ロボットundefinedテクノロジーの進化undefined人生100年時代

赤ちゃんの見守りもロボットがやるようになるかも?


テクノロジーが進化し、多くの仕事がロボットと人工知能による代替が進むことが予測されるなか、定年までの貯蓄と年金だけでは絶対足りない年数を生きる可能性が高い「人生100年時代」をどう生きたらいいのかについて、以前、記事に書きました。

実は、こうした変化が激しい時代に、変化の波にのまれ心の健康を害することなく生き抜いていくためには、「自分の生きている世界は首尾一貫している、腑に落ちる」という、「一本の柱」となるような感覚を身につけておくことが重要です。

激動の社会にいても、健康状態を維持できている人は、こうした一貫性の感覚、専門用語で「首尾一貫感覚」が高いことが明らかになっているのです。

そこで、ここでは、まず「首尾一貫感覚」について解説した上で、一貫性のある、健康生成的な生き方を探っていきます。

「首尾一貫感覚 (SOC : Sense of Coherence)」とは?

「首尾一貫感覚」というのは、「Sense of Coherence」の和訳です。

シンプルに言うと、「首尾一貫感覚」とは
  • 自分を含む世界をどう捉え(把握可能感=わかる感)
  • どう関わり(処理可能感=できる感)
  • どう向き合っているか(有意味感=やるぞ感)
という、私たちの根底にある持続した、認知、行動、動機づけに関わる感覚のことで、この感覚が高いと、ストレスを感じにくくなるのです(※1、2、3、4)。

以前ご紹介した「最高齢アプリ開発者」として知られる若宮正子さんが、60歳になってからパソコンを学んだり、80代でアプリ開発をするという生き方を選択できたのは、この「首尾一貫感覚」が高かったからこそと感じます。

そこで今から、若宮さんの身に起きた出来事(人によってはストレスと感じる出来事)と、その出来事をどのように感じ、対処していったかを分析してみます。

世界最高齢アプリ開発者、ひな壇アプリ、若宮正子

若宮正子さんと筆者


感覚1.わかる感

「わかる感」とは、自分の置かれている状況を理解できている、または今後の状況がある程度予測できるという感覚のことです。

この感覚が低いと、自分の置かれている状況を理解できないので、「どうして自分がこんな目に!」と混乱しやすくなったり、見通しのつかない将来に対して、「これからどうしよう」と途方に暮れやすくなります。

【若宮さんのケース】
●出来事
外出し、人とおしゃべりするのが大好きなのに、退職後は、母親の介護のために自宅にいなければならなくなる。

●若宮さんが感じたこと
「人と交流したいし、親の介護もしたい。でも、介護のためには、自宅にいないといけない。そうなったら、自分はその孤独な状況に不満を覚えるだろう」
とまず、自分の置かれている状況を理解し、そのうえで
「では、自宅にいながら、人と交流するには、どうしたらいいだろう?」
「パソコンができれば、オンラインでチャットができるらしい。すると、自宅にいても、いろんな人と出逢え、交流できる! パソコンを買ってみよう」
と建設的に、将来への見通しを立てていかれました。

つまり、「わかる感」が高かったからこそ、ITの世界へと踏み出すような思考へとつなげられたといえます。

感覚2.できる感

「できる感」とは、自分の中や外にある資源を集めて、困難な出来事に直面しても、「自分ならなんとか切り抜けられる」「やっていける」という感覚のことです。

この感覚が低いと、「自分になんて、ムリだ」「自分を助けてくれる人なんていない。一人でなんとかしなくては」等と感じられ、追いつめられやすくなります。

【若宮さんのケース】
●出来事
「高齢者が楽しめるゲームがないから、つくってもらいたい」と思い、エンジニアに相談したところ、「プログラミングを学べば、自分でつくれるんじゃない?」とアプリ開発を提案され、81歳から、そのエンジニアからスカイプを使ってプログラミングを学ぶことになった。

●若宮さんが感じたこと
「思い返せば、60歳からパソコンを勉強し始めた。メカが苦手で、パソコンをつなぐのに3か月もかかったけれど、なんとかできた」
という、「過去の成功体験=自分の中にある資源」と
「私には、プログラミングを教えてくれるエンジニアがいる」
と自分の外にある資源を集めて、
「きっと何とかなるだろう」
と思えました。

つまり、「できる感」が高かったからこそ、「アプリ開発」という未知の世界に躊躇することなく、踏み出すことができたのでしょう。

感覚3.やるぞ感

「やるぞ感」とは、ストレスをもたらす出来事を「これは自分にとって、挑戦だ」「これを乗り越えることは人生に必要なことだ」と信じ、日々の営みへのやりがいや生きる意味を見出せる感覚のことです。

この感覚が低いと、「これだけつらいのに、なぜがんばらないといけないんだ」「もうどうでもいい」と感じやすくなりますが、この感覚が高いと、その出来事に何らかの意味を見出し「これは自分にとって、挑戦だ」等と感じられるため、諦めてしまいにくくなるのです。

【若宮さんのケース】
●出来事
「同年代の友人たちにパソコンの魅力を伝えたい」と思い、自宅でパソコンサロンを始めたが、「なんだか難しそう」とメンバーからの反応はイマイチ。

●若宮さんが感じたこと
「同年代のシニアたちの気持ちがわかる私だからこそ、サロンメンバーが楽しみながらパソコンを使えるようになることを考えなくては」
と感じ、多くのシニア女性が好きな刺繍や編み物の模様を、エクセルを使ってデザインする「エクセルアート」を生み出されました。

つまり、「やるぞ感」が高かったからこそ、サロンメンバーの最初の反応が悪くても止めることなく、自分がパソコンサロンを開催する意味を見出し、結果的に、メンバーが楽しめるものを生み出せたのでしょう。

近い将来、テクノロジーの進化と長寿に伴い、私たちが予想する以上の大きな変化が、次々と起こるかもしれません。

その際、「首尾一貫感覚」を用いて、その出来事をうまく対処したり、それが困難であってもうまく乗り越えていくことができれば、その出来事は、より幸せで健康な人生を手に入れるチャンスにすらなり得るでしょう。

■過去に書いた、「首尾一貫感覚(SOC)」についての記事も、合わせてご一読いただくと、理解が深まります → こちら

【謝辞】
本稿の確認をしてくださった若宮正子さんに深謝申し上げます。

【文献】
※1 蝦名玲子(2016).生き抜く力の育て方:逆境を成長につなげるために.大修館書店
※2 蝦名玲子(2012).ストレス対処力SOCの専門家が教える:折れない心をつくる3つの方法.大和出版
※3 蝦名玲子(2012).困難を乗り越える力:はじめてのSOC.PHP研究所
※4 蝦名玲子(2010).元気な職場をつくるコミュニケーション.法研

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。