資産運用/資産運用の注意点とリスク

NISAロールオーバーをどうする?移管するしない?

少額非課税制度のNISAで、初めてのロールオーバー手続きが始まりました。制度が正しく理解されていないために、間違った対応を取ろうとする人がいます。せっかくの非課税優遇を取りこぼさないために、自分に合った選択をしてください。

北川 邦弘

執筆者:北川 邦弘

はじめての資産運用ガイド

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史上、初めてのロールオーバー手続きが始まる

NISAが始まって5年が経ちました。この非課税は、5年毎という仕組みなので、今は、5年前に投資した非課税資産(2014年分)を、来年(2019年)に向けて、移管(ロールオーバー)しようか、しまいかと迷われている頃かと思います。
 
私は、仕事の上で、お客様たちに個別に対応していますが、今日は、一般的な対応方針をご案内します。意外と多い反応が、「よく分からないけど、移管しておこう」という、なんとなく移管派です。
 
非課税枠を移管するというと、なにか得をした気分になり、移管しないというと、失いそうな怖れを感じるのでしょう。実は、それは逆なのです。安易に移管すると、損をする場合があるので、ご注意ください。後ほど、具体的にご説明します。
 
それから、移管してしまうと、非課税枠を過去資産で使い切ってしまい、新規投資ができなくなるのかという直感もありがち。しかし、これはまったくの間違いです。非課税枠がなくても、投資はできます。ただ、収益に課税されるだけです。他には、売却しないと課税されてしまうなんて勘違いもあります。今回でどんな措置を取ろうとも、NISA資産なら過去5年間の収益に課税されることはありません。

今日は、ロールオーバーに関する基本を、ご案内しますが、私は、投資信託で国際分散投資をすることをお手伝いしています。ですから、同様の手法を取っている方のみ、参考にしてください。銘柄株でNISAを使っている方には、多少ミスマッチな部分があることをお断りしておきます。
 

来年の投資予定額が120万円超なら、移管せず

 基本的な指針は、こうです。来年に新規資金で120万円以上の投資をしそうな人、たとえば、毎月10万円以上のつみたて投資をしている人は、迷うことなく、「移管せず」という選択が正解です。120万円というのは、現在のNISAの年間上限額です(手数料などの費用は含めない約定金額で考察しています)。
 
なぜなら、移管すると、来年の非課税枠が無くなってしまい、新規資金による収益を非課税とする可能性を失うからです。まあ、5年前に投資した保有資産と、来年に投資する見込み資産と、どちらの方が、これから5年で収益が出るのかと深刻に考えだすと、非常にむずかしくなってしまいます。
 
将来のことは、厳密には分かりませんが、過去の銘柄選択よりも、来年の銘柄選択の方が、時勢にマッチしているだろうと考える方が、自然です。よって、来年の投資予定金額で、移管の可否を決めてください。
 

来年投資が120万円未満でも、移管しないケースは?

来年の投資額が、ゼロという方は、もちろん全部移管です。計算が必要なのは、来年の投資額が、120万円未満の方です。この方は、120万円から、来年の投資予定額を差し引いた差額だけを、非課税口座に移管すればよいということになります。つまり、来年末の時点で、非課税枠利用金額がほぼ120万円となるように、移管金額で調整をするのです。

その場合には、全部移管でもない、移管せずでもない、一部移管という選択になります。来年の購入予定額だけ、非課税枠を空けておくという折衷的対応です。

たとえば、2014年に投資した非課税資産が100万円ある。来年の投資予定額は70万円である。そうなると一部移管の金額は、<120 - 70 = 50>と計算して、50万円となります。ただし、来年の投資総額が120万円未満の方でも、移管しない方がよいケースがあります。それは、来年に、なんらかのリバランスが予想できる場合です。
 
たとえば、成績の悪いファンドを持っていたとします。しかも、待っていても改善しないという定性的欠点が確認できたなら、ある時点で処分して、その売却資金でもっと元気の良いファンドを買おう、と計画します。もしその乗換えが来年にあるとしたら、その乗換え分の非課税枠を空けておいた方がよいのです。
 

一部移管では、何を移管し、何を移管しないか?

ただ、一部移管で悩ましいことは、金額指定ができないことです。証券会社は、一部移管に関しては、銘柄ごとの選択で対応しています。年間総資産の一部移管という選択はできても、ひと銘柄の中で、移管資産と非移管資産とに分けることはできません。5年前に買った非課税資産のファンドのうち、ある銘柄だけを移管して、残りの銘柄をまったく移管しないという選択です。
 
では、5年前に購入したファンドの中から、どうやって移管するファンドと移管しないファンドを選ぶのか?
 
私は、このように考えます。収益性の高いファンドから優先して移管して、低いファンドを残します(残すというのは、課税口座に移管すると同義)。もちろん、収益性とは、将来の5年間にわたる収益性ですから、正直言って「神のみぞ知る」ということになるでしょう。
 
将来の収益について確信がなければ、過去の実績に頼るしかありません。過去収益の高いファンドが、将来も高くなりそうだと考えることは当然です。結論として、過去収益の高いファンドを一部移管に選ぶこととなります。
 
ここまで、ロールオーバー(非課税口座への移管)に関する、具体的な対応方法をご案内してきました。日本では、史上初めての手続きなので、いろいろ混乱した情報もあります。熟慮して賢明な選択をお願いします。

たとえば、あるサイトには、損をしている人は移管した方がよいという専門家が登場しています。確かに、理屈はそうですが、2014年の投資分が5年経っても損を出しているとしたら、それは何かが間違っています。あと5年繰り越したからといって改善することはないでしょう。投資を止めるか、抜本的な見直しが必要です。決してロールオーバー選択で解決できる問題ではありません。
 
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