介護

増加する介護離職問題…介護と仕事を両立させるコツ

【訪問看護師が解説】在宅介護の介護負担などが原因で仕事を続けられなくなる「介護離職」の増加は、今や大きな問題となっています。介護離職は、経済的な問題の他、介護以外の自分の時間なども取れなくなり、介護負担からストレスや介護疲れにつながることもあります。介護負担を軽減し、仕事と介護を両立させる方法について詳しく解説します。

藤澤 一馬

執筆者:藤澤 一馬

在宅介護と生活設計ガイド

主介護者の7割が「悩み・ストレス」を抱えている現状

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少子高齢化、核家族化により介護を支える家族は減少しています

病気や体の不調から介護が必要となった時に、自宅で過ごしたいと思う方が近年増えています。2000年より開始した介護保険制度により、専門家からの援助が受けやすくなりました。自宅での生活ができるようになり、家族や医療、福祉の専門家のサポートを受け、自宅で最期を迎える方も増えています。

一方で、以前であれば家族が介護に参加していましたが、核家族化や少子化により、要介護者を支える家族が人数面では少なくなっています。主介護者の負担は増し、介護に専念するために離職をされる方が増加しているのが現状です。さらに負担が持続することで、主介護者の体調にも影響が出現し、介護自体を断念してしまうケースもあります。

介護負担には、「身体的負担」「精神的負担」「経済的負担」があります。互いの負担が相乗しあい、負担を増していきます。主介護者が離職をせず介護を続けられる方法を、介護負担の軽減法を挙げながらご紹介していきます。

男性24.8%、女性65.7%…介護内容から主介護者になる割合に性差も

介護の内容は、買い物や食事準備、掃除、洗濯、お風呂、トイレ、通院など多岐に渡ります。介護を始めるまでの家族関係によっても異なりますが、女性が家事を担っているケースが多く、日常の家事に加えて介護を行っている方が多いようです。労働政策研究・研修機構による『介護休業制度の利用拡大に向けて』では、男性が主介護者になっているのは、夫の妻と母が同居している場合9.7%、妻と同居の場合19.3%でした。逆に妻は、夫と母と同居している場合8.1%、夫と同居の場合82.5%で主介護者となっています。

男性が非主介護者の場合でも、行っている介護の内容には性別による違いはほとんどありません。非主介護者になると、男性は通院介助や外出介助、女性は家事援助や衣服、排泄介助を行う割合が多いです。訪問看護でお伺いしても、統計のような形態を目にします。家事援助に不慣れな男性は、車椅子乗車や歩行介助など、比較的力を要する介護を担っているからと考えられます。

介護負担の種類と具体的な軽減方法

主介護者として介護を行う場合、家族の世話も行っている可能性が高く、介護負担が増している可能性があります。介護を放棄できないと考えると、自ずと仕事を減らしたり、辞めてしまうことになってしまいます。私が訪問するご家庭では、多くの方が仕事を継続したまま、介護にあたられています。介護と仕事の両立を叶えるためには、まず介護負担を減らすことが第一です。介護負担が減らせれば、体にも心にも余裕ができます。ご家族にアドバイスした内容も含めて、介護負担の軽減方法をみていきましょう。

■介護による「身体的負担」の内容と軽減方法
家事、着替え、移動、排泄介助など、介護における大抵のことが身体的負担に該当します。さらに仕事や家族の世話により、負担は増すばかりです。負担が積み重なることにより、体調を崩し、自身が介護される立場になる可能性もあります。身体的負担を減らすためには、介護を一緒に行う仲間を作ることが優先です。ですが、家族の協力を得ることが難しい時は、ケアマネやヘルパーを活用しましょう。出勤前、出勤後に介護を行い、日中はヘルパーに任せる。また定額制で夜中も来てくれる定期巡回・随時対応サービスなどもあります。

私はご家族に、介護の専門家から介護方法の指導を受けることをアドバイスしています。起床や移動する際に、体格差や体重により介護が困難なことがあります。介護現場では、背が小さい女性でも、無理なく介護をしています。専門家の技術を取得することで、主介護者が介護する際の介護負担にも繋がります。

■介護による「精神的負担」の内容と軽減方法
介護を行うプレッシャーや要介護者からの不快な言動、主介護者に自由時間の減少、話し相手がいないなど、主介護者に負担が集中します。精神的負担が増すと、少しの食べこぼしや要介護者のミス、物音に敏感になり、さらに精神的負担が増すことがあります。少し聞こえがよくありませんが、介護は「ほどほど」に行うことが大切です。自身に対する過度なプレッシャーや緊張は、神経が興奮し冷静な対応ができません。本当は言いたくない言葉を、不意にぶつけてしまい、精神的負担となる可能性もあります。

仕事を継続することにより、「介護」から離れ「仕事」という新しい環境へ移ることができます。要介護者と一緒に認知症カフェへ参加、施設や地域包括支援センターが行う催し物に出てみることも有効です。介護を行いつつも、周囲へ悩みや不安を共有でき、精神的負担を軽減することができます。一人で悩まず、思いを共有することを積極的に行ってみてはいかがでしょうか。

■介護による「経済的負担」の内容と軽減方法
介護サービス費、食事、洋服代、医療費、住居費など、施設より安いと言われる在宅介護でも、毎月10万円前後の支出があります。介護はいつまでと期間が決まっておらず、経済的負担は日々ついてまわります。急な受診や入院により、仕事を休むことになれば更に負担が強くなってしまいます。まずは仕事場に介護がしていることを伝え、協力を求めることが必要です。介護で休む場合に、介護休業給付金が使用できます。通算で93日取得ができ、1日あたり通常出勤してもらえる給与の67%が支給されます。また柔軟に有給休暇の取得ができるか、確認することも大切になります。

自費による訪問介護も充実しており、私が体験したのは通院サポートと入院代行サポートでした。どうしても家族が付き添えない場合に、介護士や看護師が付き添うサービスです。通院サポートは、1時間3000円から依頼ができ、入院代行サポートは同様に1時間3000円+手続き代行費用が加算されます。突然のことにも対応できるように、いろんなサービスを調べておくと安心です。

介護に専念するため離職をすることにより、介護サービスが使用しづらく、悩みを話す機会がなく、お金の余裕がなくなり、介護負担が積算されていきます。介護を終えた後の主介護者の生活に、影響を及ぼす可能性があります。1人で介護を抱え込まず、周囲へ協力を求め、少しでも介護負担が減少するような方法を探してくことが大切です。


■参考、引用文献
・「介護休業制度の利用拡大にむけて」(PDF)(労働政策研究・研究機構)

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