生命保険

県民共済の保障内容はベストなのか?

各種給付金や割戻金の還元率が比較的高い共済は果たしてベストの保障内容を持っているのでしょうか。保険や共済の本来の役割とも照らし合わせて考えてみました。

執筆者:後田 亨

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大事なものは「事故の保障」?「病気の保障」?

「保険会社より良心的な運営をしていると見ています。埼玉県民共済などは理想に近いです。ただし、商品が最高だとは思っていません」

一般消費者の方や各種メディアの方たちから「『都道府県民共済』についてどう思いますか?」と尋ねられたとき、私はいつもこのように回答しています。

以前の記事でもお伝えしているように、共済については、掛け金が各種給付金や割戻金として加入者に還元される割合(還元率)が多くの保険商品より高いと見られること、商品改訂の歴史が事実上の値下げの歴史であることなどは評価する一方、保障内容にはいくつか疑問があるからです。

「都道府県民共済」の商品に限らず、保険や共済の「本来の役割」について、皆さんに考えていただける機会にもなるかと思いますので、以下、具体的に指摘してみたいと思います。

都民共済のサイトで人気ナンバーワンと紹介されている生命共済「総合保障型(月掛け金)2,000円コース」を例にしてみましょう。

保障内容は表の通りです。
 
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特徴は、事故と病気により保障が異なっていて、事故のほうが手厚いことです。たとえば入院では、事故のほうが保障期間が60日長く、給付日額も500円多くなっています。

生命保険文化センターのサイトの「一目でわかる生活設計情報」というページで、厚生労働省の「平成26年 患者調査」から作成された表 を確認すると、入院日数が長いのは事故関連ではないようです。
1~3位は「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」546.1日、「血管性及び詳細不明の認知症」376.5日、「アルツハイマー病」266.3日で、事故と関連していると思われる骨折は37.9日なのです。ちなみに、退院患者の平均在院日数は31.9日です。

通院で病気が保障されていないのは、2,000円の掛け金では難しいということなのかもしれません。それにしても、通院保障の金額は日額1,500円です。限度日数である90日に該当しても、13万5,000円です。

「そもそも保険や共済は、14万円未満のお金を補てんするために存在すべきなのだろうか」と考えてしまうのです。

加入直後に事故に遭い、2,000円支払っただけで13万5,000円を受け取ることになる人もいるかもしれません。通院前に骨折で38日入院すると給付金額は19万円加算され、32万5,000円になりますから「共済に加入していて良かった」と実感することになるかもしれません。
 

30万円ほどのお金で生活が破たんするのか?

自分にとってベストな保障とは、どんなものなのでしょうか…?

自分にとってベストな保障とは、どんなものなのでしょうか…?

これは、共済に限らず、保険商品の入院保障全般について感じる疑問でもあります。素朴に、なぜ、入院1日目から保障する必要があるのだろうか? と思うのです。

医療保険の契約件数が最も多い保険会社のサイトでは、短期入院を保障する理由として、平均入院日数が平成11年から27年の間に27.2~16.5日と短くなっていること、26年には5日以内の入院が34.1%に達していることなどが挙げられています。

皆さんには、「発生率が高くても給付額は数万円にとどまる“5日以内の入院”を保障しないことにすれば、同じ保険料でも、より重大な事態に手厚く備えられるのではないか?」と想像してみていただきたいと思います。
 

「あるべき保険」と「売れる保険」

そういう意味で私は、後遺障害・死亡・重度障害の保障のほうが、入院・通院保障より、保険や共済の存在意義が大きいと考えます。同時に、総合保障型における事故と病気の給付額は同額でよい、と思います。遺族の方々に必要なお金の額が、死因によって変わるとは考えにくいからです。

「都道府県民共済」の保障が交通事故に手厚いのは、創業当時、自家用車を利用する人が増え、交通事故死の増加が問題視されていた世情も背景にあってのことだそうです。これも伝統と言えるかもしれませんが、いまの時代にも不可欠でしょうか。

保険会社の人たちと情報交換していると「あるべき保険」「売れる保険」という言葉が出ることがあります。「入院1日目から保障される商品と、31日目から保障される商品では、後者があるべき姿だと思う。しかし、前者が売れるだろう」といった話になるのです。

本当に望ましいのは、どちらでしょうか。私は率直に言って、消費者が「入院1日目からお金がもらえた」と喜ぶのは少々短絡的だ、と感じています。共済や保険は何のためにあるのか。どんな事態に適しているのか。皆さんにも今一度、考えていただきたいと思います。

※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
 
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