「つみたてNISAで買った投資信託で含み損を抱えています。損切りをした方がよいのでしょうか?」
このリスナーの方に限らず、含み損を抱えて戸惑っている投資家の方が多いようです。そこで今回は、「つみたてNISAで含み損を抱えた場合、どうやって対処すればよいか?」、僕なりの見解をお話ししていきます。
資産運用で最も大切なこと
以前書いた記事「お金持ちは知っている!資産運用の3つの秘訣」で解説しましたが、資産運用で最も重要なことは「資産配分」であるといえます。Financial Analysts Journalに掲載された論文(1)によれば、年金運用のパフォーマンスを調べた結果、「資産配分で運用成績の8割~9割が決まる!」ことが分かったのだとか。
たとえば、筆者の場合は、「景気が良いときも、景気が悪いときも、どちらに転んでも上手くいくようにお金を運用したい!」と考えています。
それもあり、「好景気が来たときにお金が増えるように、資産の半分を株式投資に充てる」「不景気が来たときにお金が減らずに済むように、資産の半分を預金として取っておく」ことに決めています。この方法はカウチポテト・ポートフォリオと呼ばれていて(2)、景気に左右されずに「守り重視」でお金を運用したい方に向いています。
カウチポテト・ポートフォリオの話はよいとして、資産のうち「何割を株式に充てるか?」「何割を現金(または債券)で持っておくか?」を決めることが、資産運用では最重要です。そして、一度プランを決めたら、決めた資産配分に従って株式を増やしたり、現金を増やしたりして、資産配分を再調整(リバランス)する必要があります。
つみたてNISAで含み損…どうすべき?
これまでの話で、「資産運用では資産配分を決めることが最も大切だ!」という話をしました。この話は、つみたてNISAで投資をしている方も同様です。たとえば、あなたが「カウチポテト・ポートフォリオ(株式:現金=1:1)で資産を運用したい!」と考えているとしましょう。そして、1年前に、株式1:現金1に、資産を配分しました。
仮にリーマン・ショックのような出来事があり、株式市場が半分に目減りしてしまったとしましょう。あなたは買い付けた投資信託の50%分の含み損を抱えており、株式と現金の比率が1:2に変わってしまった場合は、どのようにすればよいのでしょうか。
含み益や含み損に投資判断を左右されてはいけない!
ここで大切なのは、「含み益や含み損に投資判断を左右されない」ことです。資産運用で重要なのはあくまで「資産配分」であって、「直近の運用成績」ではないからです。ですから、どんなに含み損を抱えても、私たち投資家は冷静に、「自分が理想とする資産配分」を目指して株式と現金の比率を考えるべきです。ここで、あなたは去年と変わらずに、「カウチポテト・ポートフォリオを継続したい」と考えているとします。その場合は、株式市場の下落で目減りした評価額の分、「株式:現金=1:1」になるように、改めて投資信託を買い増して再調整(リバランス)するのが正解でしょう。
一方、あなたが去年と違って、「カウチポテト・ポートフォリオを止め、現金比率を上げたい」と考えているとします。その場合は、自分が理想とする資産配分となるように、投資信託を買い増すか、投資信託を売って現金比率を増やすか、どちらかの取引を行って再調整(リバランス)するのが正解でしょう。
まとめ
資産運用をしていると、お金が増えたり減ったりして、やきもきするでしょう。しかし、「損得に振り回されて投資判断を行う」と、ロクなことがありません。あくまで投資をするときには、「資産配分を基準に投資判断を決める」ことが大切です。つみたてNISAを使っている方は、含み損や含み益を抱えたときには、「資産配分を再調整(リバランス)する」ことに意識を向けると、上手に投資できるでしょう。
●参考文献
- 論文:Gary P. Brinson, L. Randolph Hood, and Gilbert L. Beebower, 1986, "Determinants of Portfolio Performance", Financial Analysts Journal, 42(4), pp. 39-44
- 記事:Scot Burns, 1991, "Couch Potato Investing", The Dallas Morning News