家族が亡くなった後の、預貯金や有価証券などの相続手続きのポイント
相続が発生し被相続人に金融資産つまり、預貯金や株などの有価証券がある場合、その金融資産を相続人が引き継ぐための相続手続きが必要になります。思いのほか手間や費用がかかるため、全体の流れを把握しておくことが大切です。まずは相続手続きの全体の流れを知っておこう
被相続人名義の金融資産を相続人が引き継ぐ流れは以下のようになります。- 被相続人が取引をしていた金融機関を確認する。
- 戸籍謄本や印鑑証明書を取得する。
- 各金融機関に問い合わせ、残高を確認する。
- 残高が確認できたら引き継ぐ(名義変更や解約する)ための必要書類を準備する。
- 必要書類が整ったら各金融機関に相続手続きを依頼する。
- 相続手続きが完了したか確認する。
1.金融機関の確認
最初に行うのが金融機関の確認です。通帳、カード、証書、報告書、配当通知などから被相続人が取引していたと思われる銀行や証券会社などの金融機関をリストにしましょう。金融機関は相続が発生したことが分かると全ての取引を凍結してしまうため、まだ連絡はせずに先に通帳の記帳などをしておくとよいでしょう。※民法改正により、凍結した預貯金の口座であっても当面の生活費が引き出せるようになりました。(関連記事:民法改正で遺産分割前に相続預金が引き出し可能に?)
2.戸籍謄本、印鑑証明書の取得
金融機関への残高の確認や相続手続きには戸籍謄本や印鑑証明書が必要になります。なおほとんどの金融機関は戸籍謄本や印鑑証明書は提示後に返却を依頼すれば戻してもらえます。金融機関の数と同じ数の戸籍謄本や印鑑証明書を取得すると費用がかさみ最終的には余ってしまいますので1通ずつ用意すればよいと思います。また法務局の法定相続情報証明制度を利用すればその後の手続きもスムーズですのでお勧めです。(関連記事:「法定相続情報証明制度」で相続手続きが楽に?)3.各金融機関への問合せ
取引先が分かったら各金融機関に問い合わせ(この時点で口座が凍結されます)、残高の確認(相続発生日時点の残高証明書の発行)を依頼します。念のため「他の支店にも取引が無いか」「全て(預貯金、出資金、有価証券など)の残高」の確認を依頼しましょう。依頼後1~2週間程度で証明書が発行されます。原則として依頼時に必要なものは以下の通りです。- 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
- 依頼者が相続人であることが分かる戸籍謄本
- 依頼者の身分証明書、実印、印鑑証明書(発行から3ヶ月以内などの条件あり)
- 残高証明書発行手数料(各金融機関によって異なります)
- 各金融機関の所定の依頼書に自署・実印(経過利息や解約金額の証明も依頼するとよい)
4.相続手続き書類の準備
全ての残高が確認できたら相続手続きを行うための準備をしましょう。預貯金は名義変更か解約のどちらも可能ですが、有価証券は原則は相続人の口座に移し替える(移管)のみとなりますので相続人の口座が無い場合は口座開設が必要です。ゆうちょ銀行は他の銀行には振り込めないため相続人の口座が無い場合は口座開設をするか払戻証書を受け取って窓口で現金化することになります。原則として相続手続きに必要なものは以下の通りです。- 被相続人の出生から死亡までが確認できる戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内などの条件あり)
- 各金融機関の所定の依頼書を入手し相続人全員の自署・実印(遺産分割協議書があると取得者のみの自署・実印の場合あり)
- 遺産分割協議書(ある場合)
- 被相続人の通帳、カード、証書など
- マイナンバー(通知カード、個人番号カードなど)の写しを要求されることもあります
5.相続手続きの依頼
相続手続きに必要な書類等が全て整ったら各金融機関に相続手続きの依頼をします。依頼時は念のため依頼者の身分証明書と実印も持参しましょう。なお各金融機関の窓口での手続き時間は30分~1時間程度かかるため、複数の金融機関を回る場合は1日がかりになることもありますので、時間に余裕がある平日に行うことをお勧めします。また事前に金融機関へ訪問の予約等の連絡をしておくとスムーズです。6.相続手続き完了の確認
概ね1~2週間程度で相続手続きが完了します。各金融機関での手続きが完了したか、相続人(受取人)の通帳を記帳するなどで確認しましょう。振り込まれていれば無事完了ということになります。金融機関の窓口での一般的な相続手続きの流れについて説明しました。郵送で行う場合や遺言がある場合などは流れや必要な書類等が少し異なるので各金融機関に確認してみましょう。金融機関の相続手続きは数が多いととても大変です。生前に口座数を整理しておいたり取引機関や支店名をリストにしておくことも大事な相続対策の一つです。