近年の火災被害の傾向:放火が増加傾向に!
冬場に多くなる火災被害、家庭で防ぐ方法は?
先日、ある地方都市で連続十数件にわたる放火事件が発生したのですが、たまたま現地に住む友人から、そのときの話を聞くことができました。近隣で数日おきに消防車のサイレンが鳴り響き、一時は不眠症になるかと思ったそう。それ以来、住民は連日の見回りを始め、今もずっと続けているとのことです。
家庭での火災の原因というと、タバコの不始末やガスコンロの消し忘れ、天ぷら火災などをイメージすると思います。しかし実は、喫煙者の減少、オール電化の家屋の増加などの影響により、これらが原因の火災は減少傾向にあります。その一方で、放火による火災は、20年前の1.7倍にも増えているというデータもあります。
放火されにくい家作りは「家の周りに燃えやすいものを置かない」が基本
ある消防士の方によると、最近の放火犯は、放火の重大性をほとんど認識していない傾向にあるそうです。重い刑事罰が科されるにもかかわらず、その認識がないせいもあり、けっして減ることはないということでした。放火犯は現行犯でない限り、なかなか逮捕に至ることはできません。連続放火犯は愉快犯とも言われ、捕まるまでその行為を続ける傾向があります。彼らは、結果的に人の命を奪うことにもなるということに思いが及ばないのです。またその消防士の方曰く「放火が起きやすい街」「放火されやすい家」もあるとのこと。年間1万件にも及ぶ「放火・放火の疑い」事件が発生している現在、自分の家族の生命、財産を守るためにはどのようなことをすべきなのでしょうか。
以前捕まったある放火犯は、家屋周辺の広範囲にわたって燃えやすい物に火を付けており、その対象はバイクや自転車のカバーなどにも及んでいました。車やバイク、自転車のカバーは必ず不燃性のものを使用しましょう。
また、家の周囲から放火犯が好むような「暗がり」もなくす必要があります。屋外に燃えやすい木クズや不用になった家具、紙ゴミなどを放置して「放火機会」を作らないということも重要なポイントです。大掃除などで大量のゴミが出やすい年末年始は「放火機会」が生まれやすいこそ、放火事例が増加してしまうのです。
地域で「管理された雰囲気」を作り、放火犯を寄せ付けない
放火犯を寄せ付けない街作りには「誰かが見ている」という環境を作るのが一番です。夜間でも明るい街づくりのための街路灯の整備、監視カメラや人感センサーの設置などは大変有効です。また、街の小さなルール作りと住民の遵守も必要です。ゴミだしは必ず収集日を守る、家屋の回りに物を置かない、植栽を伸び放題にしておかない、など街の「小さなほころび」を感じさせないようにすること。それは、自分の家一軒が守っていれば良いというものではありません。地域全体で「管理された雰囲気」を作ることで、犯罪機会は減り、結果的に放火犯だけでなく他の軽犯罪も減って「安全な街」になるのです。
どこの地域でも毎年防災訓練や火災予防の講習会、消火訓練などが行われていますが、参加したことのない人の方が多いとは思います。しかし、たとえば大型の消火器は、一度も使用したことがないと意外ととまどうもので、火元に向けて消化液を正確に当てるのは難しいのです。訓練で経験しておくと、いざという時に絶対に役立ちますので、お子さんを含めて家族全員でぜひ参加してほしいものです。
ちなみに自分の住む地域では、毎年冬の時期になると町会、自治会で有志を募り、地域防犯のために定期的に見回りを行っています。集団で夜間見回りをすることで防犯意識・防災意識の高い街というイメージ作りができつつあると思います。実際に放火を含む犯罪発生件数はこの10年で20%も低下しました。みなさんお忙しいかとは思いますが、地域コミュニティの中で何らかの防災・防犯活動に参加するということは、結果的に自分や家族の生命・財産を守ることにつながると思います。
「過失による火災」を起こさないために
第三者による放火火災を除けば、家庭内で起きる火災の原因は「過失による火災」になるわけですが、これらはタバコの不始末、子供の火遊び、ガスコンロの消し忘れなどが上位に入ります。家庭ごとに状況は変わりますが、家族一人ひとりが「火の恐ろしさ」を認識することが必要です。火事の原因になる習慣(寝タバコなど)を止めること、子供の手の届くところに発火性のもの(ライターやマッチ)を絶対に置かない、調理中には他のことを並行して進めないなど、家族のルールを作って、厳守しましょう。先日あるマンションで、ベランダからのタバコの投げ捨てによって周囲の植栽に火が移るという事例が発生しました。その件は大事には至りませんでしたが、冬場の乾燥した空気のなかでは、ほんの少しの火の気が大変な火災に拡大する可能性も十分にあり得ます。タバコを吸う人はもちろん、その周囲の方も火災の恐ろしさを再認識して、少なくとも自らがその発生原因にならないようにしていただきたいと思います。
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