各メーカーのハイブリッドシステムを改めて解説!
「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーとともに初代プリウスが現れたのは、本稿執筆の20年あまり前となる1997年末のことです。現在のようにハイブリッドカーが当たり前の時代が来るとは、当時は誰が想像できたことでしょうか。そしてこの20年で、多くの自動車メーカーがさまざまなタイプのハイブリッドカーを世に送り出してきました。今回は2018年春現在における各メーカーのハイブリッドシステムの概要と特徴を整理してお伝えします。トヨタ/レクサスのハイブリッドとは?
ハイブリッドカーの第一人者といえるトヨタとレクサスですが、駆動用と発電用の2機のモーターを動力分割機構により状況に応じて適宜使うという基本構成は20年前のプリウスのものと実は変わっていないとはいえ、大きく進化を遂げたことはいうまでもありません。当初はたびたび指摘されていた走りも徐々に改善され、ATを組み合わせた最新版のLCやLSはダイレクトで応答性のよいドライブフィールを実現しており、今後への期待も膨らみます。なお、提携関係にあるマツダのアクセラにも3代目プリウスと共通性の高いシステムが搭載されています。
日産のハイブリッドとは?
「技術の日産」を掲げる日産は、エクストレイル、スカイライン、フーガなどにも本格的ハイブリッドシステムを搭載していますが、ここでは「e-POWER」について述べましょう。駆動力を生み出すのはモーターのみで、エンジンは発電に徹しているのが「e-POWER」の特徴で、バッテリー容量はあまり大きくなく、必要に応じて発電する仕組みとなっています。すなわちシリーズハイブリッドそのものです。モーターならではのリニアな加速フィールに、まさしく「ひと踏み惚れ」する人が続出して、登場からすでに時間が経過したノートが一躍ベストセラーになったことも大いに話題となりました。
ホンダのハイブリッドとは?
とりわけ走りにこだわるホンダは、「i-DCD」、「i-MMD」、「スポーツハイブリッドSH-AWD」と、いずれも機構的に見どころの多い大別して3タイプの特徴的なシステムをラインアップしています。中でもNSXとレジェンドに搭載される「スポーツハイブリッドSH-AWD」は、NSXではフロント、レジェンドではリアの左右輪それぞれに配したモーターの駆動力を制御することでヨーモーメントをコントロールし、クルマに積極的に自転運動させたり、逆にスピンしそうな挙動を抑えて安定させたりすることができるという画期的なシステムです。三菱のハイブリッドとは?
持ち前のEVのノウハウを生かし、いちはやくプラグインハイブリッドを実用化し量販したアウトランダーPHEVを擁するのが三菱です。プラグインハイブリッドを名乗る車種は他にも存在しますが、アウトランダーPHEVはバッテリー容量を増やして外部電源から充電できるようにしたというよりも、あくまでEV走行を主体とし、エンジンはほぼ発電のために使っているのが特徴で、出発点が異なります。前後輪それぞれを駆動するために配されたモーターのうちフロントモーターは発電機を兼ね、バッテリー電力量の減少時や急加速時などではエンジンが始動して発電した電力によりモーターで走行するシリーズ走行モードとなります。このときあたかもエンジンの力で加速するような感覚となるのですが、実際に駆動するのはモーターであり、エンジンはあくまで発電のために動いています。さらに強い加速を求めるとエンジン主体で走行し、あまった駆動力でバッテリーに充電しながらモーターで加速をアシストするパラレル走行モードとなりますが、よほどでないとそうなることはありません。
スズキのハイブリッドとは?
スズキは、「ISG」と呼ぶモーター機能付き発電機によって、駆動力のアシストをわずかながら行うマイルドハイブリッドを幅広い車種で採用しています。これは、「Sエネチャージ」 などと呼ばれ、最新のものではクリープ時にはモーターのみで走行も可能なほど進化しています。一方で、スイフトとソリオには、上記の能力をより高めた「MGU(モータージェネレーターユニット)」と呼ぶ駆動用モーター兼発電機を組み合わせ、クリープ走行だけでなく低負荷であればある程度のEV走行が可能で、加速時にもモーターが力強くアシストするフルハイブリッドを設定しています。同システムは低コストで高い効率を誇りコスパに優れるのも特徴です。
輸入車
一方、ドイツ勢を中心に近年の輸入車で主流となっているのは、48V電源を用いたマイルドハイブリッドです。また、プラグインハイブリッドを採用する車種も増えています。マイルドハイブリッドが主流である理由は、48V化によってシンプルなシステムでもより高い効果を得られるようになったから。プラグインハイブリッド採用車が増えているのは、欧州における燃費計測モードにおいてプラグインハイブリッドが有利となることが理由です。このようにハイブリッドというのは、それぞれメーカーの特徴が表れていて興味深いところです。そして技術が進化するスピードは、各社の最新事情に触れる機会の多いガイドらにとっても驚くべきものがあります。今後も当面その勢いはとどまることをしらないでしょう。