変化が激しい時代の「欲しいキャリア」のつくり方
計画的偶発性理論に学ぶ 欲しいキャリアのつくり方
就職や転職をしてみたものの、新たな職場での仕事が全然楽しくなくて
「好きなことを仕事にしたい。でも何が好きなのかも、わからなくて苦しい……」という声を聞きます。
そんなとき、これまでのキャリア支援では「適性診断で合理的に分析すれば、目指すべき最終ゴールやそこへ至るまでのステップアップの道筋が明確になる」という「価値観や能力などに基づく支援」をしてきました。
しかし変化の激しい現代社会において、未来は予測しづらく、こうした支援の方法は、逆に、将来への可能性を狭めることになりかねません。
そこで、「自分に合った仕事がわからない」状況でも、今後のキャリアを諦めない秘訣をご紹介します。
「偶然」をチャンスに変える5つの行動
「人のキャリアの大半は、本人の予期しない偶然の出来事によって形成される。出来事から逃げるのではなく、むしろ積極的にふさわしい偶然を引き寄せ、それをチャンスと気づき、自分のキャリアが発達するように一体化させることが重要だ」と説いた、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授の「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」という理論があります(※1)。
この理論では、「偶然」をチャンスに変える行動として、次の5つを挙げています。
- 新しく学べるチャンスがないか、探求する好奇心をもつ
- 挫折しても、努力し続ける持続性をもつ
- 態度や状況の変化に適応する、柔軟性をもつ
- 新しいチャンスを実現可能だと思う、楽観性をもつ
- 結果が確実でないことにもチャレンジする、冒険心をもつ
これを見て、どう思いましたか?
「まあ、もっともだし、できればいいけれど、それができないからツラいのに……」と思われた方が多いのではないでしょうか?
そこで、もう少し噛み砕いて、「偶然」をチャンスに変えるための方法をお伝えしましょう。
欲しいキャリアを引き寄せる!3つの基本姿勢
欲しいキャリアを引き寄せる3つの基本姿勢
まずは、次のように考えてください(※2)。
- 将来を計画するときに不安になるのは普通のことで、その不安は克服できる
- キャリアパスをつくるのは、予想外の出来事に対応するためであり、それは生涯を通した学習のプロセスである
- キャリアパスをつくる目的は、「どうしたら、自分の好奇心が刺激されるか」「どうしたら、偶然の出来事を利用できるか」「どうしたら、その出来事を将来有益なものにできるか」を知ることにある
このような姿勢でいると、
「自分が本当に好きなことを見つけたい。適性診断をたくさん受けて早く見つけなければ!!」と焦ることなく、
「人生を通して様々な経験を積んでいくうちに、何が好きかはいずれわかるだろう。好きなことと巡り合えるために、今どんなことができるだろう?」と考えられるのです。
「偶然」をチャンスに変える段階と質問
次に「偶然」をチャンスに変える行動をとるために、以下の4つの段階を経てみましょう。各段階の質問に答えていくと、自然にやるべきことが見えてくるようにしましたので、ぜひ答えてみてくださいね。
(→ 質問だけでなく、イメージしやすくするために、私の人生を振り返り、回答例も記しました)
段階1.「偶然の出来事に影響されている」ことに気づこう
(→ アメリカの大学院に留学していたときに、映画『パッチ・アダムス』を観た。ひどく感銘を受けた私は、映画のモデルになったパッチ・アダムス医師に連絡をとり文通が始まった。先生の著書を『心からのお見舞い』と題して翻訳・出版したことがきっかけとなり、保健医療分野で働くことになった)
- あなたに影響をもたらした出来事を思い出してください。その出来事は、あなたの仕事にどのように影響しましたか?
(→ 人生は驚きの連続! 人の出逢いにより、人生どうなるかわからないから、ドキドキ・ワクワクしている)
- 将来起こるだろう出来事について、どのように感じていますか?
段階2.「好奇心」を学習と探求の機会に変えよう
(→ 旧ユーゴ紛争を体験し、夢を諦めずにジャーナリストになったクロアチア人女性と出逢い、「なぜ、彼女は戦争で悲惨な体験をしたのに、イキイキとしているのだろう」と疑問に思った)
- 過去に、好奇心がそそられた出来事はありましたか? その出来事は、あなたの好奇心をどう刺激しましたか?
(→ 今まで務めていた研究所を退職し、単身でクロアチアに渡航。戦争生存者の困難を乗り越える力SOCの研究を始めた)
- あなたは、その好奇心を満たすために、どんな行動をとりましたか?
(→ 「自分はどんなときに意義を感じるのか?」「この仕事に価値や意味を見出すには、どうしたらいいか?」を考える。一人で考えてわからない場合には、人生の先輩や信頼できる人に相談する )
- すべての仕事に意味があるとすれば、あなたはどのようにその意味を探っていますか?
段階3.より「望ましい偶然」を引き起こせるようになろう
(→ 多くの人々、特に人の健康に影響を与える人にストレスマネジメントや健康な社会づくりについての知識を得てもらい、重要性を共感してもらえる出来事が起きてほしい)
- 今後、どんな出来事が起きたらいいと思いますか?
(→ All About をはじめ、多くの人が目にするメディアや講演の場で、ストレスマネジメントや健康な社会づくりの方法を伝える)
- その出来事を起こすために、今どんなことができますか?
(→ 健康づくりの仲間が増える。さらに、健康な行動がとれる人も、健康な政策も増え、国や職場など、社会全体が元気になる)
- もしあなたがその行動をとったら、あなたの生活にどんな変化が起きますか?
(→ 何も変わらない)
- もしあなたが行動しなかったら、あなたの生活にどんな変化が起きますか?
段階4.行動へのブロックを克服しよう
(→ 戦略を練って行動する時間がうまく確保できていない)
- あなたがやりたいことへの障害があるとすれば、 それは、どのような妨げとなっていますか?
(→ 優先順位を整理して時間を確保する、あるいは時間を有効に使えるような体制をつくる)
- 他の人はそのような障害があった場合、どのように克服するでしょうか?
(→ 優先順位を整理することから始める)
- あなたはその障害を、どのように克服し始めるでしょうか?
天職と出逢えた!
働いていると、仕事が楽しくないときもあります。
しかし、こうした行動姿勢をもって取り組んでいるうちに、自分が満足して進める道がきっと拓けていくはず。
お互い、満足して進める道を切り拓いていきましょう。Good luck!
【参考文献】
※1 蝦名玲子 『困難を乗り越える力:はじめてのSOC』 PHP新書, 2012年.
※2 Mitchell KE, Levin AS, Krumboltz JD. Planned Happenstance: Constructing Unexpected Career Opportunities. Journal of Counseling & Development, 77, 115-124. 1999.