亀山早苗の恋愛コラム

揺らぐ性、性がない……性の揺らぎで恋愛できない女性たち

「性」が揺らいでいる人たちがいる。男でもあり女でもある、という人もいれば、男でも女でもないと語る人もいる。そんな性の揺らぎによって生きづらさを抱えている女性たちに話を聞いてみた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「性」の揺らぎに悩み、生きづらさを感じている人も

性が揺らぐことはあるのか?

性が揺らぐことはあるのか?


「性」が揺らいでいる女性たち数人に会った。自分が女性であることを認識していない女性もいれば、「性的には無性」「男女の真ん中、中性」「そのときによって男性的になったり女性的になったり」という人まで、さまざまだ。

「男」と「女」の間にいろいろな立場があるのではなく、男と女、それ以外の人々がいると考えたほうがよさそうだ。

今、性について揺らいでいる女性は少なくない。

 

結婚後にセックスが耐えられなくなって、「無性」を自覚

その中のひとり、レイコさん(38歳)は、3年前、11歳の息子を引き取って離婚した。ずっと自分を「ごく普通の女」だと思っていた。だから大学卒業後、すぐに結婚して24歳で子どもを産んだ。その後も共働きでがんばっていたが、30歳を過ぎたころから、それまでも苦痛だった夫とのセックスが耐えられないものになっていく。

「3歳年上の夫と肌を合わせると妙な違和感がある。おっさん同士が抱き合っているみたいだなとふと思って、私は自分を女と感じていないのかもしれないと思ったんです」

そういえば、昔から男の子を好きになったことがなかった。結婚も、恋愛感情が盛り上がってたどりついたわけではなく、なぜか「早いうちに家庭を作って落ち着きたい」と思っていただけ。その相手として男である彼を夫に選んだのだ。なぜなら自分は女だから。

ところが、30歳になって、自分を女だと認識することがつらくなった。

「病院に行きました。どうやら性同一性障害に近いみたいですね。だけど私、どうしても今すぐ男になりたいわけでもないんです。どちらかというと、自分に“性”があることに違和感があるというか。病院では理解してもらえなかったんですが、今思えば、男であれ女であれ、性を決定してしまうことがしっくりこないんです」

夫にすべてを話した。セックスが苦痛であることも、過去を振り返っても恋愛感情をあまり抱いたことがないことも。そこから夫婦はぎくしゃくし、数年を経て離婚に至った。

それ以来、彼女は違和感のあるスカートをやめ、髪を切った。今は一見、ボーイッシュな女性に見えるが、彼女の中では「無性」という認識が強いという。

「無性だったら恋愛しなくてもいい。もしかしたら私は性を超越して、ただ“自分”でいたいだけなのかもしれません」

 

中性か両性か。相手や相性によっても変わる

性が揺らぐことはあるのか?

自分自身の性に悩む方も…


「私は男でもあり女でもあり、恋愛対象もどちらでもというタイプですね」

アキミさん(40歳)はそう言う。彼女もバツイチ、子どもはいない。結婚生活が苦しくて、「普通の」恋愛も苦しくて、今は恋愛感情をもつことが少なくなった。

「そのときどきで男性を好きになったり女性を好きになったり。自分の気持ちが男性的でありながら男性を好きになることもあるし、自分の気持ちが女で男性を好きになることもある。相手によって自分がカメレオンみたいに変わるんです」

恋愛に巻き込んでしまう相手を混乱させる。彼女自身も生きづらさに悩んでいるのに、ただの身勝手なわけのわからない人間だと思われることでさらに傷つく。

体の性と心の性が一致していることもあれば、していないこともある。常に性が揺らいでいるのだ。相手との組み合わせや相性も関係するらしい。

「3年ほど前に、女としてある男性を好きになったことがあるんです。彼も私を好きになってくれて、大恋愛になりました。ただ、彼が既婚だったのでいろいろ問題もあって。そのうち関係が安定してきたら、だんだん私、彼に対して同性みたいな気持ちが強くなっていったんです。それは自分の気持ちが男に変わっていったというか。そうなると彼との関係も不安定になって。彼に女性として扱われることに違和感が募っていくんですよ。自分でも戸惑いました」

女はこうあるべき、男はこうあるべきという認識や経験があるから、こういう人たちはよけいに戸惑ってしまうのかもしれない。アキミさんが出した結論は「私は私」だった。

「世の中の常識とは違うけど、私は私で生きていくしかないんだな、と。今もカウンセリングには通っていますが、一般的な“女”に自分をあてはめて苦しくなるよりは、ちょっと逸脱していることを認識していたほうが気持ちがラクになる。だから今は恋愛も小休止ですね」

いろいろな人がいろいろな生きづらさを抱えて日々を過ごしている。すっきりと「理解」するのはむずかしいこともある。だが、自分の生きづらさを分析しながら生きているアキミさんには、なぜか人を惹きつけるものがあった。
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