生命保険

保険や共済はライフスタイルで選ぶべきではない?

保険や共済の利用法は「家族構成やライフスタイルなどに合わせて考えないこと」が大切です。このように書くと、何かの間違いではないかと感じる人もいるかもしれません。保険ショップなどに出向くと、家族構成やライフスタイルに応じたプランが提示されるはずだからです。

執筆者:後田 亨

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「安心できないから保険に入る」は正しいか

安心も大事だけど、お金も大事。バランスよく考えるには?

安心も大事だけど、お金も大事。バランスよく考えるには?

たとえば、独身者であれば「多額の死亡保障は不要だとしても、葬儀代くらいは用意しつつ、入院保障などは十分確保しましょう。できれば長期の資産形成に役立つ保険も検討したいですね」といった案内がなされるでしょう。

筆者も保険営業の仕事をしていた頃、似たような提案をしていました。年齢などによって必要な保障は変わるので、お客様の目的や要望に応じた保険をお勧めしようと考えていたのです。

しかし、近年は、認識を変えたほうがいいと思うようになりました。なぜなら、保険や共済から加入者に各種給付金として還元されるお金は、運営側の経費を引いた残りのお金なので、加入者全体の収支は原則マイナスになるからです。

青年期から老後まで長期に渡って死亡・医療・介護など広範囲に保険や共済を利用すると、“お金が失われやすい仕組み”に使うお金が増え続けるわけです。したがって、極力限定的な利用にとどめることが望ましいはずなのです。

とても簡単な理屈です。とはいえ「本当に保険や共済の利用を控えることにしていいのか? いざという時大丈夫なのか?」と不安になる人もいるでしょう。論理的には納得できても、「安心感」という点で落ち着かなくなる人もいると思います。

だからこそ、“お金が失われやすい仕組み”であることを繰り返し語る必要を感じるのです。不安や落ち着かない気持ちを抱えた状態では“気が収まること”が優先されやすいからです。

「入院時に貯蓄を取り崩すのは心細いので、医療保険などに加入しておくと安心」といった論法などが、その典型だと思います。お金の問題であるにもかかわらず、心理面が重視され、経済合理性は不問にされたまま「保険に入れば安心」と短絡的な結論が出されています。
 

切実な問題だからこそ、冷静な判断が必要

以前の記事でも書きましたが、複数の保険数理の専門家によると、医療保険の保険料には30%程度、保険会社の運営費が見込みで含まれているそうです。加入者に還元されるお金の割合は70%程度と推察されるのです。保険料は、入院する確率などもあらかじめ高めに見込んで設定されていますから、実際の還元率は70%にも達しないかもしれません。
(ちなみに、競馬の馬券代が払戻金へ還元される割合が約75%です)

読者の皆さまに自問していただきたいのは「取扱金額の30%強の手数料をどう見るか」「7,000円のために1万円超のお金がかかるようなシステムをどう見るか」ということです。

ところが、保険や共済に関してこのような視点を持つ人は少ないように感じます。「いざという時」に備える仕組みであるという認識や、「不安を安心に変えたい」という切実な願望があるからでしょう。

切実であるほど「お金を用意する手段の一つ」として、冷静に評価しなければならないのです。たとえば、7,000円を用意する最善の方法は、医療保険に頼るのではなく、自費で賄うことでしょう。医療保険から給付される手術代10万円を用意する場合も、それより効率がいいのは自分の口座から10万円引き出すことに違いありません。数十パーセントもの手数料がかかるようなことにはならないからです。

「金額」と「コスト」だけで決めるのがポイントです。「手術の際に10万円が受け取れる」という説明がある場合、手術の際という想定から離れてみるのです。そして「10万円くらいのお金は持っている。別途費用がかかる仕組みは不要だ」と判断します。

家族構成や年齢、ライフスタイルなどは、実は関係ありません。「自力で用意できるお金がどれくらいあるか」という極めてシンプルな話なのです。どんな人でも、高いコストがかかり、お金が減りやすい選択は、極力避けたほうがいいに決まっています。

保険と共済の比較において、筆者は「都道府県民共済」については、相対的に良心的な運営を行っていると評価しています。掛け金の還元率はわかりやすく開示され、それは80%半ば近くに達しているからです。

それでも、相応のコストがかかる仕組みです。ライフスタイル中心の考え方から離れ、備えるべき金額とかかるコストで考えれば、優先順位は、子育て中の世帯主の死亡や現役世代の長期就業不能状態が上位に来るでしょう。自己負担が可能な額のお金を保険や共済で調達するのは、賢明ではないのです。

(※)生命保険協会「生命保険事業概況」より算出

※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
 
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