亀山早苗の恋愛コラム

結婚後に同性愛者だったと認識することはあるのか

男女を問わず、結婚してから、あるいは程度人生の経験を積んでから自分の性的指向に気づく人は決して珍しくない。自分自身がどういう性自認をし、どういう相手とどういう恋愛をしていくのか。若いうちからそれに気づいている人もいるだろうし、ずっと気づかない人もいるのかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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性自認と性的指向

人生の経験を積んでから自分の性的指向に気づく人は決して珍しくない。

人生の経験を積んでから自分の性的指向に気づく人は決して珍しくない。


経済評論家の勝間和代さんが、女性のパートナーとつきあっていることを公表し話題となった。恋愛相手が同性であろうと異性であろうとプライベートなことだから自由ではあるが、かつて2度結婚して子どももいるからこそ、世間も驚いているのだろう。

彼女自身の性自認(自分の性をどう感じているかということ。自分が男であるのか女であるのか、あるいは中性なのか無性なのか、など)がどうなのかはわからないが、それをも含めて結婚してから、自分は同性を好きになる性的指向があったのだと自覚する女性は決して珍しくはない。

 

結婚しながら彼女との交際が始まって

仕事でもプライべートでも息が合う女友達だった彼女と……

仕事でもプライべートでも息が合う女友達だった彼女と……


夫も子どももいるが、30代後半で恋をした相手が女性だったというのは、ユウカさん(45歳)。自分でもまったく認識していなかった。

大学生時代からつきあっていた同い年の彼と結婚したのは26歳のとき。ふたりの子にも恵まれた。いったん仕事を辞めたが、下の子が小学生になると「何かやりたい。働きたい」という思いが強くなる。

「特に手に職があるわけでもないし、雇ってくれるところもない。完全にフルタイムで働くには子どもは小さい。そんなとき、声をかけてくれたのが学生時代からの友人・フミでした。彼女は得意の中国語を活かして、自分の父親が経営している会社で貿易の仕事をしていたんですが、今後は自分が引き継ぐことになったから一緒に働かないかと言ってくれて。私は独身時代、英語での輸出入関係の仕事をしていたので、彼女も『今後のグローバルな仕事を考えると英語はやはり重要なのよ』と。私のできる範囲でいいというのでありがたく契約社員となりました」

久々の仕事は楽しかった。フミさんは徐々に仕事を広げていきたいと考えていたため、ユウカさんがアジア圏に出張して家具や食器などを買いつけてきたこともある。

「それが意外と人気で、あるイベントに出店したらよく売れたんです。そこからフミと私の結びつきはさらに強くなりました」

仕事を始めて5年目、フミさんはユウカさんを自宅に誘い、手料理を振る舞ってくれた。それがあまりにおいしくてユウカさんは驚いたという。

「主婦の私よりよっぽど手早くおいしいものを作ってくれて。当日はそれまでも話したことのなかったお互いのプライベートな話をさんざんしましたね」

その中で、彼女が男性も女性も愛するバイセクシャルだと知った。恋愛するのに、どうして相手を男と決めなければいけないのかわからない、そのことで自分は苦しんでもきたとフミさんはつらそうに話したという。

 

生活は夫と、恋愛は彼女と……ヘンですか?

フミさんの話を聞いていたユウカさんの心の中に、不思議な感情がわき起こってきた。

「そういえば私は小さいころから、女の子の友だちが大好きだった。その子が別の子と話していると、言いようのない嫉妬に襲われた。それが嫉妬だと当時は認識していなかったけれど。夫と結婚したときは、長いつきあいだったし、燃えるような感情があったわけではなくて、この人とならうまくいくと思った末の選択。でもフミが切々と話しているのを見て、子どものとき女友だちに抱いたような、何とも言いようのない恋愛感情がわいてきたんです」

ユウカさんはフミさんを黙って抱きしめた。ふたりの間で何かが通じ合った。

それから今に至るまで、ユウカさんとフミさんの関係は続いている。一緒に仕事をし、ときに一緒に食事をして抱き合う。ユウカさんの気持ちとしては「恋愛」である。抱き合うことを除いては、夫や娘にも話している。

「いい友だちに恵まれたなあ、と夫がしみじみ言ったときはちょっと心苦しかったです。一般的に見れば、これも“不倫”かもしれない。夫は一緒に生活していくには最高のパートナー、でも恋愛感情は彼女に対して向けられている。私ってヘンかなとずっと悩んでもきました」

ただ、相手が女性だと夫にはわかりづらい。彼女自身も、不倫をしている感覚は薄い。

「ただ、フミはバイセクシャルな上に浮気もするので、ときどきすさまじいケンカになる。そんなとき『あんただって夫がいるじゃない!』と言われて、ああ、私もバイセクシャルという範疇に入るのかと初めて自覚しました。でも、自分が同性愛者だという認識はあまりないんですよね。フミは自分が男でもあり女でもある、という言い方をしていますが、私自身は一貫して自分を女性だと思ってる」

ユウカさんはフミさんの友人に会ったこともあるが、人が自分の性をどう認識し、相手の性も含めてどういう恋愛を選択していくかは、非常に多様だと知って驚いたという。

自分自身がどういう性自認をし、どういう相手とどういう恋愛をしていくのか。若いうちから自然とそれに気づく人もいるだろうし、「人は異性を好きになって結婚していくもの」という“普通の”価値観に縛られて、自分が本当に求めていたものがわからないままに生きて、ある程度年齢がいってから気づかされることもある。

ユウカさんのように、パートナーとなる人がきっかけになって初めてそれを知ることもあり、それが結婚後だったということもある。ユウカさんは、気づくのが遅かった分、自分の気持ちがつかめずに混乱することがあるが、それでもモヤモヤしたまま人生を終えるよりはよかったと断言した。自分の気持ちにふたをせず、一度、枠を外して考えてみるのもよいのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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