「五月病」より怖い、適応障害の重症化

五月病、適応障害、定義

五月病より怖いのは、重症化させること


4月に新生活がスタートしたときは張り切って、新しい職場や学校、人間関係に馴染もうとがんばっていたのに、ゴールデンウィークが明けた頃から、どうも気分が落ち込んだり、心身に不調を感じたりする、ということはありませんか?

実は、この時期に、こうした症状を発症する人が多いことから、「五月病」という俗称で呼ばれることが多いですが、正式には「適応障害」と診断されます。

適応障害は「大きな生活の変化やストレスフルな出来事への適応時に現れる主観的な苦悩や情緒障害の状態」のこと(※1)。

適応障害のセルフチェック

まずは、適応障害の診断基準に基づき(※1、2)、わかりやすい表現にしてみましたので、当てはまるか、チェックしてみてください。

  • 1) 最近、職場環境の変化等、明らかなストレスフルな出来事があってから3か月以内に、不安や抑うつ等の感情面、自分らしくないミスや遅刻が増える等の行動面において、「つらい」症状が出てきた
  • 2)その症状は苦痛をもたらすものであり、仕事や家庭生活に支障をきたしている
  • 3) その症状は、うつ病等、他の精神障害やその悪化によるものではなく、近しい人との死別による反応でもない
 
こうした状態にプラスして、

「ああ、自分はいま、新たな環境に適応するストレスを感じていて、心が弱っているんだな」ということにきちんと気づき、ムリをしないように積極的に自分をいたわり、ストレスをじょうずに解消・対処する。
うまくストレス対処ができずに症状が続く場合には、受診し、専門家の助けを得る。

その結果、ストレスと上手につきあい、新しい環境に慣れたり、自分の捉え方を変えたり、あるいは環境を適応しやすいものへと変えたりすることで、
  • 4)ストレスの原因が消えれば、症状も、半年以内に消える
この4つの基準を満たしたものが、適応障害です。

適応障害は、初期の段階では病状が軽く、病気か正常かの境界もあいまいなのですが、問題はうまくストレスに対処できず、症状を悪化させて、うつ病や不安障害等、別の慢性的な病気に発展させてしまうこと

うつ病等へと重症化させてしまう人は、自分の心が弱っていることに気づかずに、ムリをしてしまう方が多いのです。

メンタルが弱っているサインを見逃さない

重症化させないためには、まず、自分の心が弱っていることに気づくことが重要です。

ところで心が弱っているときというのは、どんなサインが出るものなのでしょうか?

実は、心に出る場合と、身体に出る場合と、その両方がありますので、「別に心に不調なんて感じていない」と思われている方も、下記に当てはまったら、気をつけてくださいね(※3)。

心が悲鳴をあげているサイン

怒り、疲れ、不安、憂鬱

怒り、疲れ、不安、憂鬱は、心が弱っているサイン


  • イライラ」サイン(すぐに怒りを感じる、内心腹立たしい)
  • へとへと」サイン(ひどく疲れた、だるい)
  • 不安」サイン(気がはりつめている、落ち着かない、すぐに不安になる)
  • 抑うつ」サイン(何をするのも面倒だ、ゆううつだ、物事に集中できない、気分が晴れない、仕事が手につかない、悲しいと感じる)

「イライラ」サインは、比較的早い段階から出始め、なおかつ怒りの感情は「つらいから、なんとか現状を改善して!」と強く訴えてくるため、自分で気づきやすいサインです。

でも、「イライラは心が追いつめられているサイン」ということを知らない方も多いので、「最近イライラしやすい」と気づいたら、ぜひ心を休ませてくださいね。

そして、最も高いストレスレベルで見られることが確認されているのが、「抑うつ」サイン。

「先月はあれだけやる気に満ちていたのに、最近、どうもやる気が出ない」と自分でも気づきやすいので、このサインに気づいたら、即対応してください。

さらにこの2つのサインは、周囲も気づきやすいサインです。

もし
  • 「あの人、最近まわりとトラブルをよく起こしているな」
と思ったら、「イライラ」サインを出している可能性が、

  • 「あの人、最近、集中力がなく凡ミスが増えているな。やる気があるのか?」
と思ったら、「抑うつ」サインを出している可能性が、

それぞれありますので、そうした人に気づいたら「ムリしていない?」等と声をかけあい、仕事を手伝ったり、サポートする。

それでも症状が改善されないようであれば、早めに医療機関への受診を促してください。

「身体の不調」という形で出るサインもある

腰痛、頭痛、めまい、肩こり、目の疲れ、動悸、食欲がない、眠れない、心因性

腰痛も、ストレスが原因かもしれない


「仕事が大変なのは、皆同じだし、つらいなんて言っていられない。でも、最近、どうも腰が痛いため、整形外科で検査を受けたが、異常は見つからなかった」
といった経験はありませんか?

実は、こうした明らかな原因を特定できない腰痛は、心因性である場合が多いのです。

腰痛の他にも、心が弱っているときには、次のようなサインが出やすいものです。

  • 頭痛やめまいがする
  • 首や肩のコリ、腰痛がある
  • 目が疲れる
  • 動悸や息切れがする
  • 食欲がない、または過食気味である
  • 便秘や下痢等、胃腸の具合が悪い
  • よく眠れない(寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚める、または逆に眠り過ぎる)

痛みをはじめとした身体の不調は「自分が自覚しているよりも、心が弱っている」と気づかせてくれるサインでもあります。

こうしたサインに気づいたら、自分をいたわり、ストレスをじょうずに解消・対処しましょう。

それでも症状が続くようでしたら、早めに医療機関を受診しましょう。
(身体の不調の場合、別の病気が潜んでいる可能性もあり、また不調が続くことがストレスの一因ともなり、症状を悪化させることにもなりかねないので、早めに医療機関を受診しましょう)


【参考文献】
※1 ICD-10, World Health Organization.
※2 DSM-IV-TR, American Psychiatric Association.
※3 職業性ストレス簡易調査票, 厚生労働省.
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