飛躍的に短縮されてきている歯科インプラントの治療期間
「単独歯の抜歯即インプラント埋入即時荷重」。何を指すのかわからない方が多いと思いますが、以下の治療内容を1回ですべて行うインプラント治療のことです。
- 抜歯
- インプラント埋入
- 骨造成
- 固定式仮歯の装着
様々なことを一度に行いますが、きちんと準備ができていれば手術は1時間~1時間半ほどで終了します。近年は3DCTなどデジタル化されてきており、手術前の検査でも様々な情報が得られますので、以前に比べ事前に準備できる範囲が広がり、このような低侵襲治療が可能になってきました。時間がかかると思われがちなインプラント治療ですが、かなりスマートで、スピーディーになってきています。
上記の工程も、一昔前までは、1~2の間だけで2~3か月間の間を置く必要がありました。2と3を同時に行ったとしても、2のインプラントを埋入してから4の仮歯を装着するまでに4か月。つまり、上記の1~4の治療を完了させるために、トータルで6~7か月を要していました。
単独歯欠損のケースは、1~4をすべて同時にしていますので手術の直後から仮歯が装着されます。その後、骨が癒着するのを4ヶ月ほど待ち最終的な被せ物を装着して治療完了です。かなりの治療期間の短縮になりますね。そしてなんと言っても外科処置の回数が少なくなるので、痛みや腫れを最小限に抑えられるというメリットがあります。
治療期間は個別判断が重要……海外在住の患者さんの治療ケースを例に
最近は前歯などの単独歯の場合に、抜歯即時インプラント埋入即時荷重をよく行っていますが、難しい条件があるケースもありました。
最近治療した例では、1~4を希望されつつ、
5. 隣の歯にセラミッククラウンが入っている
6. 海外にお住まい
という事情をお持ちのケースがありました。
抜歯時に周囲組織を挫滅させると歯肉の形が大きく変わります。特に審美領域の場合はその挫滅が命取り。挫滅させた組織は治癒する際に吸収し、原型とは変わってしまうからです。もちろん移植でうまくいく場合もありますが、戻らない場合もあります。せっかくきれいに整っている隣の歯のセラミッククラウンの歯肉ですので、この形を崩さないように歯のインプラント治療を行わなければなりませんでした。
右上の治療経過写真は、インプラントにセラミッククラウンを装着した直後のものです。この段階ではまだ馴染んでいませんが、3か月もすれば歯肉がクリーピングを起こし伸びてくるはずです。
この患者さんの場合、海外にお住まいで日本への滞在期間がとても短かった上に、お住まいの国の医療環境があまりよくなく、現地で突発的な問題が起きた場合でもすぐには対応ができないという事情がありました。そのような理由も含めて、術後に絶対にトラブルにならないように様々な準備をしました。そして無事にアバットメントとセラミッククラウンを装着し、1週間後にチェックを行い、治療を終了しました。ここからはメインテナンスです。
このように事前の準備をしっかりと行い計画的に治療を進めれば、何度も通院できないような事情がある場合でも歯科インプラント治療を行うことは可能です。治療期間がネックになっていてインプラント治療を躊躇っている場合、一度信頼できる歯科医に相談してみることをおすすめします。