「五月病」より怖い、適応障害の重症化
五月病より怖いのは、重症化させること
適応障害のセルフチェック……ストレスにはどう対処する?
まずは、適応障害の診断基準に基づき(※1、2)、わかりやすい表現にしてみましたので、当てはまるか、チェックしてみてください。1)最近、職場環境の変化等、明らかなストレスフルな出来事があってから3か月以内に、不安や抑うつ等の感情面、自分らしくないミスや遅刻が増える等の行動面において、「つらい」症状が出てきた
2)その症状は苦痛をもたらすものであり、仕事や家庭生活に支障をきたしている
3) その症状は、うつ病等、他の精神障害やその悪化によるものではなく、近しい人との死別による反応でもない
こうした状態にプラスして、「ああ、自分はいま、新たな環境に適応するストレスを感じていて、心が弱っているんだな」ということにきちんと気づき、ムリをしないように積極的に自分をいたわり、ストレスをじょうずに解消・対処する。うまくストレス対処ができずに症状が続く場合には、受診し、専門家の助けを得る。
その結果、ストレスと上手につきあい、新しい環境に慣れたり、自分の捉え方を変えたり、あるいは環境を適応しやすいものへと変えたりすることで、
4)ストレスの原因が消えれば、症状も、半年以内に消える
この4つの基準を満たしたものが、適応障害です。適応障害は、初期の段階では病状が軽く、病気か正常かの境界もあいまいなのですが、問題はうまくストレスに対処できず、症状を悪化させて、うつ病や不安障害等、別の慢性的な病気に発展させてしまうこと。うつ病等へと重症化させてしまう人は、自分の心が弱っていることに気づかずに、ムリをしてしまう方が多いのです。
心が弱っているときのサインを見逃さない
重症化させないためには、まず、自分の心が弱っていることに気づくことが重要です。ところで心が弱っているときというのは、どんなサインが出るものなのでしょうか?実は、心に出る場合と、身体に出る場合と、その両方がありますので、「別に心に不調なんて感じていない」と思われている方も、下記に当てはまったら、気をつけてくださいね(※3)。心が悲鳴をあげているサイン
怒り、疲れ、不安、憂鬱は、心が弱っているサイン
- 「イライラ」サイン(すぐに怒りを感じる、内心腹立たしい)
- 「へとへと」サイン(ひどく疲れた、だるい)
- 「不安」サイン(気がはりつめている、落ち着かない、すぐに不安になる)
- 「抑うつ」サイン(何をするのも面倒だ、ゆううつだ、物事に集中できない、気分が晴れない、仕事が手につかない、悲しいと感じる)
「イライラ」サインは、比較的早い段階から出始め、なおかつ怒りの感情は「つらいから、なんとか現状を改善して!」と強く訴えてくるため、自分で気づきやすいサインです。でも、「イライラは心が追いつめられているサイン」ということを知らない方も多いので、「最近イライラしやすい」と気づいたら、ぜひ心を休ませてくださいね。
そして、最も高いストレスレベルで見られることが確認されているのが、「抑うつ」サイン。「先月はあれだけやる気に満ちていたのに、最近、どうもやる気が出ない」と自分でも気づきやすいので、このサインに気づいたら、即対応してください。
さらにこの2つのサインは、周囲も気づきやすいサインです。もし
「あの人、最近まわりとトラブルをよく起こしているな」
と思ったら、「イライラ」サインを出している可能性が、
「あの人、最近、集中力がなく凡ミスが増えているな。やる気があるのか?」
と思ったら、「抑うつ」サインを出している可能性が、それぞれありますので、そうした人に気づいたら「ムリしていない?」等と声をかけあい、仕事を手伝ったり、サポートする。それでも症状が改善されないようであれば、早めに医療機関への受診を促してください。
「身体の不調」という形で出るサインもある
腰痛も、ストレスが原因かもしれない
といった経験はありませんか?実は、こうした明らかな原因を特定できない腰痛は、心因性である場合が多いのです。腰痛の他にも、心が弱っているときには、次のようなサインが出やすいものです。
- 頭痛やめまいがする
- 首や肩のコリ、腰痛がある
- 目が疲れる
- 動悸や息切れがする
- 食欲がない、または過食気味である
- 便秘や下痢等、胃腸の具合が悪い
- よく眠れない(寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚める、または逆に眠り過ぎる)
痛みをはじめとした身体の不調は「自分が自覚しているよりも、心が弱っている」と気づかせてくれるサインでもあります。こうしたサインに気づいたら、自分をいたわり、ストレスをじょうずに解消・対処しましょう。それでも症状が続くようでしたら、早めに医療機関を受診しましょう。
(身体の不調の場合、別の病気が潜んでいる可能性もあり、また不調が続くことがストレスの一因ともなり、症状を悪化させることにもなりかねないので、早めに医療機関を受診しましょう)
【参考文献】
※1 ICD-10, World Health Organization.
※2 DSM-IV-TR, American Psychiatric Association.
※3 職業性ストレス簡易調査票, 厚生労働省.
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