羽生結弦選手に学ぶ!本番に強いメンタル力
いざというとき力が出せる子の特徴とは?
親としては、「どうしたらあんなにメンタルが強い子に育つんだろう?」と気になるところ。そこで、この記事では、「一発勝負の本番に強さを発揮するメンタル力」をテーマに、家庭で今日から取り組める働きかけを心理学的に解説していきます。
大きな舞台でよぎる不安の特徴
本番でメンタルの強さを発揮できるか否か?
なぜなら、大きな舞台で出る“ある不安”が、その人の実力を邪魔してしまうからです。その不安とは、「もし〇〇したら、どうしよう」という思いです。
「もし失敗したらどうしよう」
「もし転んだらどうしよう」
「もしダメだったらどうしよう」
このような思いは、舞台が大きければ大きいほど、発生しやすいように感じるかもしれません。しかし、実際には、「もしもの場合」を考えるか否かは、その人次第です。これは、その人の思考グセが関係しているため、「もしも発想」が多い人は、色々な場面で、「もしも、もしも」と考えてしまうのに対し、そうでないタイプは、大舞台でさえも、その思いがよぎりません。人によって、大きく傾向が別れるのです。
いったん「もしも」が気になりだすと、本当にそれが起こりそうな気がしてきてしまい、それが頭から払しょくできないこともよくあります。そのため、同じ実力で同じ舞台に立っても、結果が変わってきてしまうのです。
親の「もしも発想」が子供に与える影響
実は、この「もしも発想」は、子供の頃にほぼできあがります。そして、小さい頃は、親と過ごす時間が圧倒的なので、親からの影響をまともに受けます。
もし親が、いつも「万が一」や「リスク」ばかりを考え、「もしダメだったらどうしよう」
「もし失敗したら後がない」
「もし外したらもう終わりだ」
このような発想で子供に接していると、それが言動や行動に現れ、子供たちにもじわじわと伝わっていきます。この行為は、心理学的に言うと、物事の「暗い部分」にフォーカスを当てる行動傾向のため、子供の心に、「なんとなく気分が盛り上がらない状態」や「いつも不安で安心できない感覚」を作ってしまいかねないのです。
「もしも発言」が多くなる心理
では、なぜ「もしものケース」を考えたくなってしまうのでしょうか? 実は、「もしも発想」の裏側には、完璧主義が潜んでいます。「もしも発想」と「完璧主義」、なんとなく相反する存在に思えるかもしれませんが、「もしもの失敗」が心をよぎるのは、「完璧でありたい」という強い気持ちがあるからです。自分が許せるのは、100%の状態だけ、それゆえ、ほんのわずかな「もしも」がすごく気になるようになってしまうのです。「絶対になにがなんでも成功しなくてはいけない」と思えば思うほど、「もしもの失敗」に心が支配されてしまう、心というのは、思うようにはならない繊細な動きをするのがわかります。
子供に話すとき、
「絶対、成功させようね」
「必ず1位だよ」
これらの発言は、子供に頑張ってもらいたい、ベストを尽くしてもらいたい、成功や1位を手に入れて欲しい、そんな思いから生まれるものです。しかしこう言われたら、子供は、「もし失敗したらどうしよう」と考えてしまいかねないのです。応援しているつもりが、逆に本番での強さを奪ってしまったら、それこそ本末転倒です。100%のうち、99%は成功するのに、「失敗するかもしれない1%」に気持ちを奪われてしまうのはもったいないですよね。
羽生選手のあの表情は、自分を信じ、自分を受け入れている姿です。どんな自分をも受け止めているので、こわくない、そう信じきれるのです。
羽生選手から学ぶ子育ての秘訣
以前の記者会見で、「我が子を羽生選手のように育てたいというお母さんが多いのですが、どうしたら羽生選手のように育つと思いますか」という質問を受け、彼はこう答えたそうです。「ぼくにも悪いところはたくさんあります。悪いところだけじゃなくて、いいところを見つめていただければ、子供は喜んでもっと成長できるんじゃないかと思います」
このインタビューで分かるのは、親が子供のどこに目を向けるかというのが非常に大事だということです。
親は子供の行動が気になるとき、ついついできていないところばかりを目が追ってしまいます。しかし最近の心理学で分かってきているのは、子供を結果的に伸ばすのは、「できているところからほめる」という方法です。
わかりやすい例で言えば、漢字が10個あって、5個はすでにマスター、あと5個残っているというとき、
- 「できていない5個」に目を向けて、「しっかり覚えなさい!」とプッシュするよりも、
- 「できている5語」に対し、「上手に書けているよ」とほめた方が、「よしやろう」というモチベーションにつながり、残りの5個への意欲が湧きやすい
だれだって、いいところと悪いところがあります。親がそのどこに目をつけるか、これは、その子が今後、物事のどこに目を向けて生きていくかにつながっていきます。できれば、世の中の明るい部分に視線を注いでいってもらいたいですよね。
子供の「ダメなところ」「悪い部分」ばかりを追うのではなく、「いいところ」「できているところ」を見ようとする意識が、羽生選手が言う、「子供が喜んでもっと成長できる」という部分です。あそこまでの精神力に達するのは、並大抵ではありませんが、小さな種は、すでに幼少期にまかれているのです。それをまいているのは私たち親、だからこそ、小さな心がけを重ねていきたいものです。