耳・鼻・喉の病気

耳鳴りの止め方・治し方…キーンという耳鳴りの原因は?

【耳鼻科医が解説】耳鳴りの止め方はあるのでしょうか? キーン、ジージー、ゴーッなど、様々な聞こえ方をする耳鳴り。高齢になり慢性化すると治療が難しいため、30~40代の早い段階で対処することが大切です。ストレスや不眠、不安感などの心因的な要因や、喫煙、カフェインの過剰摂取などの生活習慣も影響する耳鳴り。原因と止め方、現段階での治し方について解説します。

坂田 英明

執筆者:坂田 英明

耳鼻科医 / 耳・鼻・喉の病気ガイド

耳鳴りの止め方はあるのか? キーンという耳鳴りが止まらない

耳鳴りの原因とは

ひどくなると睡眠や仕事など日常生活にも影響する耳鳴り。30~40代でも注意が必要です


キーンという耳鳴りがする、時々耳がつまった感じがする、音が響いて聞こえるなどの感覚は、本格的な耳鳴りの始まりの可能性があります。すでに慢性的な耳鳴りがある方は、耳鼻科で「よくならない」と言われてしまった経験がある方もいるかと思います。耳鳴は60歳代から圧倒的に多くなり、耳鳴が常にし始めてからでは残念ながら小さくするのは大変です。慢性化させないためには30~40代の早い段階から注意することが重要です。

また、耳鳴り自体で命を落とすことはありませんが、ひどくなると生活に様々な支障をきたします。耳鳴りが気になることで、夜眠れない、集中できない、イライラする、気持ちが落ち込むなどの悩みを抱え、自殺してしまいたいと訴えられるほど精神的に追い詰められてしまう患者さんもいるほどです。今回は、耳鳴りの原因と治し方について、わかりやすく解説します。

<目次>  

そもそも耳鳴りとは・耳鳴りの三原則

そもそもの耳鳴りはほとんどが自覚的に聞こえる音で、聞こえ方も様々です。キーンという音だけでなく、セミが鳴いているようなジージーという音、ゴ―ッという音など、様々な訴えがあります。

聞こえ方がどうであれ、全ての耳鳴りに共通する三原則とも言えるものがあると考えます。

■耳鳴り三原則
1. 耳鳴りがない人はいない……耳鳴りがないという人は、ただ音が小さく自覚がないだけ。また時々耳鳴りの自覚がある人も、数時間でおさまれば問題ない
2. 耳鳴りは常に変化する……日単位ではなく、時間単位でも変化する
3. 耳鳴りを止める治療は簡単ではない……治らないと言われてしまうケースも多い
 

耳鳴りの仕組み……睡眠・ストレス・不安感などの心因的な要因も影響

基本的なことですが、音は空気中を空気振動で伝わります。音が内耳へ入ると、空気振動がリンパ液の液体振動に変化します。耳鳴りは、この液体振動が電気エネルギーに変換される際に生じるものです。

そのため、原因の多くは神経の異常興奮によるものと言えます。

耳から出た電気信号は、脳に入ると記憶の倉庫である「海馬」や、喜び・睡眠・ストレス・不安などを感じる場所である「扁桃体」の影響を強く受けることになります。したがって心因的な要因もかなり関係してくると考えられています。
 

耳鳴りの原因……ストレス・不眠・カフェインの過剰摂取・喫煙など様々

耳鳴りの原因は様々ですが、先述した通り心因的な要因も影響してくるため、ストレスや不眠、不安感が強いと起こりやすくなります。他にも、顎がガクガクしやすい人や、緑茶・紅茶・コーヒーなどカフェインの過剰摂取が見られる人、毛染めなどの有機溶剤の影響を受けている人、喫煙習慣がある人、騒音曝露や睡眠異常・不眠などの睡眠障害、頭痛がある人などに多く見られます。

該当することがある場合は、まずはこれらを改善する生活習慣の見直しが大切と言えるでしょう。
 

耳鳴りの対処法・治療法・耳鼻科受診の目安

残念ながら、耳鳴りの治療法で確実なものはまだありません。しかし諦めてはいけません。生活環境の改善などの環境整備ができたら、まずは内服治療。具体的には、循環改善剤、ビタミン剤、漢方や抗ウイルス剤など症状改善のために試す価値があります。

鼓膜にステロイド剤の注射をして神経の興奮を抑える「鼓室内注入療法」などの治療もあります。

また最近は音響療法(TRT)という補聴器のような機器を耳につけ脳の過敏状態を軽減し、耳鳴りを気にさせなくするといった治療もあります。

もしすでに慢性的な耳鳴りがある場合は、耳鼻科専門医の受診を。若い人でも耳鳴りが3日以上続く場合は、軽く考えずに一度診察を受けるようにしましょう。慢性的ではないが時々耳鳴りがあるという人は、まずはできるところから生活習慣を改善し、耳鳴りの予防・対策に努めてください。
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