仕事・給与/給料・給与の基本

ベースアップと定期昇給の違いとは? 給料の決まり方

定期昇給とベースアップの違いとは何でしょうか?「ベースアップ」とは、従業員全体の賃金水準・基本給を引き上げるものです。ベースアップは、「ベア」「ベ・ア」とも略される和製英語です。一方、「定期昇給」とは、毎年一定の時期に、年齢や勤続年数に応じて賃金が昇給する制度のことです。賃金アップの状況、そして基本給与の決まり方や企業がどのようなことを重視して給与を決定しているのかについて紹介します。

井上 陽一

執筆者:井上 陽一

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ベースアップと定期昇給の違い、給料の上げ方のポイントは?

春は昇給・昇格の季節ということで、今回はベースアップと定期昇給の違いについて解説してみたいと思います。
定期昇給・ベースアップの違い・基本給与の決まり方

定期昇給・ベースアップの違い・基本給与の決まり方

ニュースや新聞で耳にする「ベースアップ」「ベア」。ベースアップを直訳すると、ベース=「基本給」、アップ=「増加」となります。一方、「定期昇給制度」と呼ばれる制度があります(制度がない会社も多いです)。

定期昇給、ベースアップ、どちらも賃金ベースを引き上げるという意味ですが、実際にはベースアップと定期昇給では、実務上の意味が区別されているのです。定期昇給とベースアップの違いを図にまとめました。
定期昇給とベースアップの違いまとめ

定期昇給とベースアップの違いとは

40歳の基本給が30万円の会社の場合、1年ごとに上がる1万円が「定期昇給」。全員に対して一律2000円底上げされたのがベースアップです。基本給は、年功・職務・職能などで構成されていて、約半数の企業は総合的に判断して基本給を決定しています。
 

定期昇給とは、昭和初期から日本企業で導入された年功賃金の中心的制度

まず、定期昇給とは、毎年一定の時期に年齢や勤続年数に応じて賃金が昇給する制度のことです。昭和初期から多くの日本企業で導入されてきた年功賃金の中心的制度でした。しかし、バブル崩壊後の1990年代頃から、個人の人事評価に加えて会社・部署の業績によって、昇給や降給が決定される成果主義を取り入れるなど、制度の形を変えて取り入れる企業や定期昇給制度(年齢給・年功給)自体採用しない企業も増えています。

定期昇給を図で示すと、次のように年数が経つ(右へ移動)と、基本給が上昇(上へ移動)します(図左)。定期昇給がない場合は図右のようになります。
定期昇給は、企業が定めた賃金表に基づいて勤務年数や年齢ごとに昇給する仕組み

定期昇給がある場合と定期昇給がない場合

 

ベースアップとは、従業員全体の賃金水準を上げる

ベースアップとは、従業員全体の賃金水準・基本給を引き上げるものです。ベースアップは、「ベア」、「ベ・ア」とも略される和製英語です。労働組合と使用者(企業経営者)との間の交渉によって決められることが一般的です。定期昇給制度がある会社がベースアップを行うと、右下図のように底上げされることになります。
ベースアップをすると右のように定期昇給で決まっている給与が底上げされる

ベースアップと定期昇給の違い

ベースアップは、高度成長期からバブル期にかけて物価上昇に対し調整する役割を果たしてきましたが、バブル経済が崩壊した1990年代以降は、その役割は薄れています。

日本経済団体連合会が公表した「2020年1~6月実施分昇給・ベースアップ実施状況調査結果」によると、賃金決定の際に考慮される要素(2つ回答)は、企業業績(67%)、次いで世間の相場(36%)が多くなっており、物価変動を考慮する企業は4.3%となっています。

また、ベースアップは大企業だけの話かと思われるかもしれませんが、中小企業においてもベースアップは行われています。経済産業省の行った「中小企業の雇用状況に関する調査」によると、2017年に給与の増額を行った中小企業は92%あり、そのうちの33%がベースアップによるものです。
 

賃金アップの状況

日本経済団体連合会が公表している「昇給・ベースアップ実施状況調査結果」によると定期昇給とベースアップ等を合わせた昇給率は、2019年が2.32%、2020年が2.02%となっています。

一方、中小企業の昇給率は、厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると2019年が1.9%、2020年が1.6%の上昇(従業員300人未満)となっています。
 

企業の立場から見た「定期昇給」と「ベースアップ」の違い

企業の立場から見た定期昇給とベースアップは、どのような違いがあるかも知っておきましょう。最も大きな違いは、利益への影響です。

定期昇給もベースアップも共に、人件費というコストの増加であることには変わりないのですが、定期昇給の場合は定年退職があり、人が循環していれば負担増にはなりません。それに対して、ベースアップは、全体の基本給の底上げになるので、将来にわたって負担が増えることになります。

企業は一度ベースアップをすると、簡単には下げられなくなるため、業績が好調でもベースアップを躊躇するのです。 ちなみに定期昇給やベースアップどちらも、労働基準法等の法律で義務付けられているわけではありません。
 

そもそも、基本給の決まり方とは?

そもそも、基本給(ベース)はどのように決まっているのでしょうか。基本給は、一般的に年功給と職務給と職能給の組み合わせで成り立っています。会社によってその組み合わせは異なります。基本給を決定する3つの要素について簡単に説明します。年功給(年功賃金)は、年功序列型の賃金で勤続年数や年齢に応じて決まります。

職能給は、職務遂行能力によって決まる給与です。経験を重ね能力が上がると増える給与で、仕事の種類や能力で分類し段階ごとに給与が設定されます。日本が長く取り入れてきた制度です。

職務給は、職種によって決まる給与です。職務ローテ―ションをしながら、みんなで力を合わせようという日本企業の風土には馴染まない制度と言われてきました。しかし、中途採用の多い企業や新興企業をはじめとする企業で、職務給や職能給+職務給を取り入れることが多くなっています。

では、実際の企業がどのように基本給を決定しているのかを見てみましょう。

 
基本給与の決定要素は総合判断と職務・職能

出典:「2020年賃金事情等総合調査(第4-2表 産業別基本給の構成要素別割合)」中央労働委員会


基本給の最も重要な決定要素は「総合判断」で、次いで「職務内容・職務遂行能力等」という結果になっています。総合判断という曖昧な基準が最多ですが、少なくとも「勤続年数」や「業績・成果」が最重要と考えている企業はかなり少ないです。
 

働き方改革でどうなる?

2019年4月以降、「働き方改革」が始まっています。これからみなさんの給料にも影響が出てくるでしょう。たとえば、働き方改革の1つに長時間労働の削減があります。残業代をあてにしていた人にとっては、痛い収入減となるかもしれません。

しかし、同時にテレワークや副業・兼業が可能になるといった柔軟な労働環境が整備されていくはずです。この機会に副業で新しい分野の仕事に取り組んでみたり、週末起業に挑戦してみてはどうでしょうか。
 

給料を上げるために重要なこととは?

私自身、大会社、個人事務所、そして外国の会社に勤務してきたのですが、人事制度はそれぞれ異なるものでした。その中で給与を増やすために何が重要だったかというと、それは人との関係でした。
 
一見、成果主義が重視されていそうな外国の会社でも、結局は人間関係で決まる部分が大きかったです。自身の経験や知識を蓄積したり、成果を出したりすることも大切ですが、それに加えて、今関わっている人たちと良い関係を築いていくことが大切なことだと思います。

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