日本車はラリーから撤退したため欧州で売れなくなった?

最近、トヨタ自動車の豊田章男社長は様々なタイミングで「道がクルマを作る」と発言している。2017年からWRC(世界ラリー選手権)に復帰するのもその流れ。実際、ヨーロッパでクルマを売るには、ラリーで良い成績を残すことが大切。「日本車はラリーから撤退したためヨーロッパで売れなくなった」と言い換えてもよいほど。

国沢光宏が所有するスバルWRX S4(市販車)ベースのラリー車

国沢光宏が所有するスバルWRX S4(市販車)ベースのラリー車


ラリーという競技、一般道を使うため、舗装路から砂利道、雪道に至るまで多岐に渡る。加えてスポーツカーと違って普通の乗用車がベース車両になるので、基本設計の良いクルマじゃないと勝てない。つまりヨーロッパの人達からすれば「ラリーで強いクルマが良いクルマ」なのである。ちなみにWRCの観客数、F1を大きく凌ぐ。

とはいえ一般の人からすれば、ラリーと市販車の関係がわかりにくい。そこでたまにはラリー車の解説&試乗レビューなどしてみたいと思う。車両は私が2016年シーズンに東南アジア地域で開催される国際ラリーに出場するために製作した市販車(スバルWRX S4)ベースのラリー車である。ナンバー付きのため、その気になれば毎日の足としても使えます。

まず車体から。当然の如くクラッシュ時に乗員を守るためのロールケージを組む。ボルトで組み立てる簡易なタイプから国際競技に使われるタイプまで様々ながら、下の写真は最も強固な溶接タイプ。内装を全て取り去り(車種により屋根も切る)、パイプを溶接して組む。このタイプのロールケージ、縦方向に転がっても耐える。

ラリーでの激しい走行には欠かせないロールケージ

ラリーでの激しい走行には欠かせないロールケージ


費用は初級ラリーに使われる最近人気の『TRDラリーチャレンジ』に出場可能なボルト組み立て式で、工賃込み30万円程度。国際格式のラリーに出場するために必要とされる写真のフル溶接式は200万円くらいから。競技に出場するなら、消火器の搭載も義務づけられる(国際ラリーは通常の消火器の他、自動消火器も必要)。

「競技車両=硬い乗り心地」は間違い!

衝撃を抑えるダンパーは「テイン」社のものを装備

衝撃を抑えるダンパーは「テイン」社のものを装備


足回りはダンパーとバネがラリー用。写真は『テイン』というラリー界で人気のダンパー。1台分75万円。200km/h近い速度でジャンプしたりする国際ラリーを走るには、このくらいのスペックが必要なのだった。速度域低く、路面条件もそれほど悪くないコースを使う初級ラリー用であれば、10万円台から購入可能。

排気ガス規制が適用されるラリーの場合、エンジンは基本的にノーマル。むしろ最高出力を抑えるため、吸気量制限を行っている。この車両は33口径のリストリクター(一定以上の空気を吸えないようにする輪)付きなので、市販車だと300馬力ながら、270馬力程度に抑えられている。全日本選手権の車両も同じ33口径。

新車+150万円くらいの予算で競技に出場できる車両は作れる

新車+150万円くらいの予算で競技に出場できる車両は作れる


乗るとどうか? 意外なことに乗り心地は良い。多くの人は競技車両=硬い乗り心地だと思っているだろうけれど、そうではない。しなやかに動いてくれないと路面に食い付いてくれないのだ。ジャンプして着地した時のショックも、想像するより小さい。少し大げさに表現すると、デコボコな未舗装路が舗装路のような感じになる。

絶対的な動力性能は、ノーマル車と大差無し。むしろ絶対的な加速性能などノーマルより低いほど。このあたり、格闘技が防具やルールで攻撃力を抑えているのと同じ。無制限で殴り合ったら単なるケンカになってしまう。ラリーは公道で行われるため、無制限に速度を出すと危険。ただ「曲がる性能」の高さときたら、ノーマルを圧倒する。

当然ながら公道を走るため、以上の変更は法規を守って行われる。今回紹介した車両も、車検証を見ると2人乗りに変更されており、車検場に持ち込まれ検査済み。ここで紹介したWRX S4はAT車のため、身体に障害のある人でも健常者と全く同じ条件で競技に出られます。輸入スポーツカーを買う予算があればラリーカーなどいかがだろうか。


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