今も人々の心の中に生きているチェ・ゲバラ
ハバナ旧市街、サン・ペドロ通り沿いの建物の壁面にあるチェ・ゲバラの肖像画。このようなものが、キューバじゅうのあちこちで見られます。
アルゼンチン出身、革命のゲリラ戦士
キューバへ行くのであれば、チェ・ゲバラのことをある程度知っておいて方が楽しみも増えるので、ここで経歴を簡単に見てみましょう。この人物は1928年にアルゼンチンで誕生しました。学生時代に南米放浪の旅をするなど、冒険心が旺盛だったようです。大学で医学を学んで医師の資格を取得したのち、メキシコに滞在している時、革命を目指しキューバから亡命していたフィデル・カストロと出会いました。そして、当時のキューバの独裁政治の状況や、革命の構想を聞いて意気投合し、キューバ革命軍のメンバーになったのです。
1956年に革命軍はメキシコからクルーズ船を使ってキューバ東部へ渡り、政府軍を相手にゲリラ戦を展開します。ゲバラは革命軍の幹部と軍医を兼ねるという、重要な立場にありました。
1958年の暮れ、キューバ中部のサンタ・クララ(Santa Clara)において、ゲバラが率いる部隊が政府軍を破り、これが決定的となって政府軍は敗北。年明けに革命軍による新政権が成立するのでした。チェ・ゲバラは新政権で国立銀行総裁、工業大臣などの要職を歴任し、1959年にはキューバの通商使節団に同行し、日本を訪れました。
なお、「チェ」というのは本名ではありません。アルゼンチンでは挨拶の時に「やあ!」といった意味で、「チェ」(Che)と呼びかけることが多く、ゲバラはキューバに来てからもそうしていたそうです。いつしかこれがニックネームになり、公式な場でも「チェ」と呼ばれるようになりました。
1961年に発行された1ペソ紙幣。左側の「UN PESO」の文字の下に、当時国立銀行総裁だったチェ・ゲバラの「che」というサインがあります。このサイン入りの紙幣は、現地でコレクションとしての価値が高いそうです。
半世紀前、ボリビアで終えた生涯
ゲバラは革命のゲリラ戦士から政治家へ転身したのですが、その後キューバ以外で独裁政権下にある国の解放を目指し、1965年にコンゴ、翌年にボリビアへ渡り再びゲリラ戦を展開しました。しかし、思い通りの成果を出せないまま、1967年にボリビア政府軍に捕らえられたのち、射殺されました。まだ39歳という若さで、革命の英雄はこの世を去ったのです。
キューバでは、チェ・ゲバラの足跡も訪ねてみたいものです。各地にゲバラゆかり地があるのですが、今回は比較的手軽に行くことができる、ハバナ市内の3箇所を紹介します。
革命広場(Plaza de la Revolucion)
ハバナ市内ベダード地区、革命広場に面して建つキューバ内務省のビルの壁面に、大きなチェ・ゲバラの肖像があります。
内務省と通りをはさんで並ぶ情報通信省のビルにも、1959年に亡くなった革命家、カミロ・シエンフエゴスの肖像があります。
また、チェ・ゲバラは革命広場でフィデル・カストロらとともに演説をしたこともあるので、その意味でもここはゆかりの地です。空港と市街地中心部の中間にあるので、旅行のスケジュールによっては、移動の途中に寄ることもできます。
広場をはさんだ反対側にはキューバ独立の父とも呼ばれている、ホセ・マルティの記念博物館もあります。
〈DATA〉
■革命広場(Plaza de la Revolucion)
住所:Plaza de la Revolucion(Googleマップ)
入場時間:常時
入場料:無料
カバーニャ要塞(Fortaleza de San Carlos de la Cabaña)
カバーニャ要塞にあるゲバラ博物館の中には、チェ・ゲバラの執務室が残されています。
旧市街中心部からカバーニャ要塞へのアクセス手段はタクシーが一般的ですが、観光客向けの路線バス「ハバナ・バスツアー」の「T3」ルートも利用可能です。
〈DATA〉
■カバーニャ要塞
住所:Via Monumental y Carretera de la Cabaña(Googleマップ)
入場時間:10:00~22:00
入場料:18:00まで6CUC、18:00以降8CUC
チェ・ゲバラ邸宅
革命軍勝利ののち、新政権の要職に就いたチェ・ゲバラが住んでいた家が、残されています。
所在地はカバーニャ要塞から南東へ500mほどで、近くにある大きな白いキリスト像が目印になります。カバーニャ要塞と合わせ、タクシーで回るのが効率的です。
〈DATA〉
■チェ・ゲバラ邸宅(Centro Cultural Casa del Che en la Cabaña)
住所:Carretera de la cabaña(Googleマップ)
入場時間:月~土 10:00~18:00
入場料:6CUC
よき旅の思い出、ゲバラ・グッズ
キューバの観光地のどこへ行っても、土産物店にはTシャツ、キーホルダーなどのさまざまなゲバラ・グッズが置かれています。どれを記念に買うか迷ってしまうほどです。また、歴史的な報道写真の絵葉書も豊富で、生前のゲバラが撮影されたものもあります。土産物店はハバナの空港にもあるので、帰国する時に改めて旅を振り返りながら、記念になるものを探すのもいいものです。
土産物店ではチェ・ゲバラの写真の絵はがきも売っています。
なお、キューバでは兌換ペソと人民ペソの2種類の通貨が使われ、かなりわかりづらい面があるので、これについては別の機会に紹介しようと思います。
3ペソ(人民ペソ)の硬貨。左が「TRES PESOS」(3ペソ)と刻まれた表、右がチェ・ゲバラの肖像がある裏です。
3ペソ紙幣。上が兌換ペソ、下が人民ペソ。それぞれチェ・ゲバラの銅像と肖像画があります。観光客には、特に人民ペソの絵柄が人気です。
チェ・ゲバラ没後40年を記念し、2007年に発行された切手。
サンタ・クララ市のはずれにある、チェ・ゲバラ霊廟(Googleマップ)。高くそびえた銅像は、3兌換ペソ紙幣の絵柄にもなっています。