前に老人ホームに入所(老人ホームで亡くなった、老人ホームから病院へ入院し病院で亡くなったなど)の場合でも、- 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受けていること。
- 老人ホームに入所した時から相続開始までの間は事業に使用したり貸し付けたりせず自己の利用がされていること。
- 2019年4月1日以降の売却であること。
この「相続した空き家を売却した場合の譲渡所得の3000万円特別控除」が改正された背景は、「古い空き家を減らしたい」という当初の目的を更に進めていきたい国の方針であるといえます。古い自宅を相続した相続人はそれを改修したり維持し続けるのは大変なことであり、特に遠方となれば尚更です。思い出の実家を手放すことは勇気のいることですが、維持していくのか、次の世代にまた苦労を掛けないよう売却するか、今回の改正はそれを考える良いきっかけにもなるでしょう。