亀山早苗の恋愛コラム

異動の季節に起こったふたまた恋の顛末

社内恋愛をしていたが春の異動で、彼と遠距離に。そこへ現れた新たな男性。「ついうっかり」ふたまたになってしまった女性はどうしたらよかったのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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異動の季節で彼と遠距離恋愛に

出会いと別れが交差する春の社内恋愛事情

出会いと別れが交差する春の社内恋愛事情


春は新入社員が入ってきたり異動があったりと、別れと出会いが交錯する季節。落ち込んだり浮かれたりするものの、周りの雰囲気に流されないことが大事かもしれない。

「昨年の春、1年ほどつきあっていた同期の彼が、異動で地方勤務になったんです。当時、ふたりとも入社4年目の26歳。まだ結婚するには早いし、私も会社を辞めたくなかったので、遠距離恋愛を選ぶことに。でもこれが案外つらかったんですよ」

アイリさん(27歳)は渋い表情を浮かべた。会社で顔を見て、週末はべったり一緒にいた彼と離れて、彼女は心に穴が開いたような気分だったという。毎日のように連絡をとってはいたが、毎日会えた日々とは違う。

「彼は新天地で緊張の毎日を過ごしているし、そうそう甘えてもいられない。私も部署が変わったので、寂しいながらもがんばるしかなかった」

彼女が異動になったのは新しくできた部署。あちこちから活きのいい若手が集められた期待のチームだった。


年下の男性についふらっと

同じ部署になったひとつ年下のSさんと、アイリさんは次第に親しくなっていった。

「なんとなくかわいいんですよ、彼。弟体質というのかいじられ系というのか、場を和ませてくれる存在。それでいて案外、いいアイデアをすぱっと出してきたりする。『やるじゃん、Sくん!』とみんなで褒めると、コンビニで人数分のアイスを買ってきてくれるような性格なんです」

そんなSくんがあるとき、まじめな顔をしてアイリさんに「相談がある」と話しかけてきた。

「ふたりで居酒屋に行ったんですが、彼の相談は恋愛についてでした。つきあっている彼女とうまくいってないようで。最後に『うまくいってないのはアイリさんのせいでもある』と言われました。意味がわからなかったので、『え?』と聞き返したら、『僕、アイリさんのことが好きになってしまった』と。ドキッとしました。あそこまでストレートに言われたことがなかったから」

アイリさんの気持ちも揺れた。しばらくたったころ、Sくんから「彼女と別れた」と報告された。

「僕はアイリさんが好きだ、だからもう彼女には会えない。アイリさんの気持ちを聞かせてほしい、と。職場では一切そういう面は見せないから、私もなんだかSくんが気になってしかたなくて。一方で、彼とも連絡はとっていたし、夏休みの旅行の計画も立てつつあった。どうしたらいいかわかりませんでした」

近いところにいて、毎日顔を見ていると親近感がわきやすいのが人の心理。去る者は日々に疎しという諺もある。


Sくんに心が揺れ続け、ついに……

毎日顔を合わせ、ときどき食事に行ったり飲みに行ったりするうちに……

毎日顔を合わせ、ときどき食事に行ったり飲みに行ったりするうちに……


もしSくんが強引に迫ってきたら、アイリさんとしては「彼がいるから」と断っただろう。だが「気持ちを聞かせてほしい」と言ったまま沈黙しているSくんに彼女の心は揺れ続けた。

「Sくんとは、ときどき食事に行ったり飲みに行ったりしていました。私が『つきあっている人がいる』と言えなかったのは、Sくんへの思いがあったからだと思う。あるとき酔っ払って『私もSくんが好き』と言ってしまったんですよ。そのままホテルにも行って。翌朝、アチャーと思ったけど、もうどうしようもなくて……」

しかも遠距離の彼と3日間の旅行へ出発する2日前のできごとだ。キャンセルすることもできず、彼女はSくんには「女友だちと旅行」と言って会社を休んだ。

「彼との旅行は楽しかったです。離れてからはじめてゆっくり一緒にいる時間がとれて、ああ、私はやっぱり彼が好きだわって思ったりして。もうほんと、最低の女ですよね、私」

彼に別れるとも言えず、「遠距離なのをいいことに」彼女はふたまた生活へ突入する。男性がふたりとも束縛するタイプではなかったから、ふたまたが成立してしまったのだ。


現実にはふたまた関係に……

「いけないなとは思っていました。いつかバレると。それから3ヶ月後くらいの週末、私のひとり暮らしの部屋でSくんと一緒にいたら、なんと遠距離の彼がやってきたんです」

土曜日の夜だった。ふたりで映画を観て食事をして、彼女の部屋に戻って「ちょっといちゃいちゃ」しているときだった。

「ドアを開けなかったんですが、すごい勢いでチャイムが鳴って。Sくんも不審に思っているみたいだから私がドアから滑り出て、『今、親が来ているから』と言いました。彼は『ちょうどいいよ、挨拶させて』って。万事休す、です。私の後ろからSくんが出てきて……。同じ会社ですからねえ、彼もSくんも顔は知っている」

彼は踵を返して去って行った。Sくんは部屋に戻ったが、がっくりと肩を落としている。

「アイリさんがそんな人だと思わなかったよ。告白したとき、きっと誰かいるとは思ってた。でも僕とつきあうと言ったとき、きっとその人とは別れてくれたんだろうと信じていた」

アイリさんは頭を下げるしかなかった。二兎を追う者は一兎をも得ず。アイリさんはふたりを失った。

「彼もSくんもいい人だから、そんなことはおくびにも出さない。だから社内では噂にもなっていません。でも、今になってみるとSくんとはもうちょっとつきあっていたかったなあ。ほとぼりが冷めたら……と思っているんですが、厚かましいですよね?」

意外と懲りていないアイリさん、昨年春の失敗を教訓に、今年の春の異動も楽しみにしていると最後は笑った。懲りない女は、新たな恋を手に入れるかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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