心臓・血管・血液の病気

心臓が痛い・胸の痛みの症状から考えられる病気

【心臓血管外科専門医が解説】「心臓が痛い」「たまに左胸がズキッと痛む」「胸がチクチクする」などの自覚症状があり、心臓の病気を心配される方は少なくないようです。痛みの位置や強さ、痛み方、痛みの持続時間から、狭心症、心筋梗塞、不整脈などの可能性、また気胸や肺塞栓など肺の病気なども含め、考えられる病気を解説します。

米田 正始

執筆者:米田 正始

心臓血管外科専門医 / 心臓病ガイド

胸の痛みなどの症状がある場合、心臓の病気の可能性は?

心臓の痛み

心臓が痛いと感じると、誰でも不安になるものです。痛みの場所や痛みのひどさ、持続時間などによって考えられる病気があります

胸の痛みなどの症状があり、「心臓の病気なのではないか?」と心配しているというご質問をよくいただききます。心配なさそうなものが多い一方で、時にこれは注意が必要そうだと感じるものもあります。

今回は、これまでいただいたご質問の中で多かったものを中心に、考えられる病気について解説したいと思います。なおこれらの情報は病院やクリニックなどの医療機関で受けられる医療の代わりになるものではありません。あくまで深刻な症状の早期受診や早期発見の目安としての参考情報と位置付けていただき、心配な症状がある場合には、必ず診察を受けられることをお勧めします。

「心臓が痛い」「胸がたまに痛む」症状から考えられる病気

胸のあたりの痛みという自覚症状は、患者さんからよく聞く訴えです。ご心配されるのはもっともですが、まずはそもそも痛みの原因が心臓かどうかを見極める必要があります。

左胸が痛い場合でも心臓に原因があるかどうかは、医者でもわかりにくいことがあります。左胸でも真ん中に近いところか、お乳の付近か、もっと下のお腹に近いところかで状況は違ってきます。診察室で「心臓が痛い」と言われるので、「痛いところを指で指し示してください」とお願いをしたら、医学的にはほぼお腹の部分を指されたこともあります。胸とお腹の境目は空間的に斜めに存在するため、一般の方々にはわかりにくくて当然かもしれません。「胸が痛い」「心臓の痛みが気になる」という場合は、まずは以下の4つのポイントのどれに当てはまるかを注意してみてください。

■ポイント1:痛むのは胸のどの部位か
患者さんの体型や状況によって個人差がありますのであくまで参考ですが、胸の真ん中から左側にかけてが痛むのであれば、心臓の可能性があります。ただし心臓が原因の痛みは、浅いところではなく深いところに起こります。浅いところの痛みは肋間神経や肋骨、軟骨の痛みのことが多いですがわかりにくいこともあるでしょう。

狭心症や心筋梗塞などの痛みの場合は首筋や左腕内側など胸と違う場所が痛むこともありますので、後述のように痛みの持続時間が長ければ病院へ行きましょう。

■ポイント2:痛みの強さはどのくらいか
ちょっと痛いという程度でしたら狭心症や心筋梗塞の可能性は低いでしょう。不整脈などの場合の痛みは軽いことがあります。

強い痛みの場合、狭心症の恐れがあります 。持続時間が長ければより狭心症の可能性があり、すぐに病院、それも救急外来へ行くのが良いでしょう。冷や汗が出るほどの我慢できないような強い痛みの場合は、心筋梗塞の恐れがあります。これは救急車を呼ぶレベルでしょう。人生でこれまで経験したことのないような強烈な痛み、ナイフで刺されるような痛みの場合、痛むのが胸であれ背中であれ大動脈解離の恐れがあります。これも直ちに救急車を呼ぶレベルですね。

ただ痛みというのは複雑な一面があり、心筋梗塞という重大な病気が発生していてもあまり胸が痛まないこともあるのです。そのためよくわからない、しかしこれはおかしいと思えば病院へすぐ行くことを勧めます。

■ポイント3:痛みはどのくらい続いているか
胸の痛みが、もし一瞬とか2~3秒程度という場合は、狭心症や心筋梗塞の可能性は低いでしょう。ただ軽い不整脈でこうした症状が出ることはあり得ます。

痛みが3~5分あるいはそれ以上続くようでしたら狭心症の可能性があります。痛みが10~20分も続き、特に強い痛みがあるようでしたら心筋梗塞の可能性があります。すぐ病院へ行きましょう。

「ひどい痛みがあったが1時間ほどで治った」というケースがありますが、これは大動脈解離で時に見られるパターンで、痛みが一時治っても、病気は治っていないことがあります。大動脈解離は大動脈の壁が内外に裂ける病気ですが、裂ける最中は強烈な痛みがあっても、一旦裂け目が広がらなくなると痛みが和らぐことがあるためです。このような場合、痛みがなくなっても大動脈はすでに裂けているため命の危険が迫っている恐れがあります。もし治ったとしても「強烈な痛み」があった場合はすぐ救急車で病院へ行きましょう。

■ポイント4:痛みの性質・感覚はどのような感じか
胸が締め付けられるような痛みの場合、心臓が原因の可能性があります。体の向きや姿勢で痛みが変わるようでしたら、心臓よりも骨や神経の痛みの可能性が高くなります。

痛みがいわゆる差し込み、つまりキューっとする痛みがあり、しばらく楽になり、またキューっと痛む、などの場合は、胃腸などの消化管のことが多いです。ただこうした痛みの性質は一般の方にはわかりにくいことも多いので、参考程度にして、心配なら早めに病院へ行かれることを勧めます。胸の痛みに息苦しさを伴う場合は、気胸や肺塞栓などもあり得ます。

「心臓がチクチクする」症状から考えられる病気

これは前述のように、チクチクする部位の位置や強さにもよりますが、チクチクという表現自体、弱い痛みと考えやすく、あまり心配ない状況かも知れません。

しかしそうした症状が何日も続くようでしたらやはり病院へ行くことを勧めます。心膜炎などの可能性もありますし、食道や胃など消化器の病気の恐れもあるからです。

「息を吸うと胸が痛い」場合、心臓ではなく肺の病気のことも

息を吸うと胸が痛いという場合、心臓というより肺の症状であることの方が多いようです。特に深呼吸をすることで胸が痛む場合は、肺がその周囲の組織と擦れる時の痛みであることがあり、何らかの原因による胸膜炎などの恐れもあります。この症状がはっきりある時には内科か呼吸器内科を受診することをお勧めします。

「ストレスで心臓が痛い・ヒリヒリする」場合

過労や心労など、ストレスを感じると心臓が痛いと感じる、ヒリヒリする、という訴えもあります。この場合も「ヒリヒリ」という表現からあまり強い痛みではないと考えられそうですが、症状が続くようなら内科や循環器科を受診するのをお勧めします。まず、ストレスを自認される状況でしたら、食道や胃の症状の可能性もあります。この場合は消化器内科の領域です。それらの判別は患者さんには難しいため、上記のどの科でも結構です。診察しながら担当医が判断できますので、まずは不安な症状があればいずれかの診療科を受診されることです。

まとめ

このように胸の痛みというのは心臓の病気に限らず、幅が広いのです。簡単にワンパターン化してしまうのは危険とも言えますが、およそ次のようにまとめると目安として参考になるかと思います。

  1. 強烈な胸や背中の痛みがある→【救急外来】すぐ救急車で病院へ
  2. 強い痛みが続く→【救急外来】すぐ病院へ ※自分で運転しないこと
  3. 普通の痛みが時々ある→【循環器科か内科】早めに外来へ
  4. チクチクする軽い痛み→時々ならかかりつけ医に相談するか検診時にチェックしてもらう、よく起こるなら外来(内科)受診を

胸の痛みに関連する科は、救急科、循環器内科、内科(かかりつけを含む)、呼吸器内科、消化器内科、整形外科、心臓血管外科、呼吸器外科、心療内科、精神科など、多岐に渡ります。上記のように受診し、そこでは原因が特定できずに他の診療科を紹介された場合には、主治医の指示に従い診察・検査を受けられるのがよいでしょう。詳しくは心臓外科手術情報WEBの「症状」ページもあわせてご覧ください。
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