亀山早苗の恋愛コラム

「恋ナシ婚」が生きやすい…結婚に恋愛はいらない?

以前、共に生活する「共生婚」について書いたことがある。最近また、「恋ナシ婚(恋愛感情のない結婚)」が増えているような実感がある。その背景にある事情はセクシュアリティや独自の恋愛・結婚観など様々だ。二つの事例を紹介する。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「共生婚」のその後、「恋ナシ婚」が増えている?

恋ナシ婚とは

恋ナシ婚とは

過去に「共生婚」という話を書いたことがある。共に生きる、のではなく共に生活する結婚のスタイルを指す。 婚姻届は出し、同居もしているが、セックスはなし、食事もほとんど一緒にしない。家事もできるほうがやる。互いに自由を尊重しあう。家では基本的にそれぞれが自室にいるが、地震でもあれば「怖い」「大丈夫だよ」という会話があってほっとする。互いの実家には一緒に行くこともあり、親からは「結婚しないの?」と言われずにすむ。

ゆるいつながりからくる安心感、ひとりではない満足感などがあることから、今後、こういう関係が増えていくのではないかと感じていたが、実際、共生婚にも通じる「恋愛感情なき結婚=恋ナシ婚」が増えているような実感がある。
 

セックスや恋愛などの「男女関係」にとらわれたくない

意気投合してすぐに結婚へ。でも恋愛関係はない

意気投合してすぐに結婚へ。でも恋愛関係はない


「恋愛はしたくないけど結婚はしたかったんです」

そう話してくれたのは、サワさん(40歳)だ。同い年のリョウヘイさんと昨年、婚姻届を出した。友人主催の飲み会で出会ったふたりは、すぐに意気投合し、結婚の話が出た。

「そのとき私が、結婚したいけどセックスはしたくないと言ったら、彼が目を輝かせて、“実は、自分は同性愛者だ”と。ただ、一般企業に勤めていて親も世間体を気にしているため、誰にも告白できなかったって。同性を好きにはなるけど、どうしても同性のパートナーがほしいわけでもないらしいんです。なんだかその気持ち、わかるなあと思ったんですよね」

それをきっかけに結婚することを決め、すぐに婚姻届を出して同居を始めた。友人だけを集めての気軽なパーティーをし、互いの実家へ報告に行った。

「彼のおかあさんがとても喜んでくれて。おねえさんは私にこっそり『あの子、同性愛者だと思っていたけど違うの?』って。彼から否定してほしいと頼まれていたので、『いいえ』とにっこり答えておきました」

彼は自分自身の性的指向を主張するより、世間に合わせて生きることを願っているのだ。そんな気持ちを理解しているからこそ、サワさんは彼を庇った。

「私は同性愛者ではないけど、恋愛拒否症なんだと思います。異性に好意は抱くけど、それが恋愛感情となっていく過程がよくわからない。セックスもしたことはあるけど、自分には必要ないなとも思ったし。長年、生きづらさは感じていました。だからこそ彼の気持ちもわかるような気がしたんでしょうね」

恋ナシ婚をしてからは、精神的に落ち着いている。

「恋愛ナシで、いきなり家族ができた感じ。彼には何でも話せるし信頼もしている。お互いに相手を思いやって暮らしている実感があるので、とても快適です。一般的な男女関係にはあてはまらないけど、自分が幸せであることが重要だと思っています」

 

「性自認」に苦しむ人たちの居場所にも

性自認に悩み、お互いに生きやすいように生きようと言ってくれたパートナーと事実婚へ。

性自認に悩み、お互いに生きやすいように生きようと言ってくれたパートナーと事実婚へ。


もうひとり、パートナーと事実婚をしているナツコさん(36歳)は、「私はXジェンダーだと思うんですよ」と言った。Xジェンダーとは「自分が男であるとか女であるとかを自認しない人たち」のことだ。

そもそも、自分の性がどう決まるかについては、生物学的、社会的などさまざまな要因がある。性同一性障害の場合は、体と心の性が違うのだが、それ以外にも自分の性に違和感をもっている人はたくさんいる。
自分が男(女)であると明確に思えればラクなのだが、人によってはそうではないのだ。男と女、どちらの性にもあてはまらないと考える人たちをXジェンダーと呼ぶ。これは日本独自の言い方だ。代表的なのは「中性」「両性」「不定性」「無性」の4つ。もちろん、自分の性自認がXジェンダーだからといって、性的指向(どういう人を好きになるか)は、また別の話である。

「私の場合、体は女性ですが、自分としては性を感じていない。『無性』に入るんでしょうか。私が事実婚をしている彼は、自分の性を男だと思うこともあれば女だと感じる瞬間もあるみたい。ネットで知り合って、2年くらいつきあって同居しました。恋ナシ婚ですが、互いを必要とする気持ちはある」

性はそもそもグラデーションであり、男、女、その中間にきっちり分かれるわけではない。そのグラデーションの中を行き来する人もいるだろう。

「今でこそみんな服装などもユニセックスになっていますが、私が若いころはパンツを穿いていると女らしくない、と言われたこともあります。自分が何者で何を求めているのかもわからず、苦しんできました」

もちろん、Xジェンダーだから恋愛感情がもてないというわけではない。彼女がたまたまそうだっただけだ。事実婚の彼とは、そのあたりの生きづらさで共感を覚えた。

「どう生きてもいいんだよ、お互いに生きやすいように生きようと言われて、初めて自分の居場所があると感じました」

家族以上のソウルメイト、だからともに生きている――恋ナシ婚の裏には、さまざまな人間の苦悩と葛藤があるのかもしれない。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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