感染症拡大予防に有効な「咳エチケット」とは

咳

飛沫感染で広がる感染症拡大を防ぐために、「咳エチケット」が大切です

風邪やインフルエンザを始めとする呼吸器感染症は、感染者の咳やくしゃみなどに含まれるウイルス・細菌を他の人が吸い込むことによる「飛沫感染」で広がっていきます。人から人へと感染が拡大しないよう、症状の有無にかかわらず、普段から咳やくしゃみの飛沫が人にかからないよう配慮するのが「咳エチケット」です。

咳エチケットの方法・効果

咳エチケットの具体的な方法として、WHO(世界保健機関)は、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖で、口・鼻を覆うことを推奨しています。また、咳やくしゃみをした際に押さえた手や腕にもウイルスが付着しているので、直ちに洗うことも大切とされています。手を洗う前にドアノブやつり革など周囲にあるものを触ると、触ったものを介して接触感染の原因になる可能性があるためです。

厚生労働省が推奨している具体的な咳エチケットの方法は以下の通りです。
*咳・くしゃみの際はティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ1m以上離れる。
*鼻汁・痰などを含んだティッシュをすぐに蓋付きの廃棄物箱に捨てられる環境を整える。
*咳をしている人にマスクの着用を促す。
マスクはより透過性の低いもの、例えば、医療現場にて使用される「サージカルマスク」がより予防効果が高くなりますが、通常の市販マスクでも咳をしている人のウイルスの拡散をある程度は防ぐ効果があると考えられています。
健康な人がマスクを着用しているからといって、ウイルスの吸入を完全に予防できるわけではないことにも注意が必要です。
*マスクの使用は説明書をよく読んで、正しく着用する。
(『インフルエンザの基礎知識』(厚生労働省・PDF)より)

多くの人はマスク着用やティッシュなどで口を覆うことが大切だと思われているかもしれませんが、正しい咳エチケットとしてはマスクの選び方や適切な使用、使ったティッシュの捨て方まで配慮が必要なのです。

インフルエンザ予防にも重要な「咳エチケット」

寒い季節になると風邪やインフルエンザが流行します。よくある病気だからと侮ってはいけません。「風邪は万病の元」とは古くから言われていることですが、とりわけインフルエンザは決して油断してはならない病気です。

有史以来、人類は感染症の脅威にさらされてきましたし、ギリシア・ローマ時代にはインフルエンザらしき病気の記述があると言われています。1918~1919年に世界中で流行したスペインかぜでは、当時の人口の3分の1である5億人が感染し、数千万人が死亡したとされています。このような大きな感染拡大を防止するためにも、一人一人の咳エチケットはとても大切なのです。

厚生労働省は『進撃の巨人』で啓発キャンペーンも

咳エチケット啓発コラボレーション

咳エチケット啓発コラボレーション ポスターイメージ/(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会


2017年12月より、厚生労働省は人気漫画『進撃の巨人』とコラボレーションして、咳エチケットの啓発キャンペーンを行っています。『進撃の巨人』は私も読んでいますが、啓発ポスターは、咳をする巨人に対して、きれい好きで知られるリヴァイ兵長が咳エチケットを指南し、アルミン、エレン、ミカサがそれぞれの咳エチケットの方法を示す、という面白い作りになっています。

通常は固くなりがちですが、このようなビジュアルなら大人も子供も親しみやすく、咳エチケットの基本と具体的な方法を視覚的にも理解できそうですね。

作品を知っている方向けのお話になりますが、物語の舞台である塀の中という閉鎖空間に居住している人類にとって、インフルエンザを始めとする感染症が大きな脅威であることは、想像するに難くありません。巨人は作品中で急所を攻撃されない限り不死身と描かれていますので、インフルエンザ罹患のダメージはさほどないかもしれませんが、咳エチケットをしない巨人が咳・くしゃみをすることで、ウイルスは広範囲にまき散らされるでしょうし、15m級や60m級の巨人がせき・くしゃみをした際の飛沫距離は、想像を絶します。

そしてフィクションの世界での脅威に留まらず、普通の人間が咳・くしゃみをした際にウイルスが飛ぶ距離ですら、優に2mを超えることも忘れてはいけません。人類の咳・くしゃみも侮ってはいけないのです。

「咳エチケット」の注意点……マスクのみの予防は限度あり

咳・くしゃみの際のマスクの重要性は上でご紹介した通りです。一方で、外に拡散されてしまった場合、通常のウイルスの大きさが0.3μm以下なのに対し、マスクの穴は5μmもあるため、簡単にすり抜けてしまいます(詳しくは「マスクで風邪は防げるか…ウイルス感染防止効果の有無」をご覧ください)。

厚生労働省が作成した『新型インフルエンザ等対策ガイドライン』にも以下のように記載されています。

感染予防
発症したものがマスクをすることによって他の者への感染機会を減少させる効果は認められており、自ら発症した場合にはマスクは着用することが必要である。他方、まだ感染していない者がウイルスの吸い込みを完全に防ぐという明確な科学的根拠はないため、マスクを着用することのみによる防御を過信せず、手洗いの励行や人混みを避けることなどの他の感染対策を講じる必要がある。
『新型インフルエンザ等対策ガイドライン(平成25年6月26日作成平成28年3月25日一部改定』より

欧米では日本ほど日常的にマスクをする文化がないため、症状もないのにマスクをしていると重病人ではないかと心配されてしまうこともあるようです。日本では違和感なく日常的にマスクをつけている人も多いので、心理的な抵抗もないかと思います。ガイドラインにもあるように、マスクを着用しつつも、一般的なマスクの予防効果だけを過信せず、正しい咳エチケットの実践を。さらに手洗いや人混みを避けるなどの感染対策もあわせて行っていくことが必要だといえるでしょう。効果的な予防法をそれぞれが実行して、風邪やインフルエンザの大流行を防ぎましょう。

■参考
咳エチケットの啓発に『進撃の巨人』を起用 (厚生労働省)

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