安易に株主優待目当てで株を買うと危険?

株式投資の醍醐味の1つは、やはり「株主優待」でしょう。株主優待とは、会社から株主に与えられる「プレゼント」のようなものです。たとえば、レストランを経営している会社の株を持っていると、「お食事券」が貰える……といった具合です。もしかすると、あなたも株主優待目当てで、株取引を始めた投資家の1人かもしれませんね。
 
しかし、安易に「株主優待目当てで株を買うと危険だ」ということを、ご存じでしょうか?

実は、配当金や株主優待を受け取った直後は、株価が急激に下がりやすい傾向があります。だから、「株主優待が貰えるから」と思って株を買ったのだけど、株価がドカンと下がって大損してしまう……という失敗をする方が、後を絶たないのです。
 
とはいえ、ぼくは株主優待制度すべてを否定したい訳ではありません。そうではなく、「きちんと計画的に株を買わないと、得をするつもりが損をしてしまうよ!」ということをお伝えしたいのです。それと同時に、正しい株主優待銘柄の買い付け方を知って欲しいと願っています。
 
そこで今回は、数々の論文で得られた知識を組み合わせて、「株主優待銘柄の買い時は、いつなのか?」について、考えていきます。この方法を知ることで、損を減らしながら、利益を増やせると期待できます。
 

そもそも、株主優待企業は安全なのか?

一部の賢い方であれば、「株主優待のような制度を行ったせいで、会社としての業績が悪化してしまうのでは?」と心配される方もいるでしょう。そもそもの話として、株主優待銘柄を買うのは、安全なのでしょうか?
 
この点については、心配の必要はないでしょう。株主優待銘柄に、特別な危険性は認められていません。慶應義塾大学の経営管理研究科に提出された修士論文(1)によると、株主優待企業は、安全性が高いのだとか。具体的には、株主優待制度を始めた会社の株価は、値動きが緩やかになる傾向が見られたそうです。また、優待銘柄と非優待銘柄の間で、パフォーマンスの有意差が見られませんでした。
 
よって、株主優待をやっているからといって、過度に業績の悪化を心配する必要はないと言えそうです。むしろ、値動きが緩やかである分、その他の銘柄と比べると、安全性が高いと期待できるでしょう。
 

買い付けるなら、権利確定の「3カ月前」! 

次に気になるのが、「いつ株を買い、いつ株を売るべきなのか?」という、タイミングについてです。この点については、いくつかの論文で良い方法が見つかりました。これから、詳しい方法をご紹介します。
 
まず、株主優待銘柄を買うときには、「権利確定の3カ月前」が良いです。野瀬氏の研究(2)によると、株主優待銘柄の株価は、権利確定の3カ月前から上昇する傾向が確認できました。
 
ですから、権利確定直前になってから株を買うのは、手遅れだということです。これでは、すでに株価が釣り上がった状態で買い付けてしまいます。損をする可能性が高いので、やらない方がよいでしょう。
 

売るなら、権利確定後の「月初め」! 

では、株主優待を受け取った後は、いつ株を売るのがよいのでしょうか。コレについても、答えがあります。
 
日本の株式市場にはサイクルがあります。つまり、「◯月になったら上がる」「◯月になったら下がる」のように、周期的に値動きをしているということです。この周期を活かして取引することで、株主優待銘柄を、ベストなタイミングで売り抜けられると期待できます。
 
ここでご紹介したいのが「TOM効果」と呼ばれる相場サイクルです。「TOM」とは、「Turn of the Month」の頭文字を取った略語です。日本語に訳すと「月替わり」という意味です。つまり、月末月始のことを指します。John J. McConnellらの研究(3)によると、米国株式市場においては、過去90年間もTOM効果が確認されています。
 
また、ニッセイ基礎研究所の伊藤氏の調査(4)によって、日本株市場においてもTOM効果の存在が確認されています。日本株市場の場合は「25日~31日」にかけて最も株価が上がりやすいようです。よって、株主優待銘柄を売るのは、株価が上がってからの「月初」を狙うことで、利益を出しやすいと期待できます。
 

まとめ 

さいごに、「科学的に正しい株主優待の受け取り方」の要点をまとめます。株主優待を最も有利な方法で受け取るには、以下の手順がベストだと考えられます。
 
  手順1:権利確定の3カ月前に株を買う
  手順2:権利確定後の月初に株を売る

 
この方法を知った上で優待銘柄を受け取るのと、知らずに受け取るのでは、運用成績が全く変わることでしょう。賢く、上手に株主優待を受け取るためにも、本記事でご紹介したテクニックを、実践してみてはいかがでしょうか。
 
 
●参考文献
  1. 論文:柏田, 井上, 2011, “個人株主向け施策の意義”, 慶應義塾大学大学院経営管理研究科(修士論文)
  2. 論文:野瀬, 2015, “株主優待実施企業の株式パフォーマンス”, 証券経済学会年報, 第49号別冊
  3. 論文:John J. McConnell and Wei Xu, 2008, “Equity Returns at the Turn of the Month”, Financial Analysts Journal, 64(2), pp. 49-64
  4. 調査:伊藤拓之, 2013, “投資の法則は変化したか?(4)―日米株式の写真相場から考える「曜日効果」・「月替り効果」アノマリー”, ニッセイ基礎研究所, 2018年9月30日時点
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