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4代目のPCX(JF81)登場!試乗インプレをお届け
原付二種スクーターの人気が高まる中、スズキは二種ブームの火付け役ともいえるアドレスV125、ヤマハはカスタムシーンで絶大な人気を誇るシグナスXを販売していましたが、当時ホンダには花形といえる車種がありませんでした。
そんな中、2010年3月30日に満を持してリリースしたのがPCXです。海外生産にすることで販売価格をおさえ29万9250円。グローバルモデルとしてリリースされたため、ヨーロッパの石畳やアセアン地域の悪路を走ることを想定し、前後14インチのタイヤを採用していました。
年間販売台数8000台を予定していたところ、発売開始後3週間で7400台を販売するなど圧倒的な人気を獲得。そして2年後の2012年5月11日にはエンジンを新開発のスクーター用グローバルエンジンeSPエンジンに変更。僅かながら馬力と燃費が向上しました。
2014年4月24日には全灯火類をLED化。更に燃料タンク容量を大幅に増加した3代目PCXをリリース。もともと燃費が良かったところに、さらに圧倒的な連続航行距離を手にすることに成功しました。
そして2018年には更にブラッシュアップを受けた4代目PCX(JF81)がリリースされました。ひと目でPCXとわかるデザインを継承しながらも見た目が大きく変更され、更にタイヤがワイド化。フレームの変更やスマートキーシステムも採用されました。
リリース以来、進化を続けるPCX。2018年のブラッシュアップでどのように進化したのか? 初代から試乗インプレッションしてきたガイドが探ります!
PCX 2018年モデル(JF81)の装備をチェック!気になる足つき性は?
今までのモデルと2018年式PCXの大きな違いはスマートキーシステムが採用されたこと。ポケットやバッグから鍵を取り出さなくてもエンジンをかけられるだけでなく、シートとガソリン給油口のオープンやハンドルロックもかけることができるので便利です。
灯火類は2018年式PCX(JF81)も全てLED化されていますが、フロントはポジションランプに導光タイプのLEDが採用されており高級感ある仕上がりになっています。また、LEDのヘッドライトも一段と明るくなった印象です。 メーターはアナログとデジタルのコンビメーターからシンプルなデジタルメーターに変更されています。速度が大きく表示されるレイアウトになり、ひと目で時速が把握しやすい使い勝手の良いメーターとなりました。 シート下の容量は28Lと、以前のモデルと比べて3L容量がアップしています。以前と変わらず底が浅いのでフルフェイスヘルメットは収納することはできませんでした。また以前のモデルから社外のリアキャリアを装着しやすい設計になっていましたが、2018年モデルのPCXは一手間増えるものの装着は依然簡単なままです。リアキャリアとリアボックスを装着してしまえばシート下にフルフェイスヘルメットが入らない問題は解決します。
ハンドル左下のインナーボックスは今まで通り500mlのペットボトルが収納可能で、スマートフォンなどの充電に便利なアクセサリーソケットも装備されています。
シート高は4mm高くなって764mmとなりました。車体重量は130kgしかありません。165cmのガイドでも片足ならべったり、両足もつま先が着くので不安感はありません。ただ跨った際のサスペンションの沈み込み量は減った印象があり、若干とはいえ足つき性は悪くなっているかもしれません。
2018年式のPCX(JF81)は燃費やエンジンの出力面はほとんど変わっていません。スペック上は若干良くなっているようですが誤差の範囲です。実際の街中走行時の燃費は45km/L前後でした。タンク量は8Lですので連続航行距離は360km前後と、原付二種スクーターとしては充分といえるでしょう。
PCX 2018年モデル(JF81)は軽快さが失われていない!
以前PCXのカスタムに携わったことがあります。旧モデルのPCXは、フロントタイヤ幅90mm、リアタイヤ幅100mm。リアタイヤをフロントホイールに装着し、リアタイヤに120mmのタイヤを履かせてみたのですが、重量増とタイヤの設置面積が増えることで摩擦が増え、加速が大幅に鈍くなってしまったのです。今回のモデルチェンジで以前カスタムした際に履かせたタイヤと扁平率こそ違うものの、同じ幅のタイヤ(フロント幅100mm、リヤ幅120mm)が純正採用されたため、出足の加速感や中間加速が鈍くなってしまうのでは?という懸念を持っていました。
しかし実際に乗ってみたところ、加速が鈍くなるどころか走り出しはむしろ元気に加速するようになり、30km/h以降は以前と同じくフラットにトップスピードまで加速しました。
以前のスペックと見比べてみると2018年モデルとそれ以前のモデルで車体重量は変わっていませんでしたが今回のモデルチェンジではホイールの軽量化にも取り組んでおり、結果的にタイヤのサイズが大きくなっても重量増になっていません。ホイールの軽量化は大きくバイクの動きに関わるので、タイヤを太くしたデメリットを打ち消しています。
逆にタイヤが太くなったことでブレーキングやコーナリング時のグリップ性能は上がり、安定感が増しています。
PCX 2018年モデル(JF81)の3段階バネレートリアサスペンションは?
一つのバネに異なるバネレートを持つスプリングを採用したスプリングを「プログレッシブスプリング」と言います。スプリングは細かい巻きの部分は柔らかく、荒い巻きの部分は硬い特性があり、意図的に巻きの間隔を変えて一つのバネに異なる硬さを取り入れることで、初期の沈み込みをスムーズにし、大きな負荷にも耐えるサスペンションになります。あくまでこれは理論の話ですが、実際にPCX 2018年モデルに乗ってみるとシートに座るとスッとサスペンションが沈み込みます。スプリングの柔らかい部分がしっかりと沈み込みライダーの体重を支えます。
走り出して地面の段差を拾うのは3段階レートの2段目、3段目が動いているのだと思いますが、乗り心地としては硬質な感じで以前に比べてスポーティーな印象があります。街乗りレベルでは以前の柔らかいサスペンションの方が良いという人もいるかもしれませんが、対応できる走行シチュエーションが広がったともいえます。
以前と同じ軽快なハンドリングと優れたブレーキ性能
フロントタイヤが太くなったことで多少ハンドリングが重くなるかな?と思っていましたが、全く違和感なく以前と同じようにハンドリングすることが可能となり、むしろリアタイヤが太くなったことで車体を倒してコーナリングする際には安定感が増しました。ブレーキはフロントに3ポッドキャリパーを採用。恐らくリアブレーキをかけた際にフロントブレーキにも制動力を配分するコンビネーションブレーキ用に1ポッド、フロントブレーキをかけた際に2ポッドが機能するようになっているのだと思いますが、コンビネーションブレーキの動きには全く違和感がなく普通のブレーキシステムを使っているのと同じ感覚で使うことができます。
ただ個人的にはコーナリング時などにスピードを調整するのにリアブレーキは単体になっていてくれた方が使い勝手は良いように思います。
進化しているPCX 2018年モデル(JF81)は買いか?
PCX 2018年モデルのカラーリングは単色のみ設定されており販売価格は34万2360円(税込み)。2017年2月に発売されたPCX 2017年モデルの単色モデルは32万9400円でした。その価格差は1万2960円です。フロントのタイヤ幅1サイズアップ、リアタイヤは2サイズアップ。ホイールは軽量化され、今回のモデルチェンジでフレームも変更され印象的な導光タイプのポジションランプが追加されました。
更に使い勝手が良いスマートキーが採用されていますから、価格差1万2960円は決して高くはありません。「お値段以上」の装備追加といえます。
2018年式PCX(JF81)関連リンク
■PCXのエンジン音マフラー音はこちらの動画でご確認下さい。■ヤマハ NMAXの試乗インプレッション
■ヤマハ シグナスXの試乗インプレション
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