実は、貯金目標は、周りの人に打ち明けた方が、成功する確率が高まることが分かっています。フェリペ・キャストらの研究(1)によると、貯金目標を公表したグループの方が、しなかったグループと比べて65%も貯金額が多かったのだとか。
公表の有無1つで、貯金額が1.5倍以上も変化するのですから、馬鹿にはできません。こういった背景もあり、個人としては、「バシバシ貯蓄目標は周りに公開すべき!」と考えております。
正しい貯蓄目標の立て方
ただし、貯蓄目標を立てればなんでもよいというわけではありません。それこそ、年収100万円の人が「今年は1000万円を貯める!」なんて発言したところで、これには無理があるわけです。だから、貯蓄目標を公開する以前の問題として、正しい目標設定のコツを身につけるとよいでしょう。このスキルは、貯蓄以外でも、何にでも使うことができるので、覚えておいて損はないと思いますよ。
デューク大学の研究(2)によると、目標を立てるときには、「大胆な目標を、細かく分解して、具体的な小目標に落とし込むとよい」のだとか。ここでの大胆な目標は「ストレッチ・ゴール(Stretch Goal)」、具体的な小目標は「スマート・ゴール(Smart Goal)」なんてふうにも呼ばれています。
「大胆な目標(ストレッチ・ゴール)」については、ドラッカーの教え子である企業コンサルタント、ジム・コリンズが、その有効性を指摘しています。ジム・コリンズは彼の著書(3)の中で『不可能なくらい高い目標(BHAG, Big Hairy Audacious Goals)』を成長の起爆剤として活かしていたことを指摘しました。
彼の言葉をそのまま借りると、つまり、「大胆な目標は進歩を促す強力な仕組み」なのだとか。ですから、ぼくらも思い切って、大きな目標を立てることで、モチベーションが高まるだけでなく、人生を大きく変えることができるかもしれません。
では、大胆な目標とは何か?というと、「今の生活を続けているだけでは、なしえない目標」を目安にするとよいでしょう。できることなら、生活習慣を変えて初めて達成できる目標だとよいですね。
一方、「具体的な小目標(スマート・ゴール)」についても、よい方法があります。これは、企業コンサルタントのGeorge T. Doran氏が、彼の執筆した記事(4)の中で提唱した目標設定法です。彼によると、「良い目標は、SMARTの法則を満たしている!」のだとか。
SMARTの法則は、ビジネスの場でも用いられることのある目標設定法です。具体的には、目標を立てるときには、下記の5つの点に気を配るとよいのだとか。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定できる)
- Achievable(達成できる)
- Realistic(現実的)
- Timely(締切がある)
ここまでの話をまとめると、やることは3つです。
ステップ1:大胆な目標(ストレッチゴール、BHAG)を立てる
ステップ2:具体的な小目標(スマートゴール)に落とし込む
ステップ3:家族や友人と目標を共有する
たとえば、こんな流れです:
ステップ1:大胆な目標(ストレッチゴール、BHAG)を立てる
毎年、40万円を貯金する(そして全額をつみたてNISAで運用する!)
ステップ2:具体的な小目標(スマートゴール)に落とし込む
- 具体的:毎月、証券口座の自動引落を使って、定期的に貯蓄する
- 測定できる:ボーナス月は1カ月10万円、それ以外の月は2万円ずつ貯蓄する
- 達成できる:電気代と通信費を節約すれば、お金が浮くから大丈夫!
- 現実的:ボーナスを受け取るため、怠けないようにする
- 締切がある:1年以内に達成する
仲のよい同僚と、妻と、目標を共有する
まとめ
上述したステップ1~ステップ3までの流れを踏襲することで、貯蓄の目標を達成できる確率が格段に高まるでしょう。この方法は、貯蓄に限らず、仕事でも、プライベートでも活用することができます。どれも再現性バツグンのテクニックですから、ぜひ実践してみてはいかがでしょうか。●参考文献
- ディスカッションペーパー:Felipe Kast, Stephan Meier, and Dina Pomeranz, 2012, “Under-Savers Anonymous: Evidence on Self-Help Groups and Peer Pressure as a Savings Commitment Device" , IZA Discussion Paper No. 6311
- カンファレンスペーパー:Scott Jeffrey, Alan Webb, Axel K-D Schulz, 2006, “The Effectiveness of Tiered Goals Versus Stretch Goals”, CAAA 2006 Annual Conference Paper
- 書籍:ジム・コリンズ, 1995, 『ビジョナリー・カンパニー時代を超える生存の原則』, 日経BP社
- 記事:George T. Doran, 1981, "There's a S.M.A.R.T. way to write management's goals and objectives", Management Review, AMA FORUM, 70(11), pp. 35–36