うるさいいびきは放置してはいけない?
あなたは「いびき」をかきますか? 自分ではなかなかわかりませんが、日本人の約2000万人がいびきをかいて眠っていると考えられています。家族にいびきがうるさいと指摘されたり、旅行や出張などで同室になった人から「いびきがうるさかった」と言われたりして、自分がいびきをかいていることを初めて知ったという人も多いでしょう。
私が医者になった30年前、いびきは医学的に問題があるものなのかが微妙で、あまり取沙汰されることはありませんでした。今でもいびきはよくある悩みだと思われそうですが、実は死に直結する恐ろしいサインのこともあることが分かってきたため、決して軽く考えてはいけません。
今回は危険ないびきとその対処法について解説しましょう。
いびきの怖い原因である「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の症状
いびきは大きく2種類に分けられます。一つは風邪などからくる鼻づまりや疲れなどが原因で起こる、一時的な「ただのいびき」。もう一つは睡眠時無呼吸を伴う「危険ないびき」。睡眠時無呼吸を伴ういびきが寝ている間に常にある場合、放置しておくとますます悪化し、様々な重病を誘発し、命に関わる危険性があります。
「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome、以下「SAS」)は、呼吸が止まるたびに脳が短時間覚醒するため、眠りが浅くなってしまいます。そのため、起床時の頭痛、日中の強い眠気や疲労感、集中力・記憶力の低下などの自覚症状が現れます。その他、不眠、夜間頻尿、寝相が悪いなどの特徴も見られます。SASの人は、高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などを合併していることも多いのです。突然の居眠り運転による悲惨な交通事故の報道が時々ありますが、これもSASの影響が多いと言われています。
SASの原因は、肥満による首回りの脂肪の増加、小児では扁桃腺肥大、アデノイドの増殖、気道への舌の落ち込み、舌の大きさ、鼻閉などが挙げられます。
危険ないびきの止め方・治し方
危険ないびきを止める対策法としては、まずは耳鼻科に行き、いびきの原因を突き止めて適切な治療を受けることが大切です。現在ある治療法の一例として、「持続陽圧呼吸療法」というものがあります。これはCPAP(シーパップ)という機械で圧力をかけた空気を、鼻から空気の通り道である気道に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法です。CPAP療法は、平成10年に健康保険適用になりました。「いびきをかいているそうだが、自分では分からないし気にならない」「家族のいびきがうるさいが、仕方がないから我慢しよう」と軽く考えるのは禁物。いびきはくれぐれも甘く見ず、適切な対処をすべき症状なのです。